バイトをしたい。
その後。
朝霧は泣き疲れて、うとうとし始めてきてしまった。
あまりにも体力が無さすぎて活動時間が短すぎる。初日に体力を使い切って以降、すぐに眠くなってしまうようだ。そんな朝霧は寝ぼけながら早速吉永に相談をする。
「ねむぅ、ぅ、せんせ、実は、ばいと、しなきゃ」
「バイト、ですか?」
「うん、じつは…」
むにゃむにゃとした、要領の得ない説明。それを要約する吉永。
断片的な話をまとめれば、生活費が五万しかないので、少しでも生活の助けになるようお金を稼ぎたい、とのことだった。
言い終えて再び眠ってしまった朝霧にタオルケットを掛けてあげ、なるほどと思う。
実は先程九醸家へ性転化の確認と共に、謹慎にもかかわらず朝霧を監督していないことへの抗議(すっごいオブラートに包んで伝えている)の電話をした際、「更生の為の一環である」との回答を得ていた。警護兵をつけていて、問題行動をするようであれば実力行使で止めるよう命令してあるので問題ないとのこと。吉永は「そういうことじゃねぇんだよ」と思いつつもそれを飲み込んで了承した。
おそらく、朝霧の言っていた「勘当」と「生活費五万」は本当のことなのだろうと吉永は察する。曲がりなりにも教師である吉永は、生徒の言動が「同情をひく為の嘘か否か」が分かる。もちろん三御坂の生徒には化け物みたいな生徒もいるので、分からない子もいる(そも、そういう化け物系は同情などひかない)が、大概はわかる。
その上で、朝霧そういう類でないと確信を持っていた。
先程の一時間説教の最中でも「同情をひくまい」と必死で涙を我慢していた。まぁ、全くもってこれっぽっちも我慢できていなかったが。
要するに、朝霧には「私って可哀想」感が全くない。ので、恐らく本当にバイトをせねばキツいのだろう。
力になってあげたい。担任の先生としても個人としても。教師として一生徒にのめり込むのは良く無いとわかっていても、そんな一般論は超美少女を前には無意義だ。
まず、三御坂学園にバイトを禁ずる校則はない。
三御坂の生徒は将来の日本を担うエリートが多く通うため、学生でありながら仕事に関わる生徒が多い。ので、労働を禁ずる決まりはないのだ。
しかし、朝霧となると話が違ってくる。問題を起こした生徒や成績の悪い生徒はその限りでないからだ。つまり、問題を起こしていて成績が悪い朝霧は絶対駄目という事だ。
だが、朝霧が金銭で困る様を見たくはない。自分がお小遣いをあげられればどれだけ楽か。
「なら、あれしか…」
吉永はタオルケットに丸まって眠る朝霧を抱っこして移動する。
異動先は学園の中央にある、豪奢な洋館。
ここ、三御坂学園の小、中、高の全ての中核的生徒の交流の場にして、将来の社交の練習場。
学園の中枢、鳳雛館へ。
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「ぅん? えっと、ここは?」
再び知らない天井を目にする朝霧。今回も寝てから一時間ほどで目を覚ました。
身体を起こして辺りを見回せば、随分とクラシカルな洋室で…
「えっと、どちら様でしょう」
「うふふ、ごきげんよう九醸様」
そしてそこには洋室に似合のクラシカルなメイドがいた。
「わたくしの名は、三世永久子!」
そしてそのメイドは…
「この鳳雛館のメイド長ですわっ!」
そう主張するのだった。




