第7-1話 またまた借金生活(前編)
「毎月、277万ポイント……ですか」
「……正直、不可能じゃないとは思う。だが、ようやくローンが終わったと思ったら、またローン生活か……」
「きゅ~……」
「でも、戦術の幅は間違いなく広がります。三千万ポイント貯まるまで我慢するより、毎月払ってでも早く手に入れたほうが得だと思います」
「そうだな。それに、いい加減脚を伸ばして寝たい。この先もずっと狭い車内で二人して寝泊まりするってのは、さすがに息が詰まるだろ?」
ずっと足が伸ばせなかったら、そのうちストレスが限界になりそうだ。
「……たしかにそうですね」
「よし、決めた! 買うぞ! 憧れの白いランクルを!」
俺は勢いよく立ち上がる。
「良太、【ネットショッピング】を開いてくれ」
「開いてますよ! あとは押すだけポチるだけ」
「良太、いけー! ……あ、でも少し離れた場所で押してくれ」
「きゅー!」
「了解です! それじゃ――ぽちっとな」
白いトゥループキャリアは、地面から三十センチほど浮いたところに音もなく出現した。
次の瞬間、重力に従って落下し――
ドンッ!!
「きたー!! 憧れの75トゥルーピーだ!」
「わぁ……大きいですね。ショートボディと並ぶと迫力があります」
「きゅー! きゅー!」
「顔つきは同じなんだが、一号車と比べると全長がまるで違うな。ホイールベースもかなり長い。前後輪の間隔が広いぶん、高速走行での直進安定性はこっちが上だ。その代わり、小回りは少し苦手になる」
「いろいろ見てみましょう!」
俺たちは新しいランクルの周りをゆっくり歩く。
「この斜め後ろから見た姿、たまらないな……。リアの観音開きもかっこいいし、この白いボディも最高だ。買ったばかりだからか、輝きが違う」
「あちらと比べて、タイヤが細いですね」
「神様、わかってるなぁ……。トゥループキャリアは、この鉄チンホイールに細身の大径タイヤ。やっぱり、この組み合わせなんだよ」
「もちろん異世界で戦うだけなら、タイヤを外へ張り出させてトレッド――左右のタイヤの間隔だな。それを広げたほうが踏ん張りは利くし、横転もしにくい。でも――いやぁ、かっこいい!」
「きゅー!」
バハは嬉しそうに飛び上がると、そのまま屋根へ着地した。
「そこが気に入ったのか? ショートには付いてなかったルーフキャリアがあるからな。AR〇のバスケットタイプみたいな形で、なかなかいい感じだ」
「屋根にも荷物を積めるんですね。ちょっと試してみましょう。荷物を載せたまま【格納】できるか確認したいです」
良太は軽く跳び上がると、ルーフキャリアにアダマンタイトの強化シャフトを載せる。
そのあと、バハを抱き上げて地面へ降りる。
「よし、やってみるぞ。【格納】!」
ドサッ
強化シャフトだけが地面へ落ちた。
「乗せただけじゃダメみたいですね」
「固定されていない荷物は対象外ってことか」
「次は固定してみましょう。紐を買いますね」
「それなら、荷締め用のベルトで検索してくれ」
良太が【ネットショッピング】を操作する。
「はい。……ありました」
良太は再びルーフキャリアへ飛び乗り、強化シャフトを荷締めベルトでしっかり固定する。
「もう一回いくぞ。【格納】!」
今度は車体と一緒に、固定した強化シャフトもすっと姿を消した。
「おお……成功しましたね!」
「これなら室内に入れたくない生の素材や、邪魔になる長い物もルーフキャリアに固定したまま運べるな」
良太がリアの観音扉を開ける。
「うわっ! 荷室、すごく広いですね」
「これなら、かなりの荷物が積めそうだ。それに……こんな内装のトゥルーピーは初めて見たぞ」
俺は天井へ目を向ける。
「ピラーのむき出し部分がなくて、天井から側面まで全部バックスキン調で仕上げられている。この高級感はすごいな」
「座席が向かい合わせなんですね。向こうの車は黒っぽいグレーでしたけど、こっちは焦げ茶色だ。ベージュの内装ともよく合っていて、落ち着いた雰囲気ですね」
「この対面シートは人員輸送用なんだ。片側四人ずつ座れて、後ろだけで八人乗れる。仕様は違うが、二列目シート付きで十三人乗りのモデルもあったな」
向かい合わせのベンチシートを軽く叩きながら、俺は荷室を見回す。
「……とりあえず、このシートの間に板を渡せば簡易ベッドにはできそうだ。今晩からは交代で寝よう。片方は見張りだ」
「じゃあ、板と寝袋を買いますか?」
「そうだな……コンパネを二枚重ねれば強度は十分だろう。
本当は、この対面シートの間を埋める専用のベッドキットが理想なんだが、それを作るには脚になる土台も考えないとな」
「なるほど。この横向きシートをそのままベッドとして使うんですね。でも、せっかくなら真ん中も座席と同じ素材で作りたいです」
良太が横向きのシートを手で確かめる。
「触った感じ、このシートも向こうの車と同じベヒーモスの仔牛革とミズチ・スライムを合わせた素材ですよね」
「たしかに。あれなら寝心地もいいからな」
「ですよね。神様に、この素材だけ売ってもらえないか訊いてみましょうよ。板を渡しただけじゃ、ちょっと見た目ももったいないですし」
そう言うと良太は車外へ回り込み、助手席のグローブボックスを開けた。
「先輩……! また紙が入っていますよ」
「おお、なんて書いてある?」
「えっと……」
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やあ! 先輩君、後輩ちゃん。
まずは、お買い上げありがとう。
今回も頑張って創ったから、これで異世界ライフを思いっきり楽しんでね!
二日目にして増車とは、なかなか張り切っているじゃないか。その調子、その調子!
このまま神威シリーズをコンプリートしちゃうかい?
……それとは別に『森象シリーズ』なんてものもあるよ?
さて、今回の仕様だけど、基本的な部分は前の車とほとんど同じ。
ただ、一つだけ特にこだわったところがある。
それは――ボディカラーだ!
ボディの材質は『アルヴ・ミスリル』という、今回新たに創り出した合成金属だよ。
神の光で極限まで精錬したミスリルに、光の妖精『アルフ』を宿しておいたんだ。
初の『妖精入り』仕様だよ。捕まえるのが大変だったんだから。
この素材は太陽光や風圧、物理攻撃の衝撃も吸収し、そのエネルギーをバッテリーへ送る優れもの。
もちろん完全不壊。
物理や魔法攻撃、ブレス、酸、呪い、投げキッスまで全部無効。
それから、二台体制になったから通信手段も必要でしょ?
カーナビと連動した【神の無線機】を追加しておいたよ。
ハンドルの無線マークを押しながら話すだけで通話できる。ボタンを離せば自動でミュートになるから、普通の無線機と同じ感覚で使えるよ。
ホイールとタイヤは形こそ違うけれど、性能は一号車とまったく同じ。
内装は雰囲気を変えてみた。
白いボディにはベージュと焦げ茶色が似合うでしょ?
ダッシュボードは反射しないよう神の魔法をかけてあるから安心して運転してね。
装備はほとんど同じでも、ロングボディは操作感が結構違うはず。
その走りも楽しんでみてよ。
あ、そうそう。
この前のレベルアップで解放された【ドライブレコーダー(Ver.1)】も搭載してあるから、忘れずに確認してね。
時を司る大精霊『クロノア』を宿しておいたから!
あいつも捕まえるのが本当に大変だったよ。
人間が使えるのはVer.1だけだから、未来を見たり時間を止めたりはできないけど、なかなか面白い性能になっているからお楽しみに。
じゃあ、またね!
追伸
後部座席の間にはまる『ベッドキット』も作っておいたから、【ネットショッピング】で買ってね。
コンパネを敷いて寝るなんて美しくないよ!
あのベヒーモス製シートは、『使用者にとって常に最も快適な温度・形状・反発力』になるよう作ってあるんだ。
だからベッドキットを使えば、毛布と枕だけでもぐっすり眠れるはずだよ。
――――――――――――――――――――――――
「以上です……」
良太が首をかしげている。
「ん……どうした?」
「今、『じゃあ、またね!』で終わったと思ったら、紙の下に勝手に『追伸』って文字が浮かび始めたんですけど……」
「なにそれ、こわい……」
「でも、ベッドを作ってくれたのは嬉しいですね。さっそく外に出て買ってきます」
そう言って良太は、弾むような足取りで車を降りていった。
……ほんと、神様って何でもありなんだな。
俺は苦笑しながら、その背中を見送った。
◇ ◇ ◇
「ひとまず、ベッドキットは付けたままにして、毛布二枚と枕二個は横に置いておきますね。それとは別に、赤いランクル――一号車の後部座席と、こちらにも一枚ずつ、バハちゃんが寝られるように畳んだ毛布を置いておきます」
名前を呼ばれたバハが、良太を見上げる。
「使ってくれるかはわかりませんけど」
「了解。じゃあ次は、ドラレコを調べてみてくれるか?」
「はい。『鑑定』してみますね」
良太がドライブレコーダーへ手をかざす。
「…………」
「どうした?」
「いや……また神様の説明書が長そうなんですよね」
「またか」
「はい。覚悟して読んでいきます――」
あとがき
加筆して長くなってしまったので第7-1話、第7-2話と分割しました。
作中で拓海が言っていた、
「トゥループキャリアは、この鉄チンホイールに細身の大径タイヤ。やっぱり、この組み合わせなんだよ」
というセリフですが、これはあくまで拓海個人の好みです。
もちろん、リフトアップして太いタイヤを履かせたトゥルーピーも、ワイルドでとてもかっこいいです。
そして、バハちゃんの現在の大きさは中型犬くらいです。
見た目以上にずっしり重いのですが、レベルアップした拓海と良太なら軽々と抱っこできます。
これからも少しずつ物語を広げていきますので、楽しんでいただけたら嬉しいです。




