表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
24/51

幕間 理事長の思惑


理事長室。


「ふふ」


理事長刀子は契約済の書類を見てほくそ笑む。

これで九醸朝霧という「異能者」を囲うことができる。


異能者。

それは九大家の血統に度々現れる、特殊な力を持つ者達だ。


異能と言っても、ゲームやアニメ等のフィクションに出てくるような、魔法的な超常現象を意図的に引き起こす力ではない。


あくまで、人の力。

誰しもが持つ人の機能が、異常なまでに発達している。

そう言った力を持つ者を「異能者」と呼称するのだ。


九大家の純血統や従族家の上澄みが人外じみて強いのも、まあ異能といえる。

しかし単に武力という点では、九大家周りで割とありふれているため、あまり異能とは言われない。


では何が異能かといえば、例えば理事長刀子の観察力だ。


刀子は「才能を見抜く目」を持っている。

これは三世の血統に度々現れる異能で「才覚視」と呼ばれる異能だ。

これは、対象の人物を観察して、人なりをみて、会話をして、動きをみていると…

唐突に、その人物の秘めた才能や隠したる能力を理解するのだ。

看破するための所要時間は人によって異なるが、いつも突然に「ああなるほど、この人は…」という感じに、納得し理解するのだ。


この「才覚視」を持って理解した朝霧の異能。


それは「魅了」である。

これはフィクションに良くあるような洗脳じみた力ではない。

ごく単純に魅力的なのだ。その人なりが、雰囲気が、言動が、人を惹きつけるだけなのだ。

ただ、それが「異能者」と呼ばれるレベルにあると言うだけだ。

そして朝霧の魅了はただの魅了ではない。

朝霧の魅了は「弱さ」を根源とした魅了。

庇護欲、儚さ、可憐さ、あわれみ。

そう言った、人の心の柔らかな部分を掻き毟るような魅了なのだ。


そしてこの魅了の恐ろしいところは、相手が「強者であればあるほど嵌りやすい」と言う点だ。

人は自分には無いものに強く惹かれるもの。手に入らないものに焦がれるもの。


相手が強く気高く誇り高い人間であればあるほどに、弱く儚く愛くるしい朝霧に惹かれていくのだ。


要するに、九醸朝霧という少女は幾人もの強者が勝手に味方をしていく、あまりにも厄介な存在なのである。


ちなみに、そんな魅了を持つ彼女なので「弱い」人間達にはただの美少女にしか見えない。至高の美少女であることには違いないが、心が渇望するような衝動は芽生えない。

そして「悪い」人間達には獲物にしか見えない。悪い人間は弱者を食い物にするからだ。


「ああいうのには、優しくするだけでいいから楽だな」


三世刀子。

彼女の元々は弱い。愛の無い親に育てられ、愛を求めていた人間だ。

幼少期に今の夫となる人物に救われ、愛され、愛を知り、強くあろうとして、強くなった人間だ。救われなければ、何処かで壊れた筈の弱い人間である。あくまで強いのは夫の方であり、そんな夫に似ている娘はもう彼女の虜であった。


朝霧という少女は、強い者達にはさぞ魅力的にうつるのだろう。

だが、根源が弱者である彼女には、ただの美少女にしか見えない。


刀子は知っている。ああいうのは敵対しないで優しくするのだ。恩を売るだけで、アレが敵に回ることは無い。


上手く立ち回る。

異能者は扱いを間違えなければ利をもたらす。


せいぜい、やり過ぎない程度に美味しくいただくとしよう。


「ふふ、私は少しだけ、悪い人間でもあるからね」


刀子は書類を然るべき機関に提出する手はずを整えるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おお、割と納得できる異能だ。古代のラノベで似たような能力を見たような持ってる端役がいた気がする。
なるほどー異能がある世界。異能が発現したから弱者(女)になったのか、生存の危機で異能(女)が発現したのかによって話が変わって来ますね~
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ