たわむれる。
「あの、あさぎさん」
「なにー、文目さん」
朝霧は文目の膝を枕にしながら、教科書を読んでテスト勉強をしている。
「そろそろ帰らないとまずいのでは?」
「なんだとー、帰れというのかー」
「いや、そう言うわけでは」
「まったく、しょうがないなぁ、じゃあ今度は僕が膝枕してあげるー」
「話し、聞いてます?」
「きいてないー」
朝霧は楽しそうにして起き上がり、けたけたと笑いながら自分の膝を叩く。
文目はそんな朝霧をみやり、小さくため息をついた後にまんざらでもなさそうにして、その膝に寝転がった。
「で、帰らないんですか?」
「そだねー、そろそろ帰らないと、とわちゃんに怒られちゃうからなぁ」
朝霧は、膝の上の頭をにこにことしながら撫でる。
幸せだった。
朝霧は今、幸せだった。
生まれて初めての恋人。
生まれて初めての大事な人。
生まれて初めての、自分を本当に愛してくれる人。
朝霧は…
朝霧は、九醸の人間である。
それも、あの九醸の純血たる朝月に「遠いけど、確かに九醸」と思わせた程に。
あのヤンデレファザコンの明咲を「中途半端に九醸」と評価した朝月に、だ。
そう、朝霧は確かに九醸なのである。
何が言いたいかといえば…
「ねぇ、文目さん」
「なんですか?」
「子供は何人つくる?」
「…………っごふッ!?」
朝霧の愛は大きい。
めちゃくちゃ愛が重く、はちゃめちゃに愛が深いのだ。
ただ、勘違いをしないでいただきたい。
朝霧の母、朝月がそうであったように、九醸の愛は決して押し付けではない。
全身全霊で相手を思いやる愛なのだ。
だから朝月は、表面上は立派な人間を演じている。
そういう娘を、朝月の母である美智が望んでいたから。
九醸の愛は尽くす愛なのである。(ただし、尽くす対象以外にはバケモノ)
つまり。
「えっと、その」
文目は目元を隠して赤くなる。
文目の理想の家族像というのは、存外普通だ。
というのも、彼の父も祖父も、至って普通の家族だからだ。
普通に愛し合って、普通に子を成している。
そして。
六道の家は武道を通して健全な肉体と精神をつくる。
健全な肉体をつくる。
そう、健全なのだ。
そして今は男子。
そう、健全な男子。
しかも、道場六衛門とかいう、めちゃくちゃな雄の遺伝子が覚醒している。
「いや、別にその、あの」
ぶっちゃけ、生ませたかった。彼の野生が孕ませたがっていた。
雄の本能が「いけー!やれー!」と言っている。
言っているが、元女性の理性が「つつしみ!」とも言っている。
本音と建前が合戦をしていた。
「……ひひ」
朝霧はうろたえる文目を、楽しそうに、嬉しそうに、見つめる。
イタズラ心と、なんでもしてあげたい心が、どんどん溢れ出ていた。
九醸の愛は尽くす愛。
そして、尽くす相手の事は、わかってしまう。
「ね、文目さん」
朝霧は文目の頬を撫でて言う。
「ぼく、いっぱい産んであげるよ?」
相手が望むなら、産む気が満々の元男子が、そこにいたのであった。
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ちなみに。
朝霧はそのあと普通に帰ったし、文目はめちゃくちゃ悶々とした。




