舞い戻る。
朝霧は武蔵に押されながら、車椅子で教室に入った。
今日の髪型は特にアレンジはしてないものの、派手なフリルリボンを添えた「あざとい」感じの装いである。
ふつうであれば「ぶりっ子」だとか「あざと過ぎ」とか言われそうな装飾も、真美少女の朝霧が身につければ普通に似合う。顔が強いので、可愛すぎる装飾に負けないのだ。
永久子がリボンをつけたがる訳である。
朝霧は注目してくるクラスメイト達に「へへへ、怪我しちまってよう」とでも言っていそうな表情で苦笑いをした。
クラスメイト絶句。
怪我をさせられたとは聞いていたが、こんなに大怪我とは聞いていなかったのだ。
実姉に暴行を受けて学校を休んだとしか聞いていなく、よもや家族からこんなにも酷い怪我を負わせられているとは思っていなかった。当然、心配はしていたが、まさかこんな。
足はギブスだし、手もギブスだし、首に包帯まいてるし。これを、実の姉が?
「ひ、姫ぇ!?どどどどどどどど、どうしてっ!?こんなに!?」
「うおおおおおお大丈夫なのかよ姫ぇえええ!い、痛いか?今も痛むのかっ!?」
「ぅぇぇえええええ!酷い!うそ!大丈夫!?(驚きでキャラ付けを忘れております)」
「のおおおおおおおおお!ぼ、僕のっ!データが!?」
「あ、朝霧、えっ!?どうし、えっ!?」
皆んながわちゃわちゃと朝霧に群がる。
が。
「少し、離れて頂けますか?」
そこで声が通り、全員が止まる。大声ではないのに確と聞こえる声だった。
見れば朝霧の車椅子を押していた老執事が、手を前に出して「止まれ」のジェスチャーをしていた。そしてその手のひらが移動して、朝霧を指す。
そこには目を見開いて、怯えた表情のまま硬直する朝霧がいた。
朝霧に怯えた表情を向けられたクラスメイトは、メンタルに大ダメージを負う。
「ござるぅ…」
「生きててごめんなさい…」
「世界の終焉…」
「データの敗北…」
「わ、わたしが、こ、怖いの?」
何人かは膝から崩れ落ちた。
「大丈夫ですよお嬢様。大丈夫です。怖くありませんよ」
全員が全員注目したのを確認してから、朝霧の肩をぽんぽんと叩いて落ち着ける。
そうしながら、クラスメイト達に説明をする。
「申し訳ありませんが、お嬢様に近寄られる際は、絶対に手を高い位置にかかげないで頂きたい」
先程、クラスメイトが朝霧に群がった際に、何人かが高い位置に手を置いていた。
「高い位置の手が、トラウマになってしまわれたようでして…」
武蔵が「…おいたわしや」と言いながら朝霧を落ち着ける。
朝霧は少しの間、硬直したまま短い呼吸を繰り返した後、一度深く息を吐き、目を瞑って深く吸う。
ゆっくりと息を吐き出した後、目を開けて、申し訳なさそうに周りを見る。
「……!」
少し白くなった顔色で「ごめんね」と口パクで言った。
その時にクラスメイト達は察した。
出ない声、首の包帯、実の姉の暴行、トラウマ。
それらが導き出す答え。
「ちょっとそこまで、殺害をしに」
冷たい表情で、久能詩子が立ち上がる。
「今宵のそれがしは血に飢えているでござる」
それに無表情の太刀川椿が続く。
「ははははははははは、俺、こういうのマジで許せねぇ」
市ヶ谷光輝は笑顔を浮かべ。
「殺す」
羽柴木之実は素になった。
「データとか知んねぇわ」
そして天宮兵輔はデータを捨てた。
クラスメイト達が全員教室を出て行こうとするのであった。
「……っ!?」
そして、それを見た朝霧は異変を察して彼等をなんとか止めようとする。
そうしなければ、このまま貴監院監獄に特攻しそうであったからだ。
「〜!!」
朝霧は車椅子を押してもらい、彼らを追いかけるのであった。
ちなみに。
この後、皆んなを止めようとした朝霧が車椅子から転げ落ちそうになり、それを察した全員が神速で舞い戻った。舞い戻らなくても武蔵が受け止めていたが。
舞い戻った皆んなに対して朝霧が「土曜日遊び行くの楽しみにしてたから行っちゃやだ。そのために学校来たんだから!」と全力で駄々をこね、全てをうやむやにしたのであった。




