29話 ギルドのストーカー【その2】
突如現れた全身鎧の爽やかイケメン。
受付嬢のシアンへのストーカー行為をカミングアウトをされた。
まさか。こんなイケメンがシアンのストーカーだったとは……人は見かけで判断するなという事だ。
まあ、後は当事者同士で話あってくれればいい。
「じゃ、そういことで。後は当事者同士で……!?」
去ろうとした俺の腕を、シアンは逃がさないと言わんばりにがっしりと掴んだ。そして。
「そうです! このカケルさんが、わたしの恋人です!」
はああ!?
俺がシアンのこ、恋人だとぉ!?
イケメンに向かって、トンデモナイ事を言いやがった!
その言葉に、ギルド内がざわついた。
「へえ〜……カケルくん、いつの間にシアンくんと……」
なんでこいつは、ニヤニヤしてるんだ!?
「……師匠……それ本当……?」
シロはシロで視線が冷たい……なんか殺気が出てないか?
鎧のイケメンは今まで以上に顔を真っ赤にさせている。
「き……貴様ぁ!! やはりそうだったか!!」
「そうです! だからいい加減に諦めてください!」
俺を挟んでシアンとイケメンは、あーだこーだ勝手に言ってるが……
「こうなったらシアン嬢をかけて、君に決闘を申し込む!」
はあ!? な、なんでそういう事になるんだ!? そもそも俺はシアンとは何も関係ないんだぞ!
「分かりました! そのかわりカケルさんが勝ったら、もうわたしの事を諦めてください」
勝手に話を進めるなよお……
いつも冷静なシアンが、こんなに熱くなるなんて……そんなに迷惑をかけていたのか、こいつは。
「わかった! もし……万が一……いや、仮に負けた時は、シアン嬢のことは諦めよう。
だが、僕が勝ったときには……シアン嬢を頂くよ! じゃあ僕は外で待ってるよ、君! 逃げるんじゃないからな!」
そう言い残し、鎧のイケメンはギルドを後にした。
続くように、他の冒険者たちも外へ続いていく。
嬉しそうに賭けの話で盛り上がりながらだ。
ギルド内に残ったのは、俺とエミリア、シロとシアンと呆気にとられている他の受付嬢数人だけ。
「……あの。シアン?」
「ごめんなさい、カケルさん……巻き込んでしまって……」
シアンは申し訳なさそうな表情で、俺の腕を更に強く掴んだ。
うっ……そんな目で見られたら、逃げることができないじゃないか。
シアンから掴んだ腕を通じて、必死さが伝わってくるのがわかった。
「ねえ、シアンくん。さっきの彼とはいったい何があったんだい?」
ナイス質問だ、エミリア。
それは俺も聞きたいところだったんだ。なんか聞けない雰囲気だったからな。
「そうですね……お話しします」
イケメンの名はレンドルと言い、最近この街のギルドにやってきた冒険者。
依頼も確実に成功させる実力者だそうだ。
知り合いのオバさんの依頼を解決してくれた事に、シアンは心から感謝したそうだ。
そこからだ。
レンドルは何も要件(用件)が無くてもシアンの元に通い、ずっと口説くようになっていた。
仕事中でも仕事が終わった後でも、付き纏うようになった。
相手は有能な冒険者だ。むげに断ることもできずについ。
――わたしには、強くて優しい恋人がいるんです!
「って、思わず言っちゃいまして……えへへへ」
まあ……分からないでもない。
そんなにしつこく、毎日毎日つきまとわれたら……断り文句としてそう言うよな。
「でも、どうして師匠なの? 他にも冒険者はいる。そいつらに頼めばいい」
少し不機嫌そうに口を尖らせて、シロがシアンに問う。
「そうですね。たしかに他の方でもいいのかもしれません……でも、カケルさんなら安心して任せられるような気がしてって……
あれ自分でも、何を言ってるんだろ? 変ですよね。わたし」
はい、変です。
冒険者でも無い俺に頼むなんて。
まあ、なんだかんだで、シアンにも世話になってるところがある訳だし……しょうがないか。
「ま、勝てばいいんだな。あの全身鎧のやつに」
「え?……本当にいいんですか?」
そんなすがるような瞳で言われたら、断ることもできない。
まあ、適当にあしらって、シアンの事を諦めてもらえばいいか。
ギルド前。
どこから集まったのかと言うくらいに、かなりの人数の輪が出来上がっていた。
もちろんその中心には、イケメン野郎のレンドルがいる。
陽に当たって輝いく白銀の鎧。手には奴に身長くらいある装飾がされた盾。
ドラム缶を縦半分に切ったようなデカさに盾か。
あれで敵の攻撃を防ぐって言うのか。
「伝え忘れていました。彼の職業は騎士。わたしの勝手が招いた事ですが……気をつけてくださいね。本当に強いですよ、彼は」
心配そうにしているシアンの頭を、俺は安心させるためにポンポンと叩いた。
「任せておけよ、シアン」
「……本当にごめんなさい、カケルさん……」
「そんな心配そうにすんな」
ずっと謝ってばかりだな、シアン。
巻き込んだ事を、後悔してるのか。俺はもう気にしてないんだがな。
とにかくストーカー行為を止めてやないとな。
このまま放って置いたら、あの野郎がなにを仕出かすか分かったもんじゃない。
ギルドの石階段を降り、観衆の中央にいるレンドルの元に立つ。
「ふっ……怖じけずによく来たな、君!」
本当はやりたくなかったが、シアンのためだ。
「あんたにゃ悪いが、さっさと終わらせてやるさ」
レンドルが剣を抜くと、割れんばかりの観衆の声が湧き上がった。




