111/239
魔物の気配
魔物の気配(さらに深く)
北の街道を進むにつれ、魔物の気配はまだ薄いながらも、わずかに感じられるようになってきた。
風の中に、遠くで草が不自然に揺れる音が混ざる。土の上に、小さな足跡が点々と残っていて、ゴブリンのものと思われる浅い跡がいくつか見えた。匂いはほとんどないが、エルが感知すると、魔力の微かな淀みが空気に漂っている。
「大型のものはありません。小型のゴブリンか、狼の単体が時折通った程度です」
エルが静かに告げる。
リナが半透明の胸当てを軽く押さえながら、周囲を警戒した。
「気配は弱いね。でも、丘陵に近づくと少し濃くなるかも。結晶のおかげで、感知がクリアだよ」
セラが盾の位置を確認し、少し緊張を高める。
「不意打ちされないように、循環は維持しておきましょう」
俺が三人の胸に軽く触れて確認すると、魔力は安定したまま、周囲の薄い気配を敏感に捉えていた。
魔物の気配は、脅威というより「ここにいる」という静かな存在感として、街道の空気に溶けていた。
四人は警戒を緩めず、しかし過度に緊張することなく、北への道を進み続けた。
(続く)




