自分語りする。
「プライドとかないんですのっ!?」
「朝霧さんそれは流石に、よく考えて下さい…」
間髪入れない朝霧のペット発言に、吉永と永久子が「馬鹿だからよくわかってないんだなぁ」という目で見る。
「へへ…… いやね、別になんも考えて無い訳じゃないんですよ?」
そんな二人を見やり、朝霧は少しだけ困った顔で小首を傾げた。
「えと、僕って本当にダメダメじゃ無いですか……」
そして朝霧は、少しだけ自分語りを始める…
朝霧は昔からダメだった。本当にびっくりするくらいダメだった。
せめて一般人レベルであればまだマシだったのに、それすら遥か遠くだった。
オムツが外れたのは実は小等部に入る直前だし、お箸が使えるようになったのは十歳頃だ。
前転が出来るようになったのは六年生頃だし、後転は未だにできない。縄跳びは二重飛びとか走り飛びとかは出来ないし、なんなら普通に飛ぶのも三回に一回くらいは失敗する。
勉強は国語と社会はわりと出来るけど、それ以外はマジでやばい。因数分解とか結局少しもわからないまま中等部を卒業した。なんなら分数の時点でやばい。
あと。
朝霧が二年間みっちり頑張って乗れるようになった自転車。
それを弟が、初めて跨った瞬間に漕ぎ出したのを見て、涙すら出ない程の絶望があった。
恥ずかしくて誰にも言えなかったけど、部屋に引きこもっているときはいつも勉強と運動をしていた。ずっと自分なりに努力していた。努力してこれだった。
教師とかもつけてと言えなかった。九醸家なのに一般人以下の出来だから、恥ずかしくて。あと幻滅されるのが怖くて。
諸々のストレスで食い散らして太って、更に酷くなった。
あまりにも、あまりにも、あんまりにも酷い出来。
今までは、必要以上に威張り散らしてそれをうやむやにしてきた。
だけどもう、それも馬鹿馬鹿しい。
「なんかね、性転化してから、凄く冷静に物事が見れるようになったんですよ…」
冷静に見て自分はダメだった。取り繕ったところでダメだった。
馬鹿が賢しらにすることの、なんと愚かしいことか。
ならもう、取り繕わなくていい。そも、強姦未遂の落伍者に取り繕うものなど無い。家から勘当された自分に取り繕うようなものは無い。
「だからもう、僕はダメダメなのを隠しません」
だけど、それだと身が危ないと思う。客観的にみて今の自分は可愛い。
馬鹿な美少女がそこらへんに落ちてたら、悪い奴らの食い物にされるのは流石に解る。
「だから誰かに飼ってもらったほうが、僕は安全だと思うんです」
自分は無能故に、何かの役には立たない。
この顔を使って金を稼ぐことは出来るだろうが、そういうのはしたくない。
頭の悪い自分は、この顔で賢くは稼げないだろうから。
しかし、この顔以外に、自分には売り物がない。
ならせめて不特定多数ではなく、自分が決めた誰かに媚を売って生きていきたい。
朝霧はそう話したのだった。
「むぅ」
「しかし、でも…」
朝霧の話に言葉を失った吉永と永久子。
二人は想像以上に朝霧が現実を見えていることに驚いていた。
朝霧が話した事は概ね正しい。正しいと感じた。
一流の教育を受け、人を使うことも学んでいる永久子にはわかった。今日一日の朝霧の仕事ぶりを見て良くわかった。朝霧は努力する人間の姿勢が備わっていて、しかし努力が実を結ばない人間であると。
やる気の無い人間を、なんとかしてやる気を出させ教育してきた吉永にはよくわかった。朝霧はやる気がある。しかし上手くいかない人間だと。
残酷なほど、才能がない。
圧倒的に全てのスペックが足りない。
なのに顔はいい。
なるほど。
ならば、誰かの庇護下で生きるというのは、わかる話しであった。




