第6話 ドラゴン娘、着替える
「……ちょっと……食べ過ぎたかも」
食べても食べてもお腹いっぱいにならないから、警戒なんて忘れてつい夢中になってしまった。
お陰でストレージ内のこんがり肉はすっからかん。池の水はがぶ飲みし、デザートにアカマルの実を沢山食べた。
これだけ食べてようやく満腹になったけれど、お腹が妊婦みたいに膨らんでしまった。そのせいで作業着の前を開けておかないと苦しい。
「今度から抑えないとな。あともっと肉がいる」
改めて警戒しつつ食休めすれば、お腹が十分くらいで凹んだ。ゴブリンは来なかった。
「そろそろ行くか」
棍棒を担いで部屋を出て歩けば、通路でまたホブゴブリンやゴブリンシャーマン、ゴブリンファイターや下層から来たっぽいゴブリン十数体とそれぞれ遭遇。【ファイアブレス】で丸焼きにして幾つかのこんがり肉をゲット。あと『Lv.4』になった。
さっきからスキルを使いまくっているが、ドラゴン娘の体はとんでもなく体力があるらしくまだまだ元気だ。
「おっ、宝箱」
ちょっと小さい部屋に到着。
奥には宝箱がぽつんと一つあって、やっぱり怪しい。棍棒から石槍に持ち替えて慎重に近づき、宝箱を小突いてみる。
……なにも起きないな。
と思った直後、宝箱が勝手にガタガタ揺れ出し、ぱかりと蓋が開くと綺麗に生え揃った牙が見え、にょろんとながーい舌が出てきた。粘っこい唾液まみれでテカテカしている。
「わっ、ミミックだ」
『ミミック』とは、宝箱に擬態する定番のモンスターだ。ホラーゲームでは手足が生えて格闘戦を仕掛け、エロゲーでは女を捕まえてあんなことやこんなことをしてくる奴。でもこいつはそのどちらでもなく、普通のファンタジーなミミックだ。
ちょっと距離を取れば、ミミックは器用にバッタンバッタンと小さく跳ねて近づいてくる。俺に向けて舌を伸ばしているが、射程はせいぜい三メートルほど。通路に出ても追い掛けてくる。
【ファイアブレス】!
むっ、防がれたか。
ミミックは蓋を閉じることで火から身を守った。箱が多少焦げただけで、また蓋が開いた。
「だったら物理だ」
石槍をストレージに仕舞って力強く跳躍。身を翻して天井に着地し、続けてミミックの背後に跳んで着地。
【テイルスイング】!
オーラを纏った尻尾で方向転換中のミミックを攻撃すれば、バラバラに砕け散った。
「おっ、こいつ経験値多いんだ」
こいつだけでゲージが一気に伸びて『Lv.5』になった。
宝箱の残骸と本体だろう肉片が溶け、ドロップとして服が出た。
『格闘家の服』……胴・腰防具。運動能力が向上し、打撃による防御力が少し上がる。素手による攻撃が強くなる。
「ふーん、中々いいじゃん」
近づいて防具を手に取ってみる。
「うわ、なにこれ。布面積すくなっ!」
端的に言うならへそ出し衣装だ。
トップスは、ホルターネックのぴっちりした黒い布。伸縮性があるけど、丈が凄く短い。
ボトムスは、ベルト付きでミニスカートと一体型のホットパンツ。
上着もあるけど、ノースリーブで丈が短い。
「これを着るのか……」
水着みたいで、正直、かなり恥ずかしい。
けど今着ている作業着は普通の服で、ちょっと焦げてる。こっちを着た方が断然強くなるから、着ない理由が羞恥心以外にない。
「うううううう…………着よう!」
強さと恥ずかしさを天秤に掛け、俺は強さを選んだ。
作業着、インナーのシャツ、安物のトランクスを脱いで全裸になれば、傷一つ無い白くてきめの細かい柔肌が露わになる。女の体を触って確かめたい欲望を理性で押さえて防具を着ていく。
防具はモンスター娘なら誰でも着用可能となっていて、翼とか尻尾とか貫通して着ることができるので、簡単に着ることができた。
体を捻じったりして、自分の姿を確認。
「うーん……やっぱり痴女だよ」
サイズは自動で補正されて合っている。が、布面積自体が少ないせいで肌面積の方が多い。
上着は前が閉まらない。そういうデザイン。
トップスはパツパツだし、下乳が出そうになっている。
おまけに下着を履いてないから、股にちょっと違和感がある。
「これで性能が低かったら破り捨ててやる」
着ていた服をストレージに仕舞い、棍棒を担いで移動を再開。
「お?」
通路を歩いていると、丁度よくゴブリンファイターが曲がり角から現れた。目が合うと全力でこっちに走ってくる。
棍棒をストレージに仕舞い、迎え撃つ為に拳を作って構える。
ギャッハー!
走った勢いのままにゴブリンファイターが飛び蹴りしてくるのを横に動いて回避――と同時に、隙だらけだから手を出して足に引っ掛け、頭から落とす。
転倒したゴブリンファイターが起き上がると拳を振るってくるが、ファイターという割にはフォームが悪い。そしてパンチも遅い。
躱したり受け流したり防いだりすれば、イラついたのか大ぶりの攻撃をしてきたので、カウンターとしてアッパーで攻撃。
「――あっ」
顎にクリーンヒットしたゴブリンファイターは、勢いよく真上に打ち上がると天井にぶつかり、頭が潰れた状態で力無く落下して地面に倒れた。
「……加減、したんだけどなぁ」




