決着する。
果たして臨む結果となった。
「いひ、いひひひひ、いい気味だなぁ九醸朝霧ぃっ!!」
朝霧を密室に連れ込んだ体育教師の獅童が、朝霧を組み敷いて馬乗りになる。
「ふははっはっははあああ!俺をコケにするからこんな目に会うんだぞ!」
一生直幸は朝霧の腕を抑えながら、朝霧の胸を乱暴に揉みしだいている。
「君が詩織に手を出さなければこうはならなかったのに、愚かなことだ」
朝霧に猿ぐつわを噛ませながら、二界正司が見下す。
「貴方みたいな下等で下劣な女のなりそこない、文目さんは不釣り合いなんですよ。…ふふ、貴方にお似合いなのはここの汚い床です」
密室の床に押し倒された朝霧を見て嘲笑する四天雛子。
「貴方が悪いんですよ。貴方が、ちゃんとしてくれないから…」
そして、どこか焦点の合わない目でこちらを見ている天使詩織が愛らしく笑っていた。
「……ぅ」
体が震える。
別に怖いからではない。
いや、怖いは怖いが、それはあくまでトラウマからくるもの。
体が勝手に恐怖して、硬直してしまうだけだ。
体は反応してしまうが、頭の芯は冷静だった。
本格的にヤバくなる直前で、文目が助けてくれることを知っているからだ。
文目は、最後の最後まで反対していた。
別に、こんなことをしなくても、時間をかければ奴らを追い込むことなど訳ないからだ。
文目からすれば愛する朝霧を、わずかな時間とはいえ危険にさらすことの意味がわからなかった。
だが、朝霧がワガママを言っておねだりをして認めさせた。
文目以外の男に抱かれている想像をされることが、たとえ噂でも許せないと駄々をこねたのだ。
ごねにごねて、文目は折れる。文目は朝霧に甘く、肉体が男性化してからはそれが顕著であった。
そして、やると決めたら文目はしっかりとやる。冷静に確実に罪の現場を抑えるだろう。だからギリギリまで助けにはこない。
今もきっと、憤怒を堪えながら見ているのだろう。
「……ぃ…ぁ」
ここで朝霧が異能を全開にする。
相手の嗜虐性を暴きたてる。
朝霧は、異能を使いこなしていた。
それは単に、自分の魅せ方を理解しているというだけなのだが、それが朝霧にとっての「異能を使いこなす」ということだった。
「ふ、ふへへへ、こ、殺す前に、お、犯してやる」
「あ、ああ、そうだな、報いを、そう、報いを受けさせなくてはっ!」
朝霧の異能に、直情的なタイプの獅童と一生がまんまと囚われる。
頭の中が、朝霧を虐めることしか考えられなくなる。
獅童の手が朝霧の服を襟元から乱暴に破き、朝霧の胸元を露わにすると…
…そこまでだった。
「ぱッ…!?」
密室の壁が紙のように破れ、そこから矢のように飛び出た男が朝霧の上に乗る獅童の首を飛ばした。蹴りで。蹴りで、首を刈った。断末魔をあげる間も無く。
獅童の頭部が壁に激突して、脳漿をぶちまける。
時間が止まったかのように、皆が硬直した。
「え」
そして壁を破って飛び込んできた男、六道文目は一生直幸の腕を取る。
「……ッあ、あ、、ああああああぎゃああああああっ!!??」
文目は朝霧の胸を揉みしだいていたその手を千切った。
文目としては、朝霧の胸を揉んだ一生直幸は万死に値するのだが、流石に九大家の直系をいきなり殺すわけにはいかない。しっかりと犯行の一部始終は録画してあるが、それでも九大家を胸を揉んだ程度でぶっ殺すのは色々と問題があった。
ちなみに二界はとっくに蹴っ飛ばされて、壁に沈んでいる。
死んではいないが、背骨がバッキバキだろう。運が悪ければ一生車椅子だ。
「……ッチ」
文目は千切った手を投げ捨て舌打ちし、そして朝霧を抱き上げる。
胸元を自らの上着で隠し、怒った顔を向ける。
「帰るぞ」
怒っていた。こうなるのが嫌で反対して、やっぱりこうなったので怒っていた。
「ふひ」
そんな、怒った文目を眺めて嬉しそうに笑う朝霧。
「何笑ってる」
その笑顔に、怒りが増す。可愛いと思ってしまうが、怒っている。そう、怒っているのだ。
「心配と嫉妬でぐるぐるの文目さん、かぁーい」
そう言って、首元に抱きついてくるのだ。
抱きついて、足も回して抱きついて、首筋にすり寄ってくる。
「…………っくそ」
可愛い、イラつく、可愛い、腹立つ。
文目は朝霧に情緒がぐちゃぐちゃにされていた。
「あのっ!」
そんな精神状態の文目に四天雛子は話しかける。
なんとか状況を挽回しようと、対話を試みる。
「喋るな鬱陶しい」
「くぺ」
文目は四天雛子の顎を割った。左で一撃した。
下顎をぐしゃぐしゃにされ、血を流しながら四天雛子は崩れ落ちた。
殺してはいない。九大家なので。
「な、な、なんで、なんんであああええええええええ!」
天使詩織は銃を取り出して構える。標準は朝霧だ。
そして銃越しに見た、朝霧の毒のある美しい笑顔が、天使詩織が最後に見たものであった。
「文目さん」
「なに」
「すきだよ」
「…………っ」
踏み潰した際の返り血に染まった文目に、そっと口づけをする朝霧。
その愛らしくも毒々しい微笑みに文目は「とんでもない奴を好きになってしまった」と思う。
思うが、もう、朝霧以外は考えられない文目なのであった。
ーーーー
あの後、事後処理を終えてから、二人は文目の部屋に移動した。
朝霧が二人きりになりたいと言ったからだ。
そして、二人きりになった途端に、朝霧が動く。
「ちょ、朝霧さんッ!?」
「ふひ」
上ずった声をあげ、動揺し、朝霧を凝視する文目。
その視線の先には、上を脱いだ朝霧が文目にのしかかり迫っていた。
「ほら、これ見て」
朝霧が胸元を指差す。そこには手形の痣。
それを見た文目の目つきが鋭くなる。
「先越されちゃったね」
にやにやと笑う朝霧に、文目はその表情を険しくする。
「何が言いたいんだ、お前」
イライラとした文目の声に、朝霧はゾクゾクとしてしまう。
「僕が言いたいのは、ひとつだけ」
怒った表情の文目に顔を寄せ、耳に口を寄せて囁く。
「この前、月のが、きたんだ」
甘い、毒のように甘い声で、伝える。
「ねぇ、僕のここ、早いもの勝ちだね」
結局。
朝霧が今回したかった事はこれだ。
九醸は愛した人のことを、なんでも知りたいし、なんでも叶えてあげたいし、そしてなんでも解る。
朝霧は解っていた。文目が性欲を我慢していることを。強い肉体に相応しいだけ備えられた雄を、持て余していることを。女性としての慎ましさが、それを無理に抑えていることを。
その我慢が、最早苦痛を覚えるレベルであることを。
しっかりと察していた。
独占欲。
文目は朝霧に強い独占欲を持っている。
口には出さないし、強く自制しているが、朝霧の全てを欲しいと思っている。
だから、それを煽ってやることにした。
その理性を、ぶち壊してやるために。
「ね、どうするの?」
全ては文目を煽るため。
それだけだった。
そんな理由で殺された奴等は、自業自得とは言えなんとも哀れなことである。
次回、最終回!
どくしゃへ
戸棚におやつ(意味深)を入れておきました。
ノクターンの「ユウシャ・アイウエオン@」という作者名の棚にある「朝霧と文目」というお菓子です。
短いですが、良ければお召し上がりください。
PS 未成年はだめだよ?
ーーーー
以下『じみじわ』イントロ。
「嘘だろ!? 男子の制服が装備できない!?」
制服を着ることは出来る。だが「装備」しないとステータスに反映されないのだ。
そして、モンスター蔓延るこの世界で、それはとても危険なことである。




