ヒデキの怒り
「に、逃げたな!? このヒデキ様を謀るとは!」
三時間後、魔力を回復させたヒデキは怒りで地面を蹴りつけた。そこに女騎士大概ないことを知り、馬鹿にされたことに気づく。
「……ひ、ふひひひ! いいさ。そっちがそういうつもりなら、こっちもそういうつもりでいくよ」
勝手に怒りを感じているヒデキは、その怒りのままに魔力を増幅させる。
毒霧が染み入り、魔族と化した存在。憑依型魔族にして自分の元に集わせる。毒霧から離れても活動可能な物だけを選別し、三百の数を集める。
それだけでは足りない。遠方に向かい、さらに憑依型魔族を集める。さらに遠くに向かい、また集める。それを延々と繰り返す。時空を繋げるゲートを開き、それらを一斉に移動させる。
移動した先に見えるのはグテートスの街。毒霧内にしか転移できないヒデキの特性上、一番近い地点はここだ。だが、普通に進軍しても二十分でたどり着けるだろう。
集まった憑依型魔族の数は、千二百体近く。グテートスの街周囲では、毒霧による強化は得られないが、この数はそれだけで脅威だ。
「侵攻は、朝日が昇ってからだ。万全の態勢で、あの街を攻めてやる……!」
転移やゲートなどで疲弊したヒデキは、失った魔力を回復させるために休息に入る。二の轍は踏まない、とばかりに笑みを浮かべて。
「もう、全て壊してやる。そうだ、死んでも蘇生魔法で甦らせればいい。このヒデキ様に出来ないことはないからな。ふひ、ふひひひひひ!」
ヒデキの哄笑が夜の帳に響く。
魔族の一軍は、グテートスの街を向きながら進撃の命令を待っていた。
朝日と共に魔族の軍が動き出す。
常備軍百人足らずの街に対し、その十倍を持って攻める魔族。
国の騎士団が在住しているとはいえ、兵法を知る者は誰もがこう思ったという。
「グテートスの街は、魔族によって蹂躙されるのだ」
……と。




