第23話 ドラゴン娘、とにかく進む
三階は耐火性に優れていそうな黒い石の通路になっていた。相変わらず丁字路や十字路は無いが、カーブが直角になって、僅かにだが横幅が狭くなり天井も低くなっている。
飛んで移動を続けてゾンビバードとゴーストは燃やし、それ以外は無視して進めば部屋が見えた。入り口に違和感はあったが急ぐことを優先して中に入れば、横に見えた通路への入り口が床から生えた鉄のドアによって閉じられた。背後で音がしたので振り返れば、入った場所も閉まっていた。
そして、床全体がぱかりと開いた。幾中にも重なった歯を持つ巨大な口が見え、頭に思い浮かんだのはモンスターの名前……『フロアイミテーター』だ。
……飛んでいて良かった。
フロアイミテーターは口をパクパクして侵入した存在を捕食しようとしているが、舌が無いので飛んでいる俺を捕らえることが出来ない。
これはどうやって倒せば……あっ。
周囲を見渡せば壁の一つにソフトボールくらいの禍々しい目が現れていて、こっちを見つめていた。魔剣で突き刺せば部屋全体が揺れ出し、耳を塞ぎたくなる大きな悲鳴を上げて口が閉じてただの床に戻った。レベルが『Lv.24』になり、ドロップアイテムが出た。
『聖なる瓶』……蓋付きの瓶。中に液体を入れて五分経つとアンデッド系モンスターに有効な『聖水』に変わる。何度でも使えるが、一人一個までしか所持できない。
「おっ、いいアイテム」
地面に降りて手に取る。容量は五百ミリのペットボトルくらいだろうか。透明なガラス製で分厚く、持ちやすい多角形ボトルになっている。
「五分で聖水……今のダンジョン用にすぐに充填したいけど、水は…………」
辺りには見当たらない。だが、一つだけ心当たりがある。でもそれは女になった自分にとっては非常に恥ずかしい行為だ。
下を向き、大きな胸で隠れた先の股間を見つめる。やっている姿を想像してしまい、羞恥心から心臓の鼓動が速くなる。きっと今の俺は顔を赤くしているだろう。
「……背に腹は代えられない、か」
今は自分一人であり、ワフと合流する為に時間が惜しい俺は覚悟を決めた。魔剣を地面に突き刺してスカートと一体化したホットパンツとショーツを脱ぎ、聖なる水瓶の蓋を開けて股間に当てた。
――そして、自分の尿を瓶に充填した。まだ出る分は地面に排泄した。
今度、水もアイテムボックスに入れよう。絶対に!
硬く決意した俺は聖なる瓶を落ちないように胸の谷間に仕舞い、脱いだ服を着直して飛んで移動を再開した。さっきと同じようにバードゾンビとゴースト以外は無視し、部屋も無視して進んで三階を突破。四階へ。
四階は明確に薄暗くなり、鍾乳石っぽい物が幾つも垂れ下がる洞窟に変わった。幅もさらに狭くなり、天井も低い。分類が大剣である魔剣を振り回したりギリギリ飛んで移動はまだできるが、これ以上狭くなるようなら難しい。
速度を少し落として安全に飛んで移動していると、新たなモンスターが現れた。
骨だけで動く人型……『スケルトンソルジャー』だ。兜を被り鎧を着込み、手には短めの剣と丸い盾を持っている。
「邪魔」
魔剣で薙ぎ払うように攻撃すれば、スケルトンソルジャーは盾で防いだがドラゴン娘の膂力には抗えず、あっさり壁へ吹っ飛んでバラバラになった。骨が溶けてドロップしたのは、持っていた丸い盾。
『錆びたラウンドシールド』……錆びているが、軽くて丈夫な盾。衝撃を和らげ、防御力を少し上げる効果がある。
「……なにかの役には立つか」
拾ってアイテムボックスに仕舞い、移動を再開。次々とゾンビ類やゴーストが出る中、また新たなモンスターが現れた。見た目はゴーストだが、オーラを纏っていて一回り大きい……『ハイゴースト』だ。
おっと速い!
普通のゴーストより高速で接近してきたが、脅威には感じない。翼をはためかせて急停止からのバック飛行に入る。凄まじい重力を受けきっても呼吸は問題無く、そのまま【ファイアブレス】を放った。
本気のブレスが通路を駆け抜け、あと少しで届きそうだったハイゴースト共々、他のゾンビ類やゴーストは全滅した。レベルがまた上がって『Lv.26』になった。
ファイアブレスの影響で全くモンスターと遭遇せずに通路を進み、部屋が見え――そのまま素通りした。部屋には棺桶が一つあって開き始めていたけど、無視したからどんなモンスターがいたのか分からない。戻ろうにも戻れないし。
「ん?」
通路に仕掛けられていただろう罠っぽい魔法陣が露呈していた。恐らくファイアブレスの影響で勝手に隠蔽が剥がれたのだろう。頭に浮かんだ情報によれば『転移の魔法陣』らしい。こんな危険なダンジョンでどこに転移するというのか、恐くて踏もうとも思わない。
魔法陣を越えて進めばまた部屋が見えた。素通りしようと思ったら、入った瞬間に出入り口に鉄のドアが下から生えて閉じ込められた。
慌てず騒がず、全力の【テイルスイング】!
鉄のドアにオーラを纏った全力の尻尾攻撃をすれば、ドアがひしゃげながら吹っ飛んで出られるようになった。部屋の中心ではなんかヤバいモンスターが現れた気配がしたが、無視して進む。
通路を少し進めば、五階へ続く階段があった。




