第2話 結婚に前向きじゃない彼氏の最適化
「彼が、結婚にあまり前向きじゃなくて……」
女性は言葉を選ぶように口を開いた。
「付き合って、二年半になります」
「二年半か」
隣の男性が、少しだけ肩をすくめる。
「別に、嫌とかじゃないんだけどさ」
「うん……」
「ただ、今すぐっていうのは、ちょっと」
「記録を開始します」
「早い」
「交際期間:二年半。関係性:安定維持段階。女性個体は将来の確定性を要求しています」
「個体って言わないでってば」
「男性個体は現状維持を選択しています。理由は未確定ですが、重要ではありません」
「重要でしょ」
「重要なのは、期待値の整合です」
女性が、わずかに息を呑む。
「彼、ちゃんと大事にしてくれるんです。記念日も忘れないし、誕生日も……」
「この前も、いいレストラン連れてったよな」
「うん。すごく、嬉しかった」
少しだけ、声が柔らぐ。
「だから、余計に……このままでいいのか、不安で」
「解決策を提示します」
「……はい」
「関係の定義を明確化してください」
「定義?」
「当該関係を“期間限定契約”として再設定します」
「え?」
「契約期間を設定し、その満了時に更新または終了を選択してください」
「ちょっと待って」
「例:残り六ヶ月。更新条件:結婚意思の確認」
「それ、圧じゃない?」
「圧力は有効な意思決定補助です」
「怖いこと言ってるよ」
「補足:男性個体の行動最適化も可能です」
「なにそれ」
「現在の行動は高品質ですが、将来保証がありません。よって」
「よって?」
「結婚意思を“事前に確定”させてください」
「できるなら苦労しないんだけど」
「確定できない場合、不確実性の高い関係と判断されます」
「……」
「その場合、リスク回避のため関係解消を推奨します」
「急に切るな」
しばらく沈黙が落ちる。
「……俺さ」
男性がゆっくり口を開いた。
「ちゃんと考えてるよ。ただ、タイミングとか、仕事とか」
「うん」
「すぐ答え出せる話じゃないっていうか」
「……うん」
「それでも、待ってくれる?」
女性は少しだけ迷ってから、頷いた。
「……待つ。でも、ちゃんと考えてほしい」
「わかってる」
「それは非効率です」
「いいの!」




