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時間が経過する。


朝霧が、九醸の当主朝月と会ってから、約一月半が経過した九月の終わりの頃。


「テストやべーでござるぅ」


「はははははっ!ぜんっっぜんわかんねッ!」


「ラグナロク、さしずめラグナロクと言ったところぉ…」


「僕のデータを参考にするといい」


「で、ここはこう。朝霧、わかったかしら?」


「うん!わかんないけど、わかった!」


朝霧はいつメンとテスト勉強をしていた。


ーーーー


この一ヶ月の間に、朝霧の状況は目まぐるしく変わっていた。

色んな変化が朝霧を迎えた。


それらをのべつまくなしに羅列していこうと思う。



まず、朝霧の養育に九醸も加わった。


つまり朝霧の勘当は、元より無かったことになったのだ。

とはいえ、朝霧の保護が解除された訳ではないので、朝霧を監督する権利が九醸に戻ったということではない。

単に九醸が、朝霧に金を出してくれる家になっただけである。

これにより朝霧は五業が親権を持っていて、六道と懇意にしている、三世に居候した、九醸生まれの子という、マジでよくわかんねぇけど、とにかくヤベェ生徒になったのだった。


ちなみに仮に今、朝霧が九醸に戻ったところで、何が起きることも無い。

朝霧の祖母の美智に、朝霧が似ているからと言って、それによって朝月達がどうにかなることは無い。

彼等にとって美智は、良くも悪くも唯一無二なのだ。


朝霧があの家に戻ることは二度とないだろう。

朝霧は一度死に瀕したことで、九醸としての資質がいくらか目覚めた。

それにより、朝霧は朝月の本質を見極めたのだ。


朝月は朝霧を「美智の解釈違いの同人誌」的な存在と思っている。

公式からの供給が二度とないから妥協してやる粗悪品と、その程度にしか思っていないのだ。

朝月にとって朝霧はそういう物資なのだ。


流石にそういう存在と心穏やかには暮らせないと、朝霧は思っているのだ。



朝霧の怪我が、概ね治った。


金をかけまくった治療のお陰で、一ヶ月を少し過ぎる頃には概ね完治した。

ただ、綺麗に折られた足とは違い、メキメキと潰された左手には少し障害が残ってしまった。

握力がほとんど無いし、指先が上手に動かないのだ。

とはいえ元々握力は低いし、そもそも不器用だ。そして利き手は無事なので、そこまで不利益は無いようである。そして喉は綺麗に治り、愛らしい声が戻ってきた。

一方で、トラウマは治っていない。今でも目の前で、手を上げたり足を上げたりすると恐怖で硬直してしまうのだった。



弟の九醸力樹(くじょうりき)とは仲良くなった。


怪我が大分回復してきたあくる日、朝霧が鳳雛館でメイドをしていたら、いつのまにか力樹が隣に座っていた。

それにびっくりした朝霧だったが、しばらく見つめ合い、そして無言のまま力樹にお菓子を「あーん」してあげた。

それに少しだけびっくりしていた力樹だったが、そのあと素直にもぐもぐして、一度頷く。

そして小さな声でこう言った。


「家に帰りたくなったらいつでも言ってくれ。どうにかする」


そしてそれ以来、いつのまにか近くにいることが多い。

朝霧も朝霧で、力樹が近くにいると無言で「あーん」をしてあげている。


朝霧は弟の扱い方を何となく察した様であった。


朝霧が「パフェ食べよう」といえば無言でついてくる。

朝霧が「ゲームしよう」と言えば無言で負かしてくる。

朝霧が「おススメの漫画教えて」と言えば無言で刃牙シリーズを全巻もってくる。

朝霧が「ラーメン食べいこ」と言えば無言で二郎系ラーメンに一緒に並んでくれて、しかも速攻ギブアップした朝霧の分まで食べてくれた。店の回転率を下げないスピードでほぼ二人分を…


朝霧がにこりと微笑めば、無言で頷いて返す。

二人はそんな関係になったのだった。

ちなみに弟くんは朝霧の一つ下の中3で、朝霧より遥かに背が高い。



朝霧にファンクラブが出来た。


学園の生徒は長らく悩んでいた。それは朝霧の扱いついてだ。

基本的に高貴な九大家出の美男美女は、ファンクラブを作るものなのだ。

永久子にも雄一郎にもファンクラブはあるし、後は高等部では八咲蓮二(やつざきれんじ)と言う二年生にもファンクラブがある。


ちなみに五業芳一はフツメンなのでファンクラブはないし、一生直幸と二界正司はイケメンではあるものの、いまいちカリスマがないのでファンクラブ創設まではいかなかった。


そこに流星のごとく現れた、超弩級の美少女朝霧。

本来であれば、絶対にファンクラブが在るべき存在。むしろ、これだけの美少女を前にファンクラブを作らないのは無作法ですらあった。


しかし、朝霧は前評判が悪すぎた。

加えて何やら、姉に恨まれているだの強姦をしただの勘当をされただの、良くない噂が飛び交っている。


ファンクラブを作るのに値する美少女。しかし評判は良くない。

学園の生徒たちは、どうしたものかと途方にくれていた。


しかし、その状況をぶち壊した人物がいた。


そう。三世永久子だ。


永久子は周りの意向などまるで気にせず、「朝霧親衛隊」なる団体を立ち上げた。

曰く「あの娘はみんなで守ってあげないといけない」とのことであった。


この永久子の行動により、学園に旋風が巻き起こる。


まず、朝霧のクラスメイト達は、全員入隊した。

そして学園最強と噂の五業芳一氏も入隊し、永久子の兄である雄一郎氏も入隊させられていた。ちなみに雄一郎氏は「朝霧も今となっては俺の妹のようなものだからな!」と言っていたので、特に異論はないらしい。

そうなると「うおおおお、本当は可愛いとずっと思っていたんだっ、俺は親衛隊に入るぞぉ!」と言うものが後に続いた。


やがて朝霧の弟君である九醸力樹の入隊から中等部にも波及し、更には六道あやめの入隊により小等部にも波及した。


そう「朝霧親衛隊」は今や学園最大規模のファンクラブとなったのだ。



しかし、朝霧にはアンチも多い。


実のところ朝霧は好き嫌いが分かれるタイプのようで、嫌われる人には本当に嫌われるようなのだ。

朝霧を嫌いなタイプは「見ているだけでイラつく」という人がほとんどで、どうやら朝霧の異能により引き出された嗜虐心をベースに、やがてそれが嫌悪感として成長してしまうようなのだ。

朝霧アンチの数は中々に無視できない数で、そのせいで未だに朝霧には悪い噂が絶えない。

ちなみに、今一番噂されているのは「朝霧淫乱説」である。


良くも悪くも影響力の強い朝霧の異能であった。


ーーーー


「もう勉強したくないでござるぅ」


「やべー、もう来週からテストかよ」


「ふふ、ハルマゲドンだよぉ…」


「僕のデータ通りに勉強すれば赤点は逃れられるはずだ、多分」


「中間テストが終われば次は運動会よ。気合い入れなさい」


「ふふ、運動会、ちょっと楽しみぃ」


勉強終わりの帰り道。

クラスメイトのいつメン達と共に談笑する朝霧。


しばらく一緒に歩いた後、朝霧だけ別の方向を向く。


「じゃあ、僕は今日もこっちだから。またね、みんな」


そこで手を振り、お別れをする朝霧。


「また来週でござる、姫っ!」


「ひめー、勉強がんばろうなぁ!」


「共に終末をのり越えよう!」


「姫にもテスト対策のデータを後で送っておくから」


「朝霧、また来週ね」


各々に返事を返してみんなと別れ、今日も朝霧は向かう。

武蔵に車で送ってもらい今日も…


「今からいくね、あやめちゃん」


…まもなく異能での変身を終える、あやめの元へと。


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― 新着の感想 ―
弟は原作(お婆ちゃん)知らないから最初に読んだ同人誌にドはまりしたんだな。
え、弟くんまさか…?あらあらまぁまぁ…! しかも九醸の血がかなり強いとされている弟くんが…!あらまぁなんてこと…!そっかそっか…フフフ…
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