会いに行く。
文目の性転化が終わって、数日が経った。
「昨日のカラオケは超楽しかったでござるな!」
「ああっ!また行きてぇな!」
「連日の饗宴でもかまわない」
「僕のデータカラオケは高得点だからな」
「確かにまた行きたいわね。朝霧の歌がまた聴きたいわ、本気で」
「あははー、ねー、また行こうねぇ」
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朝霧達はテスト明けの日曜日に皆んなで集まって、念願のカラオケをした。
テストお疲れ様会も兼ねていた。
朝から集まって、夕方まで歌い尽くす盛大な宴であったが、かなり混沌としていた。
何故か途中からクラス一番ウタウマ歌合戦となり、大変に白熱した。
ウタウマ歌合戦とは、アプリのアンケート機能を用い、投票によって誰がクラス一番のウタウマか決める戦いだ。
持ち点は一人10点で点数は常時移動可能。最後の一人が歌い終わった時点で終了である。
突っ込みどころは多々あるルールだが、楽しめればなんでも良いので、特に文句はなかった。
戦いは熾烈を極めた。
普段はござるござるしている太刀川椿が、可愛いアイドルソングを振り付きで歌った際は、そのギャップにやられたクラスメイトが何人も投票した。
テンションの高い市ヶ谷光輝はそのテンションに任せ、パンクロックな歌を歌ったが、普通に下手だったので、誰も投票しなかった。
厨二的言動の羽柴木之実は、エロゲが原作の「追いかけて追いかけて」なアニソンを歌っていて、普通に上手かったし、凄く感動させていた。
データの天城兵輔は、データカラオケと言いながら、何故か北の方の酒場の通りの演歌を歌っていた。上手かったが、誰も投票しなかった。
久能詩子は、おしゃれな洋楽を完璧な発音で歌っていて、めちゃくちゃに上手かったので皆んな投票した。
そして、大トリを務めた朝霧は、そこそこ古い青春ソングをしっとりと歌った。
朝霧は基本的に愚鈍で、何をやっても上手くできない。
歌だって声量はない。
しかし、どうやら、歌に感情を込めるセンスには天性の物があったらしく、その愛らしくも儚げな声質も相まって、しっとりとした歌がもの凄くハマった。
朝霧が歌った、心が夏模様な青春ソングが、皆んなの心に過剰に刺さり、皆んながしっとりと涙し、宴の盛り上がりが完全に沈静化した。
結果、満場一致で朝霧が優勝したのであった。
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「姫の歌、心に沁みたでござるぅ」
「ああ、またききてぇな」
「哀愁を誘う歌姫」
「歌声をデータとして録音させてほしい」
「本当ね、CDにして売って欲しいわ」
「皆んな大げさぁ」
そんな、たわいもない事を話しながら下校をする。
そして、皆んなで連れ立ってしばらく歩いた後に、朝霧だけが分かれる。
「じゃあ、皆んなまた明日ね」
朝霧はこれから文目との待ち合わせ場所に行くのだ。
その事を聞いていた皆んなだったが、そこで太刀川椿が気になっていた事を質問する。
「あの、姫?」
「ん、なに椿ちゃん」
「姫は、その、六道文目殿と付き合ってるのでござる?」
「そだよ」
あっけらかんと言う朝霧。
「そ、えっと、小学生と付き合うって、大丈夫なんでござろうか」
皆んなが、密かに思っていた事である。
「……ふふ」
その質問に朝霧は妖艶な笑みを浮かべる。
皆んなは何故かゾクリとした。
「知らない」
そしてそう言う。
「関係ないよね、好きなんだから」
とろりとした愛くるしい笑みを浮かべる朝霧。
その愛らしさにはどこか毒と凄みがあり、一同は「そうっすね、朝霧さんが正しいです」という感じになったのであった。
そう、愛の前に異論などないのである。




