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28話 ギルドのストーカー【その1】

 弟子入りから30日目。


 テメングラトの塔の第十一階層で、『剣聖』スキルレベルを上げる日々が続いていた。

 シロもレベル上げに付き合ってくれた。


 その合間合間に俺とシロ、エミリアの三人はウォムの街へ食料調達へ、よく出かけるようになっていた。


 今日も買い出しに来たついでに、ギルドへ寄っていた。

 まあ、元同級生たちの情報が入っていないかを確認するためにだ。


 買い出しついでに、ちょこちょこと顔を出している訳だ。

 そうなると、当然。


「カケルさん、シロさんとエミリアさん!」

「よお、シアン。なんか情報入ってる?」


 俺たちは常連みたいなもんになっていた。

 シアンは、初めて捜索依頼を頼んだときの受付嬢だ。


「……いえ。相変わらず……でも、きっと見つかります……いえ! ギルドの威信にかけても見つけてみます!」


 シアンは自信満々にそう言う。


 エミリア曰く。

 この大陸だけで、国が六つあるそうだ。

 更に海の向こうにも大陸がある。


 そんな広大な大陸から、たった数十人を探すのは難しいんだと。


 もちろん諦めた訳じゃあないが……気長に待つしかないんだ、今は。


「うん? シロさん。以前来たときより……筋肉がついて、引き締まってませんか?」

「……そうなの? ウチにはよく分からない」


「シアンくん、よく見てるねえ。シロくんは、最近ずっと特訓してるから、以前よりも成長してるんだよ」


 俺も気づいてなかった。

 シアンの観察眼もすごいが、エミリアも気づいてたっぽい。

 あれ? シロの師匠の俺が気づいてなかったって……立場なくね?


「まあ……毎日いろんな冒険者を見ていますから。これくらい分からないと」


 シアンは、ちょっと照れくさそうに笑う。


「さ……さすが、シアン。俺も気づいていたしね! うん。シロも強くなってるよ。うんうん」


 へえっと呟いたエミリアの疑っている視線が痛い。


「そうだ。もしシロさんがその気なら、ギルドに冒険者登録してみませんか? シロさんなら、すぐに活躍できるはずですよ!」


 さすが受付嬢……有望な人材に勧誘をかけている。

 可愛い顔をして、抜け目がないなぁ。


 シロは俺をじっと見つめると、首を小さく横に振った。


「冒険者にはならない。ウチは師匠と一緒にいたいから……」

「そうですか……それは残念です。でも、その気になったら当ギルドはいつでも歓迎ですよ」


 少し残念そうな表情をするが、直ぐにシアンは満面の笑みを浮かべた。


 そんな調子で、俺たちは話に盛り上がっていた。


「コホンっ! ちょっといいかい?」


 咳払いと、少しイラついた感じの声が背後から聴こえてきた。


 あ、もしかして他の依頼者の邪魔をしてしまったのか。

 これは悪いことをしてしまったな……


 謝ろうと振り返った先にいたのは。

 銀色の鎧を足先まで装備し、背中の大きな盾が印象的な爽やかイケメンがいた。


 その爽やかイケメンが、ムッとした顔でこっちを見ていた。


 格好からして冒険者か。

 依頼のことなのかも知れないな。どっちにしても俺たちは邪魔だな。


「あ〜……申しわけない。すぐに退くから。行くぞ、二人とも。またな、シアン」


 二人を連れて、その場を退散しようとしたその時。


「待ちたまえ! 君はシアン嬢のなんなのだ!?」


 引き止めるように俺の両肩に腕を押し乗せて来た。


 いや。シアンの何なのかと言われても、ただの依頼者と受付嬢と言う関係なだけだ。


「答えろ! 君は……君は、シアン嬢の恋人じゃないのか!?」


 こ……恋人ぉ!?

 俺がシアンの恋人だとお!?

 どうしてそうなるんだ!? この人の変だ!


 イケメンは怒りの表情で、俺を睨みつけてくる。


 シアンに視線を向けると、すご〜く嫌そうなと言うか困った顔をしていた。

 あの笑顔一番みたいなシアンが、見たことない顔をしている。


「さあ! さあ! さあっ!!」


 は、迫力ありすぎだ。

 正直に答えれば、なんとかなるだろう。


「えっと……い、依頼者とギルドの人ってだけで、特には……」

「嘘を言えっ!」

「は? いやいや! 嘘じゃないって!」

「だ……だって……だってなあ……」


 イケメンの顔が真っ赤になり、体を震わせている。

 鎧の継ぎ目がカチカチと音を立てている。


「だって! シアン嬢が他では……いや、僕には見せたことが無い笑顔を……君には見てせいるじゃあないか! それが一番の証拠だあっ!」


 証拠だあ! じゃねえ!

 そんな理由で、どうしてそう思えるんだ!?


 笑顔くらい誰にでもするだろうが!


「待て待て待て! あんたちょっと落ち着こう、な?」

「……僕はなぁ……僕は! シアン嬢が好きんだよぉお!!」


 人の話をまったく聴いていないし、何大声で告白してるんだ!?


 エミリアはボケ〜としてるし、シロはポカンとしてやがる。

 ダメだ、ポンコツズは役に立ちそうも無い。

 なんとか落ち着かせて、この場から立ち去ろう。


「分かった。分かったから落ち着こう、な? な?」


「僕は毎日毎日……シアン嬢が仕事終わった後も、ずっとずっと息を潜めて影から見守っていたんだぞ!?

 それでも恋人の存在すらなかったから、安心してたんだ!」


 ダメだ。落ち着いてくれな……うん? 毎日毎日ってそれ……


「ストーカーじゃねえかあっ!!」




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