遊びに行く。
土曜日。
この日、朝霧は生まれて初めて友達とお出かけをした。
「気おつけてくださいまし!」
「…!」
笑顔で見送る永久子に、満面の笑みで手を振る朝霧。
今日の朝霧の服装は白シャツワンピースにレギンスとスニーカーを合わせたコーデだ。
髪型はシンプルな二つ結びにキャップを合わせている。
このスポーティーな出で立ちで朝霧は今日、川遊びに行くのだ。
当初の予定ではカラオケに行くはずであった。
しかし、朝霧は未だに声が出ない。
今現在、九大家御用達の高額な喉治療を受けているが、それを持ってしてもまだ少しかかる。少しでも早く治す為に、決して声は出さない様に言われていた。
「それでは向かいましょうか」
「……!」
川遊びの目的地である自然公園へは、現地集合現地解散ということになっている。
なので、武蔵に車で送迎をしてもらうのだ。
「到着するまで、少しお休みになってはいかがですか?」
「……!」
朝霧は先日、初めての友達とのお出かけが楽しみすぎてあまり眠れなかったのだ。
そのことを察していた武蔵に眠るよう勧められるが、やはり興奮して眠れない様であった。
朝霧は「ぜんぜん眠くないし!」という顔をしている。
「ふふふ、楽しそうで何よりでございます」
武蔵はバックミラー越しに、後部座席でニコニコしながら自然公園のパンフレットを見つめる朝霧を、微笑ましく見守るのであった。
ーーーー
「寝ちゃったでござる」
「寝ちゃったなぁ」
「僕のデータによれば、先日は楽しみすぎて眠れなかったらしい(みんな知ってる)」
「眠り姫なのだからしかたないさ」
「可愛いわ。やはり寝顔が可愛いわ」
川遊びが開始して一時間ほど。
最初はとってもキャッキャしていた朝霧。
未だ手足の怪我が治っていないが、朝霧は屋外レジャーを満喫していた。
久能詩子にお姫様抱っこされながら川を爆走したり。(久能詩子は常人離れした体幹を持っているため可能であり、一般の方々は決して真似できません)
太刀川椿におんぶされながら河原を爆走したり。(太刀川椿は達人級の歩法を習得しており、揺らさないで運ぶことができます)
その後は河原の木陰で、市ヶ谷光輝にラムネの飲み方を教わりながら休憩していた。(窪みにはめることができず、結局ビー玉をぺろぺろして飲んだ)
そしたらいつのまにか寝ていたのだ。
すごく楽しみにしていて、すごく楽しんでいたので、起こしてあげたほうが良いのだとは思う。
しかし…
「光輝、起こしてあげてはどうでござるか?」
「…兵輔、起こしてやれよ」
「…僕のデータ的に木之実氏が起こした方が良いと思う」
「…ふふ、その使命、詩子に託すとしよう」
「…無理だわ」
そよ風に吹かれて、水辺に微睡む美少女。
とても絵になっていて、侵し難い雰囲気がある。
そして何より気持ちよさそうであった。
ぴよぴよと満足そうに微笑む寝姿が可愛すぎて、それを侵害することができないのだ。
結局クラスメイト達はお昼のBBQまで起こすことが出来ず「なんで起こしてくれなかったの?」としょんぼりする朝霧に心を痛めることになるのだった。
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午後から朝霧は釣りをした。
餌は天城兵輔がつけてくれたので、朝霧は糸を垂らすだけだった。
他のみんなは結構普通に釣っていたが、朝霧は一匹もつれなかった。
一匹も釣れないのに、楽しそうに笑っていた。
釣れない朝霧をみんなが構ってくれて、とても幸せそうであった。
その後は、釣った魚を焼いてもらったり、お茶を飲んだりしてまったりと過ごした。
朝霧は焼いてもらった魚を一口もらったり、マシュマロを焼いてもらったり、甘くしたミルクコーヒーを淹れてもらったりして、終始ニコニコしていた。
そして。
やがて時が過ぎ帰る時間となった。
「ね、姫、そろそろ帰ろうでござる」
「そうだぜ姫、もうすぐ日がくれちゃうぞ?」
「僕のデータによれば、日没まであと三十分弱」
「また来よう?約束するから、ね?(困ってる)」
「ええ、約束するわ、絶対」
帰りたくないとぐずる朝霧をみんなでなだめ、最後は「絶対またみんなで遊ぶ」と指切りをして、初めての川遊びを終えた。
「…!!」
「うん、すごく楽しかったでござる!」
「ああ!楽しかったぜ!」
「僕のデータ至上最高の楽しさだった」
「最高の時間に感謝」
「そうね、また遊びましょう」
こうして朝霧は、幸せのまま一日を終えるのであった。




