黄金色の大聖女オフィーリア
黄金色の大聖女オフィーリア
セリアの冒険者登録は、柱の聖女としての実績もあって、ステップアップしてBクラスからの開始となった。
同時にボクとのパーティーも登録した。
それを見計らったように、神殿からの使者がやってきたのだった。
「神子さま!」
そんな声が響き、ギルド内にざわめきが広がる。
「ボクのことを言っているのなら、人違いだよ。ボクは神子なんかじゃない。ただの孤児だよ」
ボクがそう言うと父さんが、ボクとセリアを庇うように前に出た。
「ふたりはうちの大事な冒険者で、俺にとっては大事な息子とその婚約者だ。余計な手出しはやめて貰おうか?」
「ギルドマスターですね。わたしは大神官長を務めております。オルドと申します」
ゆっくり姿を見せたのは、すこし年老いた神官で、名乗りを信じるなら神殿を治める立場にあるのだろう。
すべての神官たちが、その場で頭を下げ膝をつく。
「言い訳をしたいわけではありませんが、こちらの説明にもお耳を貸していただけないでしょうか。神子さま」
「ディーが神子とかどういうことだ?」
「柱の聖女だけじゃなかったのか?」
周りで人々が噂話を交わしている。
これはマズイかもしれない。
これ以上ここで騒がれたら、神子だと確定されそうだ。
「父さん。これ以上ここで揉めるのは」
「わかっているが、神官全員がディーに跪いてる。どうしようもないぞ。暴力に訴えてるわけでもないし、騒いでるわけでもない。ただ跪いてるだけだ。喋ってるのはオルド殿だけだし」
「めんどくさいな」
「オルドとやらわらわの大事な盟友、いや、息子とその嫁に無礼な真似は許さぬぞ?」
「あなた様は?」
「妖精族の女王ティターニアじゃ。ディランは大事な盟友兼息子、セリアはその大事な嫁だ。無礼な真似は許さぬ」
「妖精族の女王ティターニアさまが盟友とは、さすが神子さまだ」
神官たちのあいだをざわめきが走る。
そのくらいティターニアの存在意義は大きかった。
中央ギルドのギルマス程度では敵わない。
しかし人間の父としての立場から助けられるはずだ。
ギルマスとしてケントはディーやセリアを体で庇っていた。
勿論一番頑丈なフェリアは、彼を庇うようにティターニアに並んでいた。
威嚇のため瞳はドラゴンのルビーの瞳になっている。
そのくらいフェリアにとっても、3人は大事な存在だと言うことである。
「星の竜王さま。ティターニアさま。我々は説明したいだけなんです。決して害意はございません。すこしだけお時間を頂けないでしょうか?」
「神殿にパパもママも渡さない!」
「言いたいことがあるなら、言うてみよ。わらわが母として、ギルマスが父として聞く故に」
「有り難きお言葉ありがとうございます」
大神官長が頭を下げて礼をいう。
「神子さまはお母上さまに当たられる伝説の黄金色の大聖女オフィーリアさまのことをご存知でしょうか?」
「神子じゃないって言ってるのに」
一度愚痴ってからボクは仕方なく答えた。
「そんな人知らないし、ボクは両親の顔も名前も知らない。孤児院に捨てられていた孤児だからね」
「オフィーリアさま。おいたわしや。孤児院に神子を預けるしかない身の上におなりとは」
「そういう孤児院を下に見た言い方やめてくれる?」
「申し訳ございません。神子さま」
「我々は決して侮辱するつもりでは」
「ただ神殿にいらしたなら、何不自由なくお暮らしになり、神子さまも健やかに育っておられたはず」
「それを思うとオフィーリアさまの行く末がお気の毒で」
「頼るものもなく、おひとりでどんな最期を迎えられたのかと思うと、つい」
ボクは反論しようかと思って口を開きかけたが、ボクの母かどうかは別にして、神殿で大切にされていた大聖女が、どこともしれぬところで、たったひとりで人知れず亡くなったなら、神官たちが労しく思うのも無理はないと口を閉じた。
その人が母だなんて思えないけど。
でも、そうか。
孤児院に子供を捨てる親なんて、ろくな人間じゃないと思い込んでいたが、仕方なく泣く泣く子供を孤児院に預ける親もいるのか。
捨てられるのと預けられるのとでは、意味は天で地ほども違う。
子供にとっては、どっちでも同じ結果なんだけど。
ボクの母はボクに上等な産着を着せてくれていた。
ひょっとしたらボクは、親に捨てられたのではなく、仕方なく孤児院に預けられたのだろうか?
どちらなのか今更確かめようもないけど、どちらなのかは気になった。
「神子さま。お名前はなんと?」
「ディラン。孤児院に捨てられていたとき、着ていた産着にそう刺繍されていたと院長先生が。でも、ボクは神子じゃないから!」
「大聖女さまも刺繍がお得意でした」
「聖女の教養のひとつだから、刺繍は」
「セリア」
「ごめんなさい。ディー。でも、刺繍は誰にでもできることじゃないのよ。それこそ貴族や王族または聖女でもない限り」
「つまりディーは上流階級の出身てことか」
父さんにまでそういわれ、ボクは返す言葉を失う。
ボクが上流階級の出身。
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