第25話 ドラゴン娘、ドラゴンの力を少し引き出す
ドロップアイテムは黄金の十字架の首飾りだった。
『試練の十字架』……装身具。デュラハンロードを倒した証。装着者と身に着けている物に、常に『聖水』と同様の効果を得る。また、レベルが上がりやすくなる。ただし、装着者がダンジョンに入るとダンジョンが活性化し、より多くのモンスターが出現と強力なモンスターの出現を誘発する。
「おお、いいじゃん」
手に取って早速首から提げる。飛んでいると十字架が胸の上で跳ねまくる。
……なんか邪魔だな。
服の下に入れれば自然と谷間に収納され、跳ねなくなった。
「これでよし」
スッキリしたので移動を再開。予想した通り逃走を妨害するモンスターが壁の左右の穴に配置されていた。弓矢を手に持つ骨人間……『スケルトンアーチャー』だ。
っていうか、ちょっと……いやかなり多くない!?
穴という穴から複数体のスケルトンアーチャーが整列して矢を放ってくる。流石にちょっと疲れているので全部と戦う気は起きず、ゆっくりしてもいられないので飛ぶことに集中し、高速で通り抜ける。途中、幾つかの罠もあったがそれらは先程のファイアブレスで判別不能なくらいに溶けて壊れていた。
もし戦わずに逃走を選んでいたら、これら全てを突破する必要があると思うと身震いした。
高速で通り抜けて六階へ到着。このフロアは砂色の砂岩一色で、幅も高さも二メートルくらいの狭い真っ直ぐな通路だ。おまけに十メートルくらい先から途端に真っ暗闇になるので、先が見通せない。
まるでピラミッドの中みたいだな。
この狭さでは飛んで移動も難しいので徒歩で進む。魔剣も動作がかなり制限されて扱いずらいのでアイテムボックスに仕舞った。久々の拳スタイルだ。
「あっ、ピラミッドと言えば――」
通路を塞ぐように作られた蜘蛛の巣を端っこから外すと、巣の奥の天井が動いてドスンと閉じた。
そして、何事も無かったかのように元の状態に戻った。
「……罠が多いのが定番だったな」
リアルのピラミッドがどうなのかは知らないが、映画の中とかゲームでは罠だらけだ。
「慎重に行こう」
――と言ったけど、こりゃ無理かもしれん。
進んだ先には棺が左右の壁に埋め込まれるように設置されていたのだが、蓋が開くとそこからぞろぞろぞろ……全身包帯の人型モンスター……『マミー』が出てきた。こんな狭い通路に数十体が列をなしている。
ファイアブレスで一気に片付けるのが手っ取り早いけど……折角だし、ちょっと殴ってみるか。
素早く接近し、紫色の弱毒の息を吐くマミーの顔面をぶん殴る。すると頭部が弾けて消え、胴体も霧散して消えた。
……ああ、これ試練の十字架による聖水の効果か!
試しにもう一度殴ってみると同じように消えた。蹴りも効果は変わらず、【テイルスイング】で一気に倒しても同様だった。ドロップアイテムはしっかり落ちて『異世界金貨』なる別世界の物を模倣した純金製の貨幣が出た。
金じゃん! ……異世界?
とりあえず殴って蹴って尻尾をぶつけてマミーを全滅させ、レベルアップして『Lv.30』になったのを認識しながら考える。
異世界……どこの異世界だよ。というか実在するんだ。ならこれが証明になって別世界へと繋がるゲート作成のきっかけになるか? もうこの世界はダンジョンだらけでダメそうだし、マジで世界中で研究しそう。
……もしゲートの作成に成功したら、新たな闘争に巡り合えるかも。
期待しつつ金貨を回収。未登録の純金の取り扱いなんてめんどくさいので全部政府に売るつもりだ。
回収が終わって移動を再開。真っ直ぐな通路はいいのだが、途中、人が通ることを明らかに想定していない傾斜の上り坂やら下り坂を進み、罠を見破って回避し、大量のマミーを倒し、ハイゴーストの群れを殴って倒し、レベルアップして『Lv.31』になり、また罠を見破り、新たなモンスターと遭遇。
そいつは砂岩で出来た無機物のモンスター……『サンドゴーレム』だ。しかも四体。ただし、通路が狭いからそれに合わせて人と同じ大きさしかない。正直、大きさ的に期待外れだ。
「フンッ!」
気合を込めたパンチであっさりと頭部が砕けた。ゴツイ手を振るってくるが、それも殴ったら砕けた。
脆すぎる。動きも遅い。
面白みもなくあっさり倒せた。ドロップアイテムは麻袋に入った『良質な肥料』という、そのまんまな名前の土。量は十キロある。
回収して先に進んだら、またすぐに罠を発見。床の砂岩の一つが、他より僅かに高くなっている。踏めば何かが作動するタイプだ。
「……めんどくさいな」
罠ばっかでつい愚痴がこぼれた。かと言ってどんな罠か分からない以上は敢えて掛かる気にはならない。
うんざりしつつも罠を回避して進み、このストレスはまた出たゴーレムの集団を殴って解消した。レベルアップして『Lv.32』になると同時、ズキッと頭痛がしてスキルを習得した。
【竜拳】……竜に類するモンスター娘のみが習得する。内なる竜の力を拳に宿す。最強種ドラゴンの力は他のどの種族にも特功となる。
「どの種族にも特攻? それはつまり、神にも……?」
試したい……【竜拳】!
神様に当ててみたい気持ちを持ちつつオーラを纏った拳で壁を殴れば、大きな音と地響きが起き、漫画とかアニメみたいに大穴が開いた。
「おおぅ、結構な威力。でも、神にも特攻が入るなら……」
手が届く! ……と、いいなぁ。
淡い期待をしつつ移動を再開すると、すぐに七階へ続く階段に到着した。




