朝ごはんをいただく。
朝。
「くぁ」
朝霧は起きると伸びをして体調を確かめる。
足は歩きすぎて痛むし、疲労は全然抜け切っていなくてだるい。
完全に疲れが溜まっていた。
「うーん、でも我慢できるな」
朝霧にはやる事がまだいっぱいあった。
昨日決められなかったバイトを決めねばならないし、加えて学校への手続きを終わらせてしまいたかった。
朝霧は、可及的速やかに少しでも働いてお金を稼ぎたいと考えている。
実際のところ、必要な生活費の総額が不明すぎて不安なのである。
更に勉強も頑張らねばならない。
これ以上実家に迷惑をかけたくない朝霧は、せめて留年せず卒業しなくてはと考えていた。
考えれば考えるほどタスクが山積みである。
「よし、がんばろ」
こうして朝霧は無理をおして行動を開始する。学習能力と効率的思考が乏しい彼女であった。
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朝霧は顔を洗って、髪を整える。髪は櫛でとかすだけで、面白いほどに整った。
身だしなみを整えた判定を下した彼女はそのまま出かけることにした。
因みにそのままとはスウェットのままということだ。
昨日来ていた服は先日の内に芳一に洗わせている。もちろんその際に洗い方も学んだ。
アイロンのかけ方や干し方も教わったが一度には覚えきれなかったので、芳一にメモを残してもらっている。イラスト付きの非常にわかりやすいメモだ。
昨日の服を干しているため、着る服がスウェットしかなかったという訳だ。
ここで朝霧は思い出す。昨日、草井医師の妻柚乃に服を貰う約束をしていたことを。
「約束破っちゃったこと謝らなきゃ」
そうして朝霧は玄関の鍵を閉め忘れて家を飛び出すのだった。(警護兵がちゃんと閉めておきました)
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「すみませーん」
門扉の前で声を上げる朝霧。今まで訪問とは先触れがあってのものである彼女は、インターホンという機器を知らない。
「いないのかな?」
何回か声を張り上げて、ちょっと疲れた朝霧は小首を傾げる。
ちなみに彼女の声量はクソ雑魚である。
「なんでインターホン押さないの?」
そんな朝霧の背後から声がかかる。
抑揚のない、クールな声色の女性の声だ。
「ッ、あー、えっと、インターホンって?」
「これ」
突然の声掛けに驚いて振り返る朝霧。
そこには朝霧より頭一つ高い、スラリとした美女が立っていた。
運動帰りと思われる彼女はスポーティな出で立ちで汗を滲ませている。
そんな彼女にインターホンとはなんぞやという説明を聞き、ふむふむと頷く朝霧。
「押してみていい?」
「いいよん」
瞳を輝かせてボタンを指差す朝霧。許諾を得てすかさず押す。
ピンポーンという音に軽くびつくりしている。
「はい」
「あ、あ、えっと、あの、あ、朝霧!です!」
「まあまあ!朝霧ちゃんね!来てくれたのね!今開けるわね!帰らないでね!」
テンション超高の柚乃の対応が入り、通話が終了する。
「ふぃー、ちょっと緊張するね」
「そう?」
一仕事終えた感の朝霧は、クール美女を見上げてはにかんだ。
次の瞬間、門扉がバーン。
「朝霧ちゃんいらっしゃいっ!!」
「あ、あの、昨日約束破っちゃってごめんなさい」
「あらぁ!いいのよぉ!こうしてちゃんと来てくれたじゃない!」
朝霧はテンション激高の柚乃に翻弄されながらも応答していく。
昨日、疲れすぎて動けなくなり行けなかった事を改めて詫びれば、逆に滅茶苦茶心配された。
「ママ、そろそろ中にはいろ。立ち話もなんだし」
「あら、紫乃かえってたの?」
そこで朝霧の背後にいたクール美女が柚乃に声をかける。それに柚乃は今気づいたと返答した。
「ママ?」
「そう、この人の娘」
紫乃と呼ばれるクール美女を見て問えば、彼女は噂の草井家のご息女とのこと。
つまり……
「お年は?」
「14歳だけど?」
「…おとなっぽいねぇ」
「そう?」
「あの、一昨年の服いただきました。ありがとう」
「どういたしまして?」
つまり、朝霧は紫乃が小学生の時の服を着ていたのだった。
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「かーいー、あーちゃんマジかーいー」
「あ、あっ、ダメです、そんな、あぁ〜」
あの後。
服や下着を沢山もらい受けた。ちなみに下着に関しては未使用のものである。なんでも、その頃の紫乃は成長が著しく、使わぬままサイズアウトしてしまったものがいくつかあり、なんとなく勿体無くて取っておいたものらしい。
そしてその後は「朝ごはんまだなら食べていって」と柚乃に誘われたので、遠慮のしらない朝霧はご相伴にあずかることにした。
そして今。
朝霧はシャワーを終えた紫乃に膝上に乗せられ、抱きしめられて撫で回されていた。
「あー、もう飼おう。この子うちで飼うわ」
「あ〜、だめ、だめにされるぅ、年下女子にだめにされりゅ〜」
なんでも一目見た時からハグして撫でまわしたかったらしく、おもむろに確保されてしまったのだ。
紫乃の撫でテクは凄まじく、朝霧はあっという間に骨抜きにされてしまった。
今も後頭部と背中を撫でられて「くぅん」となかされている。
ちなみに、すでに紫乃には性転化のことは打ち明け済みだ。というか既に聞いていたらしい。
「あー、うん、おはよう九醸さん」
「あ、おはようございます、せんせい」
「おっは、パパ」
そしてそこに、なんとも言えない顔をした草井医師が起床し…
「出来たわよー、食べましょ」
「おなかすきました!」
「あーちゃん、いっぱい食べな」
「そうよ一杯食べてね朝ちゃん」
草井家の朝の団欒が始まるのだった。
「…………はぁ、まあいいか」




