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学校に到着する。


その後。


六道あやめが車を回し、それに乗って学園へと向かうことになった。

朝霧はその車にホイホイ乗り込む。本物の六道あやめだから良いものの、これが手の込んだ誘拐犯であったらもうおしまいである。馬鹿な女だ。


朝霧は冷房の効いた車でくつろぐ。そして次の瞬間にはもう寝ていた。先日も十分に寝ているというのに即落ちしてしまうあたり、相当に消耗しているようだ。

あやめはそんな朝霧に寄り添って、垂れるヨダレを拭いてあげたりしていた。


車が学園に着くと守衛に取次ぎ、あやめは六道の権威を持って朝霧の担任を呼んだ。

単純に朝霧を起こせば良いのだが「気持ちよさそうに寝ているのに起こすのはかわいそう」とあやめが言うので、先生の方が来た。

その後、あやめが彼女の状況説明を行った。何故かあやめが行った。朝霧はスヤスヤしていた。担任の先生は思った、なんだこれと。


朝霧を膝枕しているとき、車が来るまでの間にあやめが自然に聞き出したのだ。

阿呆の朝霧は重要な個人資料である、性転化に関する申請資料の各種を「見せて」と言われたから見せた。それにより全容を理解したあやめが説明を代わったというわけだ。要するに甘やかしである。


「それでは先生、朝霧おねーさんをよろしくお願いします」


「は、はい」


「おねーさんが起きるまで、先生は絶対におねーさんの側を離れないでくださいね?」


「わかり、ました」


凄まじい威圧を放ちながら、そう命じるあやめ。

先生の顔は青白い。


鹿鳴(ろくめい)


「はっ」


あやめは傍に控えるスーツ姿の少女の名を呼ぶ。彼女は六道家に使える鹿鳴家の者で、あやめ直属の従僕である。中学生程の年頃ながら、プロフェッショナルの貫禄を持つ少女であった。


「あなたもおねーさんが目覚めるまで側にいなさい。決して不埒な者を近づけてはなりませんよ?」


「拝命しました」


あやめは朝霧にここまでの経緯も聞き出していた。

それにより九醸家は勘当という体裁上、朝霧を表立って護れないのだろうと察していた。何故ならあやめが朝霧を介抱している時、周囲に護衛兵然とした気配を感じていたからだ。おそらく、あの時あやめが通りかからねば、誰かしらが朝霧を救助していたのだろう。


あやめは思う。なんと愚かなと。柔軟さにかけると。

いかな理由があれど、この桁違いの美少女を野放しにしておく意味がわからなかった。

とは言え、野放しになっていたからこそ得た出会いでもあるため、あやめはまあ良しとした。


それはそれとして、いまいち信用できないので、手勢を残して行くことにした。

本当は朝霧が起きるまで居たいのだが、あやめは用事があるためもう行かねばならない。


「では、おねーさんに宜しく言っておいて下さい」


「畏まりました」


あやめは名残おしそうに一度朝霧を見やり、そして立ち去るのだった。


「すぐまた会いましょうね、おねーさん」


ーーーー


六道あやめが去ってから1時間ほど経った頃。


「うむぅ?」


朝霧がようやく目を覚ました。

朝霧は眼に映った知らない天井に呆ける。

どこだここはと思いながらも、伸びをする。


「おはよう九醸さん」


「ぅえ!?先生??なぜぇ??」


驚いて周囲を見渡せば、そこは職員室。

なんと朝霧は職員室の応接用のソファに寝かされていたのだった。


「あれ?確か僕は車で、あやめちゃんが…」


「説明させていただきます」


「ぅわぁ!?」


そこですかさず鹿鳴が声をかける。

背後からの突然の声かけに驚くも、その声の主こと鹿鳴が六道あやめの従僕で朝霧の安全の為に置いて行ったのだと聞くと、それを信じ警戒心を解いた。

そして朝霧はここまでの経緯を聞いたのだった。


「……と、言う訳であやめ様が近いうちに伺うと思いますので、その際はどうぞよしなに」


「わかりました、ありがとうございます」


「では私めはこれで」


「うん、あやめちゃんにもどうぞよろしく」


「承りました」


そう言って頭を下げて、鹿鳴は去っていくのであった。


「さて、朝霧さん」


「あ、先生、お待たせしてすみません」


「いいええ」


鹿鳴を見送った後、朝霧の担任である吉永が話始める。

内容は、朝霧が寝ている間に申請が通ったこという報告だ。

この1時間の間に、朝霧の親への確認や主治医との確認も済んだらしい。

後で生徒手帳用の写真を撮り直すのでよろしくとのことであった。


そしてそれらの話が終わり、会話も終了かと思った段階で‥


「さて朝霧さん」


「はい!」


「あなた随分と動き回っている様ですが、謹慎の意味わかってます?」


「……っぁ」


そして。

そこから厳しいお説教が始まるのであった。


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