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熱中症寸前になる。


草井家での朝食を終えた後、朝霧は紫乃に衣服を家まで持って行ってもらった。かなりの量があり、朝霧一人では持って行けなさそうだったからだ。

朝霧のアパートに荷物を置いた後、紫乃は用事があるらしく早々に立ち去った。勿論、近日中の再訪問を約束をして。

朝霧はスウェットを着替え、早速貰った衣服に袖を通す。着回しコーデのプランをいくつかメモしてもらっているので、その通りに着る。ちなみにこのコーデを着たら自撮り写真をする約束になっていた。朝霧が衣服や朝食の返礼を申し出たらソレを要求されたのである。携帯を持っていない朝霧の為にデジカメまで無償提供している本気っぷりだ。


「こうかな?」


本日の朝霧のコーデはガーリーなジャンパースカート。デジカメを高く掲げて上からの構図で自撮りする。

ただ写るのも芸がないので一応ピースする朝霧。服も良く見えないとダメだろうと思い、ピースは顔の真横、遮らないよう邪魔にならない所に置いた。なんとなくノリでウィンクをキメながらパシャリ、本日のノルマの終了である。

余談だが、後日この写真を見た柚乃はあまりの可愛さに椅子から転げ落ちたという。


ーーーー


その後、学校までの道のりを歩いていくことにした朝霧。

学園までの距離はおよそ4キロくらいで朝霧のアパートからの道はわかりやすい。大きい道路に出たら後は真っ直ぐ行くだけだ。

だから行くこと自体は難しいことではないが、朝霧には大分困難といえる。

朝霧は背が低く歩幅も小さい。ただでさえ体力がないのに今はまだ八月で気温も高い。

よって、かなり厳しいだろう。

しかし朝霧は行ける気でいた。それは芳一のせいだ。芳一があまりにもスマートに運んでしまったため、考えの足りない朝霧は自分もいける気がしてしまったのだ。


「おっし、いくぞー!」


水筒に氷水をたっぷり入れて、日傘をさし、濡らしたタオルを首にかけて朝霧は歩き出すのであった。ちなみにこれらの避暑グッツは全て柚乃が持たせたものである。


ーーーー


「はひ、はひ」


「おねーさん大丈夫ですか?」


朝霧のアパートから1キロほどの地点。

木陰のベンチで朝霧はへばっていた。

舌を出して、泣きそうな顔でベンチに寝そべっている。


「なめてた、にほんの夏。ちょうしのって、ごめんなさい」


「よしよし、反省できて偉いですね、おねーさん」


そんな朝霧に膝枕をしてあげながら、頭を撫でて、首元に冷たいスポドリを当ててあげている小学生がいた。

彼女の名は六道あやめ。通りすがりの九大家である。

念のために言っておくが、普通、九大家は通りすがるものではない。いくら九大家の通学環境が整った三御坂学園の近郊といえど、そうそう巡り会うものではない。朝霧の遭遇率が異常なのと、彼女が美少女すぎて見過ごせないからだ。そう、彼女は究極の顔だけの女である。


「あー、冷たいの気持ちいぃ、ありがとうあやめちゃん」


「いいんですよ、おねーさん」


数分前のことだ。

案の定暑さにやられ、立てなくなってきた朝霧は、ふらふらになりながらも何とか木陰のベンチにたどり着いた。そしてそのままベンチに寝転がったのだ。

そして、そこに通りすがった六道あやめ(10歳)が、何事かと二度見した。

道路沿いから少しだけ外れた所にある木陰のベンチに、とんでもない美少女が辛そうにして寝そべっていたのだから、無視できるはずもない。

あやめは近づいて話しかけ、自己紹介をしてから介抱を買って出たのだ。


ちなみに、久能詩子や五業芳一、六道あやめのような九大家血統の上澄みは結構一人でぶらつく。彼女等のような高質の九大家は皆強いうえ束縛を嫌うからだ。当然あやめもこんなお嬢様然とした風貌とかけ離れて強い。美少女と侮れば蹴りで顎を割られる。


「ところでおねーさんのお名前は?」


「あ、遅ればして失礼しました。九醸家が当主、朝月の息子、朝霧と申しますぅ」


自己紹介をした朝霧。そこでハッとして気がつく。


「あっ!? ごめんね、そうだ、僕元男なんだよ、気持ち悪いよね膝枕とか!ごめんっ」


急に起き上がる朝霧。


「…ぇう」


そして急に起き上がったものだから、目眩がしてしまう。


「駄目ですよおねーさん、まだ起き上がっては」


「ぅえ?」


そんな朝霧の肩と頭を掴み、重心をずらして引き戻すあやめ。朝霧はこてんと倒されて、再び膝枕のポジションへと収まる。


「元男というのは、要するに性転化のことですか?」


「う、うん、そう」


「ではもう、この姿がおねーさんの実の姿ということでしょ?」


「うん、まぁ」


「ではいいのでは?少なくとも、私は気になりませんよ」


「あやめちゃん… ほんと?」


「ええ」


再び撫でられ、冷やされる朝霧。そんな朝霧を覗き込みながら、あやめが微笑む。

そんなあやめに安心しきった顔を浮かべ、甘えモードへと移行する朝霧。


罪を犯し、祖父と母に見限られ、勘当され、長男であることすら否定された朝霧のプライドは砕け散ってむしろマイナスである。

プライドのない女朝霧は小学生に甘えることにも躊躇がない。


「あやめちゃん、膝枕ありがとう。好き」


まゆをさげ、瞳をきゅっと細め、くちもとをやわやわとさせる朝霧。


「……どういたしまして。 ふふ、ふ、私も、おねーさんのこと好きみたいですよ」


あやめは淑女然とつくろいながらも、なんだかムネと口元がむにゅむにゅしてしまうのであった。



あやめちゃーーーん!


ーーーー


おかげさまで一万pvは突破しました!

ありがとうございます。励みになります。

恥を忍んで申し上げますが、ブクマと高評価も頂ければ幸いに存じます。


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