まるでダメ。
一時間ほど後。
「…うぐうぅぅぅぅぅぅぉ」
「…めんぼくないですぅ」
そこには頭を抱えてうずくまる永久子と顔をおおってしゃがみ込む朝霧がいた。
「朝霧さん、あなったって子は…」
「はははは、やべーですぅ」
そして、そんな二人を見やり苦笑いを浮かべる吉永と壬生なのであった。
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結論から言うと、朝霧は壊滅的であった。
とにかく仕事が遅い。要領が悪い。
物覚えは悪いが覚えられないわけでは無い。
動きは遅いが出来ないわけじゃ無い。
失敗は多いが反省してないわけじゃ無い。
でもダメ。とにかく出来が悪くクオリティが低い。
これをどれだけ仕込んでも、鳳雛館での最低レベルに達するのは無理そう。そう断じるに余りある朝霧のしごできないであった。
「うえええええん、どおすればいいんですのぉ!!」
「ごめんなさい、ごめんなさいぃ」
こんなに出来の悪い人間を見たことがない永久子は、ちょっと混乱している。
朝霧はそんな彼女に座したまま謝り倒す。ちなみに朝霧は現在、体力を使い果たして立てなくなっている。この体力の無さも匙を投げた要因だ。
「うぎぎ、もうちょっとなんとかなると思ってましたわぁ」
確かに永久子は人事に口を出せる。だがしかし、それは誰でも好き勝手に採用出来るという意味ではない。
採用をしたなら当然責任が伴う。良く無い人事をしたなら責任を取らねばならない。
朝霧を雇ったとして、このまま雇用しては周りに迷惑がかかる。教育をしようにも、この体力では時間がかかりすぎる。そして、そこまでの時間をかけて朝霧をメイドに仕立てる価値はない。
詰んでいる。
いや、別にメイドにこだわらねばいいだけなのだ。朝霧の美貌は何をせずともそれだけで価値がある。それを最大限活かせば、出来る仕事はいくらでもある。
だが、ソレはメイドでは無い。メイドでは無いのだ。
「わたくしをその気にさせておいて、今更メイド以外などあり得ませんわっ!」
この短時間で、永久子は朝霧のメイド姿に惚れ込んでいた。
朝霧はメイド服がとても似合っていた。
朝霧はとにかく顔がいいので大概の服は似合うが、その中でもメイド服は当たりだった。
控えめな服装なのに、隠しきれない可愛さのギャップが良かった。
そしてなにより仕草が良い。ドジっ娘メイドムーブがとても良いのだ。
転んだ時。
広がったスカートと少しだけ捲れて顕になる、白いふくらはぎ。
立ち上がった後は恥ずかしそうにして、頬に朱がさす。
紅茶をサーブする時。
難しい顔でゆっくりお茶を運び、真剣な表情でお茶を置く。
置いた後は、花が咲く様な笑顔で頭を下げる。
食器を洗う時。
真面目な顔で皿を洗い、ほっぺに泡がついていてもお構いなし。
真っ白になった皿を見て、口元がドヤっていた。
掃除をする時。
外で掃き掃除をお願いしたら、竹箒に振り回されて何故か転んでいた。
当然の転倒に、びっくりしてぽけらとしていて、頭には雑草のお花が乗っていた。
「全部がわいがっだでずわっ!!」
永久子はそう力いっぱい叫ぶ。
それは魂の叫びと言えた。
「こうなったら、しかたありませんわ!」
朝霧を手放すまいと改めて誓った永久子は、覚悟を決めた。
奥の手を使う覚悟を…
「こうなったらもう…」
そして永久子は最終手段を行使する。
「お母様に頼るしかありませんわっ!」
そう。
三世永久子は理事長を召喚することを決めたのだった。




