第7-2話 またまた借金生活(後編)
今回は新たに追加された【ドライブレコーダー】機能の説明が入ります。
物語だけを楽しみたい方は、設定説明のところは読み飛ばしていただいても大丈夫です。
「いや……また神様の説明書が長そうなんですよね」
「またか」
「はい。覚悟して読んでいきます――」
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「【ドライブレコーダー(Ver.1)】
ただ周囲を撮影するだけでなく、神話級のランクルのカーナビやオーディオとも完全にリンクした神話級車両専用統合記録システム。時の大精霊『クロノア』を核として構築されている。『神が創った最強のチートアイテム』
【全周囲カメラ(レンズ・センサー)】『千里眼の神梟の魔眼レンズ』×4Kソ〇ー製高感度イメージセンサー。
三百六十度すべてを見渡す神話の梟の眼球を、最新のデジタルイメージセンサーに神の魔法で統合したカメラ。
物理的な映像だけでなく、目に見えない『不可視の幽霊』『ステルス魔法で姿を消した暗殺者』『次元の隙間に隠れた魔物』までを完全に見透かし、克明に記録。
超高感度仕様のため、光源がゼロの『完全な暗闇(暗黒空間)』でも昼間のように鮮明に捉える。
【記録メディア(ストレージ)】
『時空の記憶結晶』。時を司る神の涙を、ドラレコの内部メモリに加工したシステム。
容量は無限。『データの自動上書き』という概念自体が消失。
拓海と良太が異世界でランクルと再会した最初の一秒から未来永劫、すべての旅の記憶を一画素の劣化もなく永久保存する。
【衝撃・イベント録画(Gセンサー連動)】
『因果記録』
車体への衝撃(敵の攻撃・衝突・急ブレーキなど)を検知すると、その前後数十秒間の映像を自動的にイベント録画として保護する。
保護された記録は『大精霊クロノア』の権能により、その瞬間の因果ごと固定される。
神の権能による『歴史改変』や『時間の巻き戻し(タイムリープ)』が行われても記録内容は改変されず、『世界線が変化する前の事実』を永久保存する。
Ver.1では保存された過去の映像のみ再生可能。
【遡時観測】Ver.1で遡れるのは三日前まで。
過去視録画。
『大精霊クロノア』が宿ったことで、周囲の時間を遡り、『過去の映像』として記録・再生できる。
たとえ今、周囲が何もない荒野であっても、ドラレコの画面には『三時間前にここを通った敵の軍勢』や、上位Ver.では『数百年前、この場所に存在した古代都市の姿』まで克明に映し出される。
過去の状況確認、追跡調査、遺跡・史跡の解析に使用可能。
【時空静止】Ver.1では使用不可。
駐車監視モード。
ランクルがエンジンを切り、駐車(あるいは停車)している間、車体の周囲数メートルの『時間の流れ』を限界まで遅延、または完全停止させる。
持ち主が車を離れている間に、暗殺者や盗賊が忍び寄ろうとしても、ランクルの防衛領域に入った瞬間に彼らの時間は静止し、身動きが取れなくなる。
【未来予測】Ver.1では使用不可。
特殊機能。
『クロノア』の未来視により、数秒先から数分先の『未来の映像』を予測録画し、画面に先回りして表示する。
『三秒後に死角から飛んでくる即死魔法』や『十秒後の地盤沈下(落とし穴)』が、画面にはすでに『起きたイベント』として先行して映し出される。
予測映像をナビ画面へ表示することで、運転支援および危険回避を補助する。
【幻影再生】Ver.1で遡れるのは三日前まで。
過去の出来事を現実世界に3D投影。
ドライブレコーダーが記録・観測した『過去の映像』を、画面内だけでなく、ランクルのフロントガラス上や車外の空間に、本物そっくりのホログラムとして再現・再生する。
迷宮や迷いの森で『過去にここを通った先人の足跡』を映像として路面に直接投影し、それをなぞるように安全に追跡できる。
また、上位Ver.では、過去にここで起きた悲劇や戦闘の様子をリアルタイムで上映し、歴史の真実をその場で目撃することが可能。
【遅延録画】Ver.1では使用不可。
超高速の事象をコマ送りで視認。
『クロノア』の力で、ランクル周辺の『時間の流れる速さ』を部分的にミリ秒単位で引き延ばして記録する。
物理的な限界を超えたスピードで動く『神速の暗殺者』や『光速の雷撃魔法』が迫ってきた際、マスター・ナビゲーションの画面には、それが超スローモーション映像として映し出される。
運転手の知覚時間も同時に引き延ばされるため、超高速の攻撃をスローモーションのように認識し、回避判断が可能になる。
【瞬間保存】Ver.1では使用不可。
世界の時間を一時停止して記録・思考。
運転手が危機に陥った瞬間、または特定のスイッチを押した瞬間に、ドライブレコーダーが『世界全体の時間』を一瞬だけ完全に静止させ、『スナップショット』する。
時間が止まっている間、運転手はナビ画面に映る周囲三百六十度の静止映像を自由に回転・拡大しながら観察し、『どのルートに逃げれば助かるか』『敵の弱点はどこか』を冷静に分析できる。
停止中の映像を任意に観察・解析可能。戦術判断を支援する。
【因果消去】Ver.1では使用不可。
記録を消すことで現実の事象を『なかったこと』にする。
ドライブレコーダーに記録された『ランクルに不利益な事象が発生した数秒間の映像データ』を、『クロノア』の権能で物理的に削除する。
不意打ちで車体を弾き飛ばされたり、タイヤが泥にハマってしまった際、その瞬間をドラレコ上で消去すると、因果律が書き換わり、
『現実世界でも最初からその事象が起きていなかったこと』になり、状態が巻き戻る。ドラレコのメモリを守るシステムが、そのまま車両の究極の因果修正機能となる」
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「ということです」
「だいぶ制限があるんだな」
「そうですね。『最強のチートアイテム』とうたっているのは、あくまで『すべてのバージョンが解放されたら』という前提付きなんでしょう。今の僕たちに許可されているのは、最初のいくつかの機能だけです」
「それでも、三日前まで遡れるんだろ?」
「ええ。それだけでも十分すごいですよ。その場所にいれば、三日前まで遡って観測できますし、映像も容量無制限で永久保存されます。しかも説明には、『拓海と良太がランクルと出会った最初の一秒から、未来永劫、すべての旅の記憶を一画素の劣化もなく永久保存する』とあります」
「ってことは、ドラレコが撮ってなかった過去も見られるのか? たとえば今日の戦闘も、あとから見返せる?」
「そういうことですね。『大精霊クロノア』がその場所に刻まれた時間を読み取り、映像として再現できるんです。僕たちはまだこの世界へ来て二日目ですから、ここへ来てからの時間は、全部観測できる範囲に入っていますね」
「じゃあ、試してみるか」
「ええ。今日の戦闘を見返してみましょう。この能力の使い方もよくわかるはずです」
俺たちは一号車へ移り、良太がカーナビのディスプレイを操作する。
しばらくして、ランクルのフロントガラスいっぱいに、半透明の映像がゆっくりと浮かび上がった。
「……これは面白い! 動画編集ソフトみたいに自由に巻き戻せますね。もっとくっきり表示することもできますけど、今の景色と見分けがつかなくなりそうなので、半透明のままにしておきます」
「きゅー? きゅー!」
「バハちゃん、びっくりちたね~。大丈夫だよ~」
その猫可愛がりはなんなんだ。お前より強いんだろ、バハは。
「くっきり表示にして、バハが車内でブレスでも撃ったら洒落にならん。半透明のままで頼む」
ヴォオオオオ!!
「始まりました! うわぁ……臨場感がすごいですね。三百六十度、どの方向からでも見られます」
「……なんでランクル全体が映っているんだ。どこから撮ってる?」
「もうカメラの位置は関係ないみたいですね。車内も映せますよ。せっかくなので、運転席視点、車全体、戦場全体、それと車内の四分割表示にします」
「赤いボディは、草原だと映えるな」
「ほら~、バハちゃんが起きたね~」
「きゅ~♪」
「……そろそろ魔曲が来るぞ。精霊たちにまで暴れられたら困る。消音にしてくれ」
………… 残り時間 3分15秒
………… 残り時間 2分30秒
………… 残り時間 0分00秒
「音声なしでも、ちゃんとえぐい……」
「あのときのバハちゃん、車内で喜んでいたんですね」
……まるでVFX全開の怪獣映画を観ているみたいだ。
「でも、おかげでAランクの魔核が一つだけ残った理由もわかりました。雷が落ちる前に光の槍で倒されていたんですね」
「なるほど。だから、あいつだけ範囲攻撃に巻き込まれなかったのか」
「そういうことだと思います。……それにしても、光の槍の延長線上に都合よく大岩があるのも、物語の『お決まり』ですね」
「はぁ……映像を見返しただけなのに、どっと疲れたな……。今日はもうこの辺で切り上げて、ゆっくり過ごそう……」
「……二号車の試運転は明日以降ですね」
気分転換に外へ出て、少しのんびりするか……。
二号車にはルーフラック一体型のオーニングまで付いていたが、広げてしまうと、とっさに車を動かせない。
また今度、ゆっくり試そう。
「良太、キャンプ用の椅子があったら買ってくれるか」
◇ ◇ ◇
「暗くなってきたな。飯でも作るか。車を二台、L字に停めて風よけにしよう」
先ほど買ったフライパンに油を引き、ソーセージを焼き始めた。
二号車のルーフラックにはLED作業灯まで備わっているため、夜でも手元は明るい。
草原を渡る風も、少しずつ冷たくなってきた。
ボディに風が当たるだけで蓄電できるなんて、とんでもない技術だな。
元の世界でも、太陽光を集める塗料を車やビルに塗る研究は聞いたことがあるが、それとは次元が違う。
「ついでに、【ネットショッピング】でたまった段ボールも燃やしておくか」
「【買取査定】で処分もできますけど……焚き火って、なんだかやりたくなりますよね。このあたりは薪も落ちていませんし、【ネットショッピング】で薪を買いますか?」
「少し頼むか。薪用のキャリーバッグもあったら一緒に頼んでくれ。余った分はリアカーへ積んでおこう」
「わかりました。焚き火後の痕跡を残して追跡されないように、焚き火台も買ったほうがいいかもですね」
そうか、焚き火台もいるな。
「夜は灯りが目立ちますから、僕は一応レーダーを見ておきますね。バハちゃんがいるので大丈夫だとは思いますけど」
「焼けたら持っていく。音楽でも聴いて待っていてくれ。ただ、自動シャッフルだけはやめておけよ。また変なのが流れるかもしれん」
「それはありそうですね。……あ、バハちゃんが外に出たがっています」
「別にいいんじゃないか」
あれだけ慎重な良太が、夜の焚き火に賛成するとはな。
ずっと気を張り詰めていたし、少しくらい気分転換したくなったのかもしれない。
……まあ、バハがそばにいるからこそ、こんなことをする余裕も出てきたんだろうが。
窓を開けると、バハは軽やかに飛び出し、二号車のルーフラックへ移った。
どこかへ飛び去ることもなく、小さな体でちょこんと腰を下ろす。
揺らめく焚き火を静かに見つめ、やがて手すりへ顎を乗せた。
ぱちり、ぱちり、と薪が爆ぜる音だけが草原の夜に響く。
ほどなくして、バハの小さな寝息が聞こえ始めた。
あとがき
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ドラレコの説明部分で、『数百年前、この場所に存在した古代都市の姿』などと書いてあるのは、制限がすべて外れたらここまでできますよ。という説明なので、現在の拓海たちには使えませんし、未来も見えません。




