運命の三叉路
運命の三叉路
人から恵みを受けなければ、生きていけない孤児のボクが、上流階級の出だなんて言われても、納得いかない。
ボクは憤りから口を開く。
「ボクが神子だなんて言い張る。その動機はなに?」
「その髪色と瞳の色、そしてお母上譲りのその瓜二つのお顔立ちです」
「え?」
髪色や瞳の色、顔立ちが瓜二つ?
その伝説の黄金色の大聖女オフィーリアって人とボクが?
そういえばボクの髪の色って陽に透かすと黄金色に見えるんだ。
黄金色の大聖女って呼称が、実は髪色からきているとしたら?
「神子さま。孤児院に預けられた際に着ていたという産着をよければ見せて頂けないでしょうか?」
「どうして?」
「わたしはオフィーリアさまと面識があり、オフィーリアさまが得意とされていた刺繍の癖も存じております。見せて頂けたら、オフィーリアさまの刺繍か、判別できるかと思いまして。そこがはっきりするだけでも、神子さまの疑念を払拭できると信じております」
「仮にディーがそれを見せたとして、その産着に刺繍された綴りが間違いなく大聖女のものだと、言ったとした場合、その言葉が正しいとどうやって証明するんだ?」
「父さん」
大人は大人としての知識を持っている。
素直に産着を出そうとしたボクの手を止めて、父さんがそう言った。
ここでボクは気付く。
見せないことで、言質を与えない。
そういう方法もあるのだと。
ボクが本当に神子だとしても、神子として生きたくない場合、言質は与えないほうがいい。
父さんはそこまで考えて制止してくれたんだとわかってボクは嬉しかった。
「神殿にはディランもセリアも渡さぬ。そもそも大聖女が身籠った身で、逃げ出すしかなかった理由を教えておらぬ。それで証拠だけ得ようとは、片腹痛いわ」
ティターニアさまも嫌悪感を露わにしている。
セリアは困ったようにボクの手を握る。
話の中心にいるボクは、どうするべきか迷っていた。
産着を見せないという選択肢もある。
でも、このどっちつかずで、宙ぶらりんなまま生きても、ずっと神殿に追いかけられそうな気がした。
それにティターニアさまの発言で気になったこともあった。
「そのオフィーリアって大聖女。どうして身籠ったまま神殿から逃げたの? 生まれてくる子が神子で、自分も大聖女なら、神殿から逃げる必要ないんじゃない?」
「それは」
「言えないの? 後ろ暗いところでもあるんじゃない?」
ボクが冷たく言えば、オルドと名乗った大神官長が、仕方なさそうに口を開いた。
「聖女は普通は結婚できません。神子と柱の聖女が特殊なだけで、大聖女ともなると、尚更。なのに大聖女さまは身籠られた。密通を疑わないことはできませんでした」
「それって大聖女が不義密通をしたと疑ったのか? 生まれてくるのは神子なのに? 大体神子なら父親がいない可能性も高かったんじゃないのか? 仮にも神の子だ。普通に両親がいないという可能性も」
父さんが割って入り、大神官長は悲しそうな顔になる。
「確かにそうなのです。しかし妊娠初期は、そこがわからず、大聖女さまも身に覚えがないと仰るばかり。神子だと神託が降った頃には、大聖女さまは逃げ出された後でした。その後の行方は杳として知れず」
「それって完全に神殿側の落ち度じゃないか。ボクが本当に神子なら、そんな神殿には戻りたくないよ」
思わずボクはそう言っていた。
逢ったこともない大聖女が、すこし可哀想に思えてきた。
神子を身籠ったことで、身に覚えのない罪を着せられ、神殿から逃げるしかなかった。
長年神殿にいたのに、仲間である神官たちに信じて貰えなくて、どんなにつらかっただろう。
似たような立場にセリアも立っていたのかと思うと、余計に怒りが湧いた。
「あんたたちのことは信じられない。帰ってくれよ」
「神子さま!」
ここまで揉めたとき、慌てて門番が駆け込んできた。
「大変です! ギルドマスター!」
「どうした?」
「帝国軍が街を包囲しています! 柱の聖女さまを差し出せと!」
それを聞いたボクは、つい呟いていた。
「ギルドと神殿と帝国軍の三つ巴か」
三叉路なのだろう。
三すくみで戦うか。
それとも神殿を巻き込むか。
ボクがどういう行動に出るかで、すべてが変わってくる。
帝国の出方も変わるだろう。
皇帝はまだ16歳だという。
ボクはもうすぐ14歳。
待てよ。
14歳?
時をやり直す前のあの運命の日。
セリアが殺されたのは、ボクの14歳の誕生日じゃなかった?
運命の日は近い?
場所は違えどここには神殿の主要メンバーが揃っているし、帝国軍が街を包囲している。
状況が酷似していないか?
もしかしてまだ条件を満たしていなかった?
今セリアを守り切れるかどうかが決まる?
どうでしたか?
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