号泣する。
「ぜんぜいっ、ぐすっ、やざじぃ〜」
「ああ、もう、泣かないで下さい」
再び号泣する朝霧と、それを少し嬉しそうにしながら宥める吉永がいる。
ほんの少し前。
吉永が戻ってみれば、そこにはすんすんとぐずりながら、膝に手を置いて縮こまる朝霧が、ソファの端っこに座っていた。
すっかりしょげてしまったその姿に、愛おしさと罪悪感がない交ぜの感情が湧き上がる。
いっそ強く抱きしめてしまいたい感情をぐっと堪えて「九醸さん」と声をかければ、ビクリとしてから怯えた目を向けてくる。
その哀れな姿に「ああああ、違うのよ、もう怒らないから、そんな目をしないで」と叫びたい気持ちを抑えスポドリを渡す。
おずおずとスポドリを受け取り、上目使いでこちらを伺う朝霧に「いっぱい泣いてたから、水分摂って」と言えばコクリと頷いてキャップを開けようとする。
しかし、開かない。
目を閉じ「んー!」っという感じに踏ん張ってぷるぷるするその様に笑いそうになる。それをなんとか堪えてペットボトルを取り上げる。
そしてキャップを開けてあげ、再度渡すとぺこりと頭を下げてからこくこくと飲む。
やはり喉が乾いていたようでしばらく呑んでいたが、不意に激しくむせた。
吉永が朝霧の背をさすってやると「せんせい、ごめんなさい」と掠れた声で唐突に謝ってくる。
むせながら、隣に座る小柄な美少女が上目使いで謝罪してくる。
なんだこれはと思いながらえも言えぬ感情を誤魔化すように、今度はのど飴をあげる。
飴を受け取った朝霧は飴の個包装のギザギザを開けようとするが、ぐねっとなって失敗する。そして今度は反対のギザギザを開けようとするのだが、やはりぐねっとして失敗した。
朝霧は涙目になった。
吉永は「もう、本当に、何ならできるんだこの子は!?」と、そのダメ可愛さに内心で悶え苦しみながら、飴を取り上げる。
目が合った近くの卓の年配の女性教師が口元を抑えてプルプル震えていた。わかる。
そしてその女性教師が無言でハサミを渡してきたので、会釈してそれを受け取る。
個包装を開けてやり、飴を渡すと、ちょっと赤くなった朝霧がぺこりと頭を下げた。どうやらちょと恥ずかしかったらしい。
飴を舐めると、少しだけ朝霧の表情がほころんだ。
そんな朝霧の目元を、濡れたタオルで優しく拭いてやる。
そしてこう言ったのだ。
「これからは、ちゃんと先生に相談して下さいね」
と。
そしたら、また、じわじわと涙が溢れて、泣き出してしまい冒頭の状況となったのだった。
大問題を起こした生徒であると解っているのだが、それをこの幼気な美少女に結びつけるのは難しく、どうしても周りを巻き込んでほんわかしてしまう。
何より、朝霧が反省しきっているのは誰の目にも明らかであり、この場にいた教員のほとんどが、九醸朝霧に対する見方を良い方に変えていた。
そう。
「くそっ、九大家の面汚しのくせに。本当に気持ち悪い、身の程を知れよ」
獅童のような教員を除いた、ほとんどの教員が…




