ミリアの過去 ― 物語
ミリアの過去 ― 物語
ミリアはカウンターに胸を預けたまま、静かに過去を語り始めた。
三年前、彼女は隣町のギルドで見習い受付をしていた。そこではまだ「胸を隠す」風潮が残っていて、魔力の確認は手袋越しや、魔法具を使った間接的な方法が主流だった。
ある日、若い女冒険者のパーティが危険な依頼を受けに来た。ミリアは違和感を覚えた。彼女たちの魔力が乱れている気がしたのだ。しかし、当時の方法では正確に感知できず、上司からも「問題ない」と判断された。
パーティは出発し、三日後に一人だけが傷ついて戻ってきた。他の二人は、魔物の待ち伏せに遭い、魔力切れで動けなくなったのだという。
ミリアは自分の胸に手を当て、悔やんだ。
「もし、直接触れて感知できていれば……」
その出来事のあと、彼女はこの街のギルドに移った。ここでは胸を通じた循環が常識で、受付も積極的に自分の胸を使って魔力を確認する。ミリアは毎日、冒険者たちの胸に触れ、自分の胸を預け、感知の精度を磨いた。
最初は恥ずかしかった。しかし、正確に状態を読めるようになると、危険な依頼を未然に止められるようになった。あるパーティを「今日は魔力の乱れが大きい」と引き止め、結果的に大規模な魔物の群れから救ったこともある。
「あのとき、助けられなかった後悔を、繰り返したくないんです」
ミリアは俺の手を自分の胸に強く押しつけ、静かに言った。
「だから、私は隠さない。勇者様のパーティみたいに、ちゃんと循環できる人たちを、これからも見守りたい。それが、私の仕事であり、過去への答えなんです」
カウンターの向こうで、ミリアの透けた胸が、夕日の光の中で静かに熱を帯びていた。
彼女の過去は、一人の受付としての、静かな決意の物語だった。
(続く)




