第20話 ドラゴン娘、パーティーを組む
毒だらけのダンジョン攻略を終え、高級ホテルに滞在して早数日が経った。そんな俺は今、屋内プール場で優雅に水泳を楽しんでいる。
着用している水着は黒のホルターネックのワンピースで、翼と尻尾の邪魔にならない背中が丸見えのセクシーなやつ。
周りには他のお客さんもチラホラいるけれど、俺を気にする人はほとんどいない。視線を感じてもいやらしくない。流石は高級ホテルだ。民度がいい。
では、どうしてこんなにゆったりしているかというと、暇だからだ。防衛省の佐藤さんからチャットアプリで逐一情報が送られてくるようになって分かったが、どうやら日本はダンジョンが生まれる割合が海外と比較すると低いらしい。それで防衛省としては、難なくダンジョン攻略する俺はエース的な扱いで、今は他のモンスター娘の経験を積ませようと考えてるんだとか。
――ん?
泳いでいると、この場に似つかわしくないスーツ姿の見知ったおっさんがプールの縁に立っているのに気付いた。
泳いで彼の前に移動し、隣に上がる。
「こうして会うのは久しぶりですね、シルドラさん」
「どうも佐藤さん、なにか用です?」
「大事な要件なので直接お話ししようかと。ラウンジでお待ちしておりますので、着替えて来てください」
「りょーかい」
というわけで、急ぎつつも丁寧に髪を乾かしたりスキンケアしてからラウンジへ移動。
ラウンジでは佐藤さんが幾つかあるテーブルセットのソファーに座り、珈琲とクッキーを楽しんでいた。そしてその対面には、人間に近い姿をしたモンスター娘が一人、カップとソーサーを手に持って待機していた。
近づくだけで、彼女の頭の上にある耳がピクリと反応して振り向き、彼女が彼に俺の来訪を伝えるとすぐに立ち上がってこっちに向いた。
「お待ちしておりました、シルドラさん」
「待ちました?」
「丁度良い休憩が取れましたのでお気になさらず。それより紹介しましょう。こちらのモンスター娘の彼女は『ワーウルフ』のワフです」
「どうもー! ワフでーす!」
紹介された彼女は明るく手を上げて名乗った。
ワーウルフ……頭に犬耳、お尻の上辺りから犬尻尾を生やした犬娘だ。
品種がゴールデンレトリバーなのか綺麗な濃い金髪で、毛量が多くて背中が隠れるほど長く、そういう髪質なのかモッフモフしている。茶色い瞳の目はくりっと丸くて大きい。可愛くて綺麗な顔だ。
着ている服装は派手な色の半袖シャツにデニムのショートパンツだが、背が高くて出るとこ出てて引っ込むところは引っ込んでる凄い体型だから、エロい。
今はとても機嫌が良いのか尻尾がブンブン振られている。
「……ペンシルドラゴンだ。長いからシルドラと呼んでいい」
「シルドラね。元男同士、仲良くしましょ!」
「ああ」
握手を求められたので、手を握っておく。それはそれとして個人情報が早速漏洩しているので佐藤さんを睨みつければ、彼は営業スマイルのまま小さく手を合わせて謝罪のポーズをとっていた。
……そうか。しゃべっちゃったかー……。
別に怒るほどのものでもなし、一応は謝罪してるので今回は見逃すことにする。
「で、佐藤さん。彼女を紹介した訳は?」
「それについて今から説明します。どうぞ座ってください」
ソファーに促されたので素直に座ると、ワフが隣に座った。近い。
対面に座った佐藤さんはワフを見て一瞥し、無視して話し始めた。
「では今回の任務を説明します。他のモンスター娘たちがダンジョン攻略を行っていますが、現在のところその成功率は高くありません。階層が少なくてもギミックが難しかったり、環境との相性が悪かったり、そもそも出現するモンスターが強かったりと様々ですが、なによりも単独で活動をしているのが原因だと我々は考えました。そこで、シルドラさんとワフさんには実験的にパーティーを組んでもらい、モンスター娘同士が協力してダンジョン攻略できるかどうか確かめてもらいます。以上ですが、質問はありますか?」
なるほど。俺はたまたまドラゴン娘とかいう種族的に最強な部類だから単独でなんとかなってるけど、普通は隣のワフみたいな種族だからな。
それと、これは敢えて説明してないな。
手を上げる。
「質問。もしダンジョンを攻略した場合、聖杯の扱いはどうすればいいです? 下手したら喧嘩や裏切りが発生するけど」
「そうですね……現状考えられる対策は、ダンジョン突入前に予め聖杯の扱いをしっかり話し合って、譲り合うしかないでしょうね」
「まぁそうでしょうね。ワフ、どうする?」
「んー、今は特に願い事が思いつかないし、シルドラが先でいいよ」
「分かった。それで、次のダンジョンはどこに?」
「駐車場に陸自の車両が一台止まっていますので、運転手に声を掛けてください。案内してくれます」
「りょーかい。じゃあ行こうか」
「はーい」
席を立ち、ワフを連れて駐車場へ行って陸自の車両を発見。運転席でスマホを触りながら休憩していた運転手は、あの時のおっぱい自衛官だった。
コンコン、と窓ガラスをノックすれば彼が気付いて窓を開けてくれた。
「よく会うね。えっと……」
「鈴木です。話は聞いてますので、どうぞ乗ってください」
「じゃあお願いします」
「お願いしまーす」
そうして俺たちは次のダンジョンへと向かった。




