第9話 ドラゴン娘、公務員になる
大勢の自衛官に銃を突き付けられていた俺は、自分がどこの誰でなにが起こってなにをしていたのかを事細かに事情聴取された。
性別どころか容姿がまるっと変わっているから信じてもらえないと思っていたが、大破したトラックの中から鞄を引っ張り出して資格と免許証の束を見せたらあっさり信じてくれた。スマホは残念ながら壊れていたけど。
――で、とりあえずモンスター娘がなんなのか調べる為に近くの自衛隊病院へ移送されて検査入院をすることになった。
ピンクの患者衣に着替え、女になって初めての排尿で尿検査をし、採血や人間ドックなどあらゆる検査を行った。休憩を兼ねた食事は超大食いなのを申告した結果、大量のパンを提供されて食べた。食後は本格的な体力テストを行った。見ていた自衛官がみんな驚いていた。
その後は元男ということで、女性医官から女性の体についての講義を受け、下着の着け方やらお風呂での髪や体の洗い方、トイレの仕方や入浴後のスキンケアを教わった。女って大変だな、と改めて思った。
今日は色々あったな……。
いよいよ寝る時間になったところで、個室になっている病室のドアがノックされると、スーツを着たおっさんが入って来た。
「どーも初めまして。わたくし、防衛省の佐藤一郎と申します。あなたがモンスター娘になった真野竜二さんで間違いありませんか?」
「はい。そうです」
佐藤さんは傍まで来ると、名刺を丁寧に差し出してきたので受け取って確認。
防衛省職員 佐藤一郎
あとは携帯電話と防衛省の電話番号しか書かれていない。
「あの、本当に防衛省の人?」
「……ただの職員ですから」
と言って笑みを浮かべた。目が笑ってない。
あっ、これ詮索したらダメな奴だ。
自衛隊もスーツ着て諜報活動してるって、祖父から聞いたことがある。機密に当たるから絶対に喋るなとも。
「で、防衛省の人がなんの用です?」
「そうですね……まずはお礼を。自衛隊や警察が来るまでの間、モンスターを倒し被害の拡大を未然に防いだくれたこと、感謝します」
佐藤さんがキッチリと姿勢を正して頭を下げた。
「いえ、国民の一人として当然のことをしたまでです」
本当はめんどくさい後処理とか批判を回避する為だけど。
「いえいえ、我々としてはあなたのような考えと行動をしてくれるだけで、どれだけ助かるか……まぁこの話はいいでしょう」
佐藤さんは近くにあったパイプ椅子を傍まで持って来て座った。
「さて、本題に入りましょう。現在、日本各地に出現した穴……あなたが言う『ダンジョン』は、警察と自衛隊の奮闘と協力してくれたモンスター娘たちによって、なんとか被害を少なく抑えられています。ですが、あなたのようにダンジョンに潜って攻略し、ダンジョンを閉じるということは出来ていません。そこでお聞きします。公務員になるつもりはありませんか?」
「条件次第ですね」
こき使われるのは目に見えてるし、せめて福利厚生とか仕事内容は聞いておきたい。
「まぁ、そうですよね。まだ文書すら出来ていませんが、防衛省の考えでは、自衛官と同じ特別職国家公務員として、ダンジョン攻略に従事してもらうつもりです。ダンジョン内での拾得物に関しては原則として本人の物であるとしますが、未知の物に関しては一時的に我々が預かって調査と研究をさせてもらうことになります。勿論、手当てや報奨金、基本給などは弾ませてもらいますよ。具体的には……現在、圧倒的な人手不足を考慮しまして、《《月収で》》、これくらいでどうでしょう?」
佐藤さんは懐から出したメモ帳にペンを走らせ、こっちに見せた。
えっと、十万、百万、せん……まん?
「……つき、せん?」
「はい。月一千万円です」
「公務員なのに?」
「はい。《《今のところは》》、ですけど」
「その辺詳しく」
佐藤さんは詳しく説明してくれた。
なんでも、今はモンスター娘が希少だが数年もすればそれなりの数になるだろうと政府は予想しており、公務員としての任用も二三年ごとの臨時だそうだ。
将来的にはモンスター娘のダンジョン探索を公益社団法人化して管理するつもりらしい。漫画やアニメみたいな冒険者ギルドを参考にして。法整備もしっかりとされて、未登録及び無許可での探索は取り締まるようにするんだとか。
あと、今モンスター娘を公務員として雇いたいのは、戦力として見ているのと、動向を管理しておきたいのと、国内外問わず発生するだろう差別や迫害への対応や、肉体が変わってしまったことによる生活支援も含まれているんだとか。
「どうでしょう。公務員になれば、今の姿に見合った名前の変更や性別変更の行政手続きをこちらでやりますし、公務として特別に武器の所持と飛行の許可も出せます。出張における諸々の費用を経費として処理も出来ますよ」
至れり尽くせりだな。
まぁ、現状では唯一モンスターと戦えるモンスター娘が少な過ぎるし当然か。あと、飛行の許可は欲しい。堂々と空を飛びたい。
「……じゃあ、公務員として国の為に働こうかな」
「やってくれますか! こちらこそ、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
佐藤さんと笑顔で握手を交わし、今日のところは寝た。




