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ハレーズチルドレン  作者: イリ―
覚醒

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奥の手

 僅かな時間であったが熾烈な戦いだった。

 MOHの戦闘力が想像以上のものであった事実に驚きは隠せない。たった四人でイージス十人と拮抗(きっこう)した戦いを繰り広げたのは驚嘆に値する。しかし、数に勝る特殊訓練を積んだ紋章官の精鋭であるイージスに敵う道理はない。

 制圧は完了したものの、肝心の梶尾は拘束に至らなかった。迅速にその身を確保しなければならない。

 だがシステムを制圧され、虎の子のMOH部隊、事実を知れば今や己に(あらが)う可能性のある紅蓮(ぐれん)も使えない現状ではもう何も出来まいと矢上征二郎(やがみせいじろう)は思った。


 システムの暴走は度合いを増し、装置には近づくことも出来ない。やむを得ず部屋の外へと退避した。エネルギーの対流から起こる風に、砕けた破片や部品が吹き散らされる。下手に部屋の中に入れば飛んでくる破片に引き裂かれ光線に焼かれる。

 立ち入れぬ空間に阻まれ部屋向こうから逃げた梶尾を追えないでいた。時折、エネルギーの奔流(ほんりゅう)の隙間に景の眠ったような姿が見え隠れするのがもどかしかった。

 一つ大きく息を吐くと、矢上は足元に転がっている柳沢の胸倉を掴み引き起こす。


「貴様らの企みは潰えた。だがこの暴走は続いている。どうすれば止められる。貴様なら分かるはずだ」


 柳沢は青白い顔を奇妙に歪めて(わら)った。


「企みが潰えた? くくく。潰えてなどいないよ矢上総理。こんなところで終わりはしないのさ、くひひひ」

「なんだと? どういうことだ」

「またやり直せばいいだけだ。真実を知るあんた達を消し去ればいい。邪魔者がいなくなれば、時間はかかってもやり直すのは難しくもないよ、ふひ」

「装置が使えないのに我々を消す? まさか……」

「そのまさかだよ。コピーのオーブは残っているんだ。システムもこのコロニーに影響を与える程度のものはある。だから、終わりなのはあんた達さ」


 卑屈に嗤う柳沢を思い切り殴りつける。青白い顔は意識を失ってぐったりと倒れこんだ。イージスに引渡し拘束させると矢上は傍らに立った男に溜息と共に目を向けた。


「君の言う通りだった。私は何ということをしてしまったのか。言えた義理ではないかもしれないが、娘を、景を救ってはくれないだろうか」


 長躯(ちょうく)の男は刹那、暴走する装置を見やると矢上を見下ろすように視線を戻した。


「そうしたいのは山々だけどさ。今はどうにも出来ない。せめてエネルギーの共鳴増幅が止まればやりようもあるかもしれないが。ま、こうなった原因は僕にも少なからずある訳だから状況の打開に手は尽くすけどね」


 そう言い放ったシュナイダーは吹き荒れる風に髪をなびかせて、不適に微笑(わら)った。



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