激怒される。
怒声にびくりと跳ねて声の方を向けば、そこには鬼の形相の明咲がいる。
「ひっ…」
朝霧その鬼気迫る表情に本能的な恐怖を感じた。
明咲の様子は尋常ではなく、下手をすれば殺されてしまうのではないかという気迫があった。
「お前、何を笑っている」
「ひぃッ!?」
強い歩調で迫り、あっという間に距離を詰める。
朝霧は明咲の怒気に恐れおののいて椅子から転げ落ちる。あまりの恐怖に言葉も出ない。
床に落ちた朝霧を見下しその顔を見やる明咲。その顔を見れば見る程、明咲の内にありえないほどの怒りが湧く。
明咲は激怒していた。
ーーーー
今の今まで、ずっと我慢してきた。
名門中の名門、九大家の一家門である九醸家の長子として、ずっと頑張ってきた。
九醸の名に恥じぬよう、努力を重ねてきた。いつだってプレッシャーと戦ってきた。
押しつぶされそうに感じたことも、一度や二度とでは無い。でも踏ん張ってきた。それはひとえに家族のためだ。母と祖父はとても尊敬できる立派な人だし、弟も優秀で誇らしい。
だが、何より父様だ。父様はいつだって親身になって私を支えてくれた。いつだって欲しい褒め言葉を私にくれた。頑張ったらご褒美をくれて、強請ったら抱きしめてもくれて、お願いすればデートだってしてくれる。最近お風呂に一緒に入ってくれなくなったのは不満だが、お休みなさいのオデコのキスはしてくれるし、おはようのほっぺのチューはさせてくれる。
父様だ。私には父様がいて、だから頑張ってこれたのだ。私は父様を愛しているのだ。父様が一番なのだ!
だから、今まで良くしてやっていたというのに。
父様が「姉弟で仲良くしなさい」と言うから仲良くしてやっていたというのに。
だから、気にくわないコイツをかまってやっていたというのに。
姉らしく、導いてやろうとしていたのに。
父様が、そういうから。優しい父様が、お前なんかを気にかけるから。
だから、だからなのに…
お前は父様をころそうというのか
見れば見る程に、憎らしい程に、お祖母様に似ている。
母と祖父は確実に父様を殺すだろう。
わかる。
きっと私が父様に向けるこの愛と、母と祖父が持つ愛は、同じものだ。
絶対に殺すだろう。
お前が父様を殺すのか
許せない。しんじられない。ありえない。
なんでなんでなんでなんでなんでっなななななあああああああああ!
コイツ、さっき楽しそうに笑っていた。
幸せそうにして、笑っていた。
へらへらと、女服を着て、強姦魔のくせに、きもちわるい。はきそうだ。
何も努力をしていないコイツが、なんの努力もせず幸せになろうというのか。
それだけでも強腹だというのに…
父様を私からうばうというの?
はぁ?
ああ。
もう手段なんて選んでられない。
正規の手段じゃあ、もう無理だろう。
だから、実力行使だ。
まさかお姉ちゃんがヤンデレファザコンだったとはたまげたなぁ。
このエピソード書くまではここまでじゃなかったんですよ?
でも描き始めたら、勝手に語り出してきて私の方が「ああ、君そうなんだ」ってなりましたw




