第3話 家事をしない夫の最適化
「夫が、家事をあまりしてくれなくて……」
女性はため息混じりに言った。
「結婚して、一年目です」
「一年か」
隣の男性が、少し気まずそうに笑う。
「いや、やってないわけじゃないんだよ? たまには」
「“たまに”なの」
「記録を開始します」
「ほんとに毎回早いね」
「婚姻関係:一年。生活形態:共働き。女性個体は家事負担の偏りに不満を抱いています」
「個体って言うのやめて」
「男性個体の家事参加率は低水準と推定されます」
「……否定はしない」
「でもさ、仕事も忙しいし」
「私も同じなんだけど」
短い沈黙。
「……結婚式、覚えてる?」
女性がぽつりと呟く。
「覚えてるよ。親も喜んでくれてさ」
「新しいマンションも、二人で選んで」
「うん」
「最初は、全部楽しかったのに」
男性は言葉を探すように視線を落とした。
「解決策を提示します」
「はい……」
「家事を“義務”として再定義してください」
「義務?」
「各作業に対し、担当と期限を明確化します」
「なんか仕事っぽい」
「既に労働です」
「身も蓋もない」
「具体例:
・洗濯:男性個体、週3回
・食事準備:女性個体、週4回
・清掃:交互実施」
「……」
「さらに、未達成時にはペナルティを設定します」
「ペナルティ?」
「金銭的罰則、または追加労働が有効です」
「それ夫婦でやること?」
「責任の可視化により、実行率は向上します」
「でもさ、それって」
女性が少し眉を寄せる。
「一緒に暮らしてるっていうか、管理してるみたいじゃない?」
「現状は不均衡です」
「それはそうなんだけど……」
「補足:感情的アプローチも存在します」
「え」
「“やってくれて助かる”などの正のフィードバックを与えることで、行動を強化できます」
「それ、普通のやつだ」
「最も効率的です」
「さっきまでのやつは何だったの」
男性が小さく息を吐いた。
「……ごめん。ちゃんとやるよ」
「……ほんとに?」
「うん。とりあえず、できるところから」
「……じゃあ、洗濯お願いしてもいい?」
「任せて」
「それは非体系的です」
「いいの!」




