30話 ギルドのストーカー【その3】
公開4日目でPV5000いきました。
これもひとえに読んでくださった方々のおかげです。
励みになってます!
感謝感激!
湧き上がる観衆の声。
目の前にいるのは、全身鎧を装備した爽やかイケメンのレンドル。
レンドルは抜いた剣を自分の胸に当て、
「我が名は、レンドル・シャ・ミュールゲイル・バリトワール三世だ!」
「あ〜……俺はカケルだ」
自己紹介されたから反射的に、つい名前を名乗ってしまったが……名前長っ!
「カケルか……ふ、平凡な名前だ」
平凡は余計だ。
親が付けてくれた立派な名前なんだ。
「ではカケル……僕とシアン嬢の愛を邪魔する愚か者よ……いざ尋常に勝負だ!」
レンドルは、重そうな盾を地面に突き立てる。
大きな盾のせいで、レンドルの姿が隠れてしまって見えない。
「はっはっは! どうだい! これでは僕の姿が見えないだろう! さあ行くぞ!」
なるほど……この盾の大きさには意味があったのか。
たしかに姿が見えないなら、奴の攻撃が読めない。
普通ならそう焦るんだろう。
だが、俺には『剣聖』スキルがある。このスキルのおかげで、敵の行動が読めるんだからな。
「行くぞ、カケル! これが僕のシアン嬢への想いだあ!」
レンドルが声を張り上げながら、猛ダッシュで突進してきた。
さて、突進からどう動くか予想する。
今はまだ一直線に向かってくるだけだが……まだ動く気配はない。
うん? まだ一直線で向かってくるだけ……あれ? こいつはこのまま突進してくるだけか!?
「さあ! 僕に吹き飛ばされて粉々になるがいい!」
「……えーっと……よっと」
突進をひらりと避け、丸見えの背中に蹴りを一発喰らわせてやった。
「ごわっ!? な、なんだとぉ!?」
蹴りの威力が突進の勢いに加わって、レンドルは盾に乗っかり地面を滑っている。
まるでソリに乗った感じだな、あれは。
すいーって滑って行ってる。
観衆の前で止まった盾ソリ。
レンドルは何事もなかったように身を起こして、再び盾を構えた。
「ふっ……もう一度行くぞ!」
さっきと同じ一直線で、俺に体当たりを仕掛けてくるが――
「よっと!」
「ぬあ!? 頭だと!?」
盾を飛んで避けると、俺はレンドルの頭を踏み台にして背後に回った。
「うおおお!? なんだアイツは!?」
「動きがレンドルのヤツより速えんじゃねえか!?」
「オレ知ってるぞ! たしかアイツ以前、市場でガイと戦ったヤツだ!」
湧き上がる歓声とどよめき。
「貴様! 僕をコケにしてるんじゃない!」
くるりと向きを変えたレンドルは、歯をむき出しにして俺を睨んでいる。
「あのさ……その盾じゃ相手の動き、見えないだろ? 盾ののぞき窓って言うのか? それも小さいし……」
小さいのぞき窓のせいで、敵の動きは見えないんじゃ?
たしか騎士だったな。下位戦士より上位の職業っぽいし……どうやって生き残ってきたんだ、この人。
「なあ、もう諦めないか? いくらやっても俺には、その戦法は通じないぞ?」
「ふっはっはっは! たしかにこの盾攻撃だけじゃ、君を倒せそうにないな……だがこれだけじゃないんだよ、僕は!」
ダメだ。まったく諦めた様子はない。むしろ闘志を燃やしてるように見える。
レンドルは盾を投げ捨て剣を構えた。
剣の方が自信があるというのかね。なら、その自信を叩き折って、シアンの事を諦めさせるしかない。
「ほう……レベル20の騎士である僕に、剣で挑もうと言うのかい……よほど自信があるんだね。だけど、これは君には出来ないだろう!」
――炎よ! 我が剣にその力を宿せ!
レンドルが唱えた次の瞬間だった。
ゴオっと音と共に、レンドルの剣を炎が包んだ。
歓声とどよめきが周りから上がる。
「魔法を剣に……あいつ、魔法剣士か!?」
「いや、騎士って言ってたから、それはねえよ!」
「騎士で魔法って……おお! なんかすげえぞ、アイツ!」
なんか観衆のテンションが上がってるな。
たしかに剣に魔法ってすごいな……正直、ちょっとカッコいい。
「実力の差が分かったかい? さあ、これで終わりだよ!」
仕掛けて来るか。
レンドルが姿勢を低くして走って来た。
ガキぃ!
金属が爆ぜる音をたて、レンドルと俺の剣が交わる。
って……それだけか!?
派手に炎を付けて斬りかかるだけ!?
もっとこう、灼熱の炎で相手の剣を焼き切るとか。
熱さで相手を苦しめるとか……そんなのじゃないのか、これは?
「ばっかやろぉ!!」
「ごっはっ!?」
蹴られたレンドルの体が宙を舞う。
地面に背中を叩きつけられたレンドルは身悶えして、小さな声で唸っている。
こうして呆気ない結果で、勝敗は喫したのだった。
観衆もあっという間に解散し、その場にはポツポツと数人がいるけだ。
レンドルは、まだ倒れたまま。
目は空いてるから気絶しているわけじゃない。
「……ふっ……僕の負けだ……潔くシアン嬢の事は諦めよう」
顔を上に向けたまま、レンドルはそう呟いた。
「……ほら手を出せよ」
倒れたレンドルの手を引っ張り上げる。
「……君は強いな……」
レンドルは俺に微笑んで見せた。
こいつ意外と潔いな。もっと恨まれるかと思ったけど、そうじゃないらしい。
なんか清々しい気分になる。
「……レンドルさん」
「シアン嬢……君には迷惑をかけたね……本当にすまなかった」
深く頭を下げるレンドルに、シアンは慌てて手を振り、
「い、いいんです。もう終わった事ですから! それよりも、また依頼の件……お願いしますね」
「ああ。任せてくれたまえ」
シアンの言葉に、レンドルは嬉しそうに答えた。
「よかったよかった。これで一件落着だな。さ、帰ろうぜ……うん?」
これで全てが終わったはずだったのだが……どうやらそうじゃなかった。
まだ残っている観衆の中に、ひときわ目立った女性が、仁王立ちでこっちを見ていた。
露出が多い衣装。その衣装が似合うスタイルに、褐色の肌。
長く艶やかな黒髪が風に揺れ、なびいている。
「あれは……? なあ、エミリア……エミリア?」
「ま……まさか! そんな訳ないよ……」
エミリアの反応がおかしい。
あの女の人を見ているエミリアが、激しく動揺している。
女の人は、大きく腕を振りながら早足で近づいて来る。
そして――
「久しぶりだな! 我が闇の盟友エミリア!」
「ホントだよ! 我が同胞、疾風のグローリエル!!」
二人は抱き合い、再会を喜んでいた。
と言うか……今へんな呼び名をしてなかったか?




