142. パッチ説明ライブvol.1(中間)
「あの毛玉は連れてきてないのか」
「リモのこと? 幻惑蘭のなかで寝てるから置いてきた」
「幻惑蘭……ああ、毒花園の」
「言い方!」
モルトから話しかけられたので答えつつ、減ってきたテーブルの上の料理を足す。
ざっくりと切った各種チーズやドライフルーツにバケットを添えて。ステラからとっておきとして仕入れたレバーパテも出しちゃう。
『うらら様は公式アンバサダーということでー、今後色々、イベントなども行っていただく予定ですー』
『うむ、苦しゅうない! まだわたくしは未プレイなんですが、このライブが終わったあと、別枠で初見配信をします! ……お気づきですね? このホルトゥム・ネクソム、ゲームシステムとして、ゲーム内に限った配信もあるんですが、それも今まではある程度ゲームを進めないと解放されない要素でした。そ、れ、が! なんと! 配信者登録をゲーム開始前に行っておけば、ゲームシステム上の配信機能とは別に、ゲーム外への一般配信が出来るようになりましたー! ちなみにゲーム内配信から一般配信への動画コンバートも出来るそうなので、今までゲーム内で配信されてた方! 気軽に一般配信者デビューできちゃいます』
「おおー、頑張ったなあ」
バケットにレバーパテを塗ってチーズを乗せ一口。うーん、濃厚。ワインが欲しい。シードルでもいい。今作ったところでマールム水になるんだもんな……。
「そんなに難しいもの?」
「うん? うん。リアルより体感時間が早くなってる、イコールデータとしては特殊な圧縮がされてんだよね。どれくらいの長さをコンバートするかにもよるけど、大分処理スペックいるんじゃないかな。人数を登録制で絞るか、課金か……ああ、両方っぽい」
手元のライブ辞典を操って該当項目を確認。コンバート機能はゲーム側に外部配信者登録をして、なおかつコンバートで一定の動画容量を越えたら追加容量の購入が必要。
それ以外にも細かい編集作業が出来るスポットだったり、素材フィルターの追加だったり、配信設定周りの変更と充実がつらつらと並べられていく。
あんまり関係ないかなーと聞き流そうとしたらモルトに耳を引っ張られた。はい、私もゲーム内配信者の端くれとしてちゃんと聞いておきます。
『――さて、こんなところかな? ではでは、休憩に移りたいと思います。お供はわたくし、天土うららコレクション! 一足先にテストさせていただいた、ホルトゥム・ネクソムでのライブパフォーマンスの映像集をどうぞ!』
「ぜんぜん休憩できんが」
「あら、うちわだけじゃなくてサイリウムも必要だったかしら。ううーん、電池は無いのよねぇ。魔力でどうにか?」
「光る花の方が現実的……」
「まあ! ファンタジックで素敵ね! ナイスよネネ! で、持ってる?」
「持ってない」
ライブグッズを揃えようとしている奴は置いといて、一区切りということで身体を伸ばす。
ゲーム内だから凝るってことは無いんだけど、気持ち的にね?
流れているライブパフォーマンスはリアルでの――Vtuberのライブがリアルなのかの議論は置いておくとして――それと遜色なく、実体がより身近に感じられるのだろう予想と相まって、それなりの数のVの者がゲームへと進出してきそう。Vtuber本人だったり、そのファンだったり。
「クラン作れるようになるって話しあったよね。作るでしょ?」
「ネーミング大会しよ」
「えーとまって、確か……あったあった」
エールズとリトに声をかけられて、いそいそと皮紙を取り出す。いやあ、料理を包むのに使っていたもののあまりを突っ込んできたんだけど、何が役に立つか解りませんね。
人数分小さめに切り分けて、それぞれの席前に置く。
実は紙系のアイテムって、筆記具がなくてもウィンドウが出てきて、音声なりディスプレイキーボードなりで入力したら文字が書けるんだよな。もちろん、ちゃんとペンだったり筆記具を使って直接書くことも出来る。ま、これは羊皮紙とかそれに近い皮で作られた紙系のやつが、普通の紙と違って書きにくいことへのフォローもあるだろうけど。
ネーミング大会も皆でクラン系作るときの恒例行事になったなあ。それぞれ考えた名前を紙に書いて、ランダムで引いたものを正式な名前にするっていう。
ネーミングセンスがあるかどうかなど関係ない。というかあっても変な名前をつけるし、無いならストレートなりシンプルなりで良かったりする。
思い出すな。【近所のうるさい犬】とか【平日20時消灯】とか。
さて今回はどうなるか。
「は〜楽しかったワア。あら、これは?」
「いつものネーミング暴投会」
「えっと……?」
「ああ、レラは初めてだよね? 今度ここのメンバーでクランを作るんだけど、その名前を決めようっていう話」
「私もご一緒して良いんですか?」
「もちろん! あ、別のクランに所属する予定があるなら無理にとは言わないよ」
「いえ、ホップさんと一緒がいいです!」
そういやシェフレラはこのゲームから仲良くなったんだった。もう大分馴染んでて、説明が疎かになってしまっていた。
ちょうどよく休憩のお供の映像もループ再生に入っているし、今のうちに皆に書いてもらおう。約一名、まだ画面に釘付けのギャジーってやつが居るけど。やっぱこれでファンを隠してるのは嘘なんだよな。
「一旦、休憩時間中目処で。間に合わなかった人は説明ライブが終わるまでに書いてくれたら良いかな。見終わったらクラン名くじ引きして解散しようか」
エールズが木箱を隅に置きながら整理してくれる。あ、その木箱に書いた人は裏向きでいれるんですね? なるほどだから木箱が横長。皮紙は皮ベースだから、折ってもすぐに開いちゃうもんな。
『――皆様ー! ちゃんと休憩出来たでしょうか! パッチ説明ライブ、後半戦突入です!』
『いやできんだろこれ、休憩させる気無いだろ』
『運営Bはパフォーマンスライブテストのときに居なかったもんねー』
丁度よくライブも再開した。冒頭の掛け合いから、前半で伝えきれていなかった部分の説明、そして話題がリアル側との各種コラボに及ぶ。
『錚々たる顔ぶれですねえ。見てくださいこのリスト。とても文字が小さい!!』
『いやあははは』
『気になる方はどうぞお手元で御覧頂いて。いくつかピックアップしてご紹介しますね。まずは日炊製品さま! レトルトでお世話になってる人も多いんではないでしょうか。食品系の充実が期待されますね! 次に肉の千夜一夜さま! 食肉系の大手さんじゃないですかー! 焼き肉食べたい! あの、お魚系が見当たらないんですけど』
『まだ海が復活していないので、渡り人の皆様は頑張っていただいてー』
『いくつかご快諾は頂いてます』
『おっとぉ、これは惜しい。というか言っちゃって大丈夫なんです? その口ぶりだと海も復活するぞって聞こえるんですけど』
『箱庭に海があるんで、存在は解ってますしね〜』
『まあ、どういった方法かは模索してください。淡水魚にする手もあるんですが、やっぱり刺身は海魚だろう!!っていう熱いスタッフのプレゼンが。あと生物に詳しいスタッフから淡水魚にするなら寄生虫関連のデバフをみたいな話もあり』
『う、うわあ! みなさん頑張って海を復活させましょうね!!』
現実をしっかり反映するタイプのファンタジーだ。面構えが違う。
……それはさておき、食材系、やっといっぱい使って贅沢に料理をできる日が近い、のか?
いうて肉屋はそれなりに充実してるんだよな。レトルト系だとこう、素材は期待できないかもしれない。
名前関連、一応検索して本物が入らないように気をつけてるんですけど実際あったらすまん
Q. ところでVtuber見るんですか?
A. 割とよく見ます




