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ドラゴン娘になった俺、ダンジョン攻略の果てに神になる。  作者: 覇気草


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第18話 ドラゴン娘、神様と再戦する


「やぁシルドラ。さっきぶりだね」

「その言い方……幻影の記憶がある?」

「神様だからね。それより聖杯で私との再戦を願うなんて、バカじゃないの? 《《まだ》》早いよ」

「だって、他に願うことないし」

「いやあるでしょ。レベルを上げてほしいとか、スキルやアビリティがほしいとか、他色々」

「でも戦いたいし」

「……」


 なんか凄く呆れたような顔をされた。


「まぁいいや、戦ってあげる」


 笑顔に戻った神様は、くいくい、と挑発するように手招きした。


【ポイズンブレス】!


 深呼吸して強く息を吐けば、紫色の弱毒の霧が放射される。魔剣を構えてその中を突っ込み、平然と立っている神様の頭に振り下ろす。


 ――やっぱりか……。


 そんな予感はしていた。魔剣は神様の体を素通りし、地面に刺さった。


 ならこれはどうだ! 【テイルスイング】!


 オーラを纏った尻尾を振り回して攻撃するが、これもすり抜けた。


【ファイアブレス】!


 ゼロ距離から全力で火を吹いたがこれも無意味。


「言ったでしょ、まだ早いって」


 神様がフーッと息を吐くと白い煙が大量に吐き出され、一瞬にしてボス部屋全体が薄い霧に包まれた。頭の中に情報が浮かぶ。


  これは……『強酔《きょうすい》』?


 咄嗟に息を止めて正解だった。状態異常の一つで、お酒を飲んだように酔ってしまうようだ。しかも強酔だから、酩酊を通り越して一気に泥酔になる。


「スキル【ドランクブレス】。私がよく使っていたスキルだよ」

「!? がはっ」


 神様がボディブローをゆっくりと繰り出し、反射的に飛び退いた――はずなのに、どういう原理かしっかりと鳩尾に叩きこまれた感覚があって、凄まじい衝撃が体に伝わった。肺に取り込んでいた空気が圧によって口から吐き出され、それでも息を止めようと努めたが少し吸ってしまった。それだけで状態異常『強酔』になった。


「うぅ」


 体が熱い。

 視界がぐわんぐわんする。

 三半規管がイカレて足元がおぼつかない。

 眠気が酷い。

 なにより気持ち悪い。吐きそう。


「どう? 凶悪なスキルでしょ」

「……」


 歯を食いしばって飛び掛かりながら魔剣を振るうが、やはりすり抜けた。泥酔状態は気合ではどうにもならず、限界に達してぐるぐる回る視界を遮る為に瞼《まぶた》を閉じ、地震が起きたかのように錯覚する感覚を落ち着かせる為に膝を着いた。


「これに懲りたら、私に届き得ると思うまで聖杯に再戦なんて願わないこと。いいね?」

「いや、それは……ダメ!」


 思考が働かず安直な言葉しか出てこない。


「……強情だねー。嫌いじゃないけど、拒否権はないよ。戦いにならないんじゃ私としても楽しくないし、聖杯の願いが正しく叶っているとも言えないからね」

「あ、やめ――」


 顎をクイッと上げられ、目を開ければそこには神様の顔が十センチにも満たない距離まで迫っていて、抵抗する暇もなくキスされた。泥酔しているせいでろくに力が入らず、蕩けるくらいに気持ちが良くて、舌を絡める大人のキスを受け入れてしまう。

 その間、特殊状態異常『祟り』が付与され、スキル【ドランクブレス】、アビリティ【酒豪】を習得させられた。


 特殊状態異常『祟り』……神の呪い。状態異常『強呪《きょうじゅ》』以上の呪いであり、通常の耐性や解呪アイテムでは解けない。

 猫神、猫社チエの祟りは『聖杯に猫社チエとの再戦を願えない』である。


 キスが終わって神様の唇が離れた。


「ふぅ。ごちそうさま。聖杯の願いの代わりにスキルを一つあげたから有効に使うといい。それと、呪いを一つ掛けておいた。それが解呪出来るレベルになったら、再戦に応じてあげる。それまでは自己研鑽に励んでね。じゃあねー」


 満面の笑顔で手を振って神様は消えた。【ドランクブレス】の白い煙も消えた。


 …………寝よう。


 キスが気持ち良すぎたのと、泥酔した状態ではまともに飛べそうになく、俺はそのまま気絶するように眠った。





「起きなさい、ペンシルドラゴン」


 ――――誰?


 美しい女性の声が聞こえ、眠気や酔いなんて無かったかのように意識が一気に覚醒して目を開けた。

 俺はいつの間にか座っていて、白くて長いテーブルを縦向きに挟んだ向かい側に、背もたれ付きの白い椅子に美女が座っている。

 黒い洋風ドレスの装いで、艶のあるプラチナブロンドの長髪にサフィアのような瞳、女神としか言いようのない黄金律で出来た顔と体つきをした大人の女性だ。


 えっ、ほんと誰!?

 というかここどこ!?


 今いる場所は真っ白な部屋。長テーブルには沢山の椅子が並び、片側にある幾つかの窓からは眩しいくらいの光が射し込み、外が真っ白で見えない。もう片側の壁の両端にはドアがそれぞれ付いている。恐らくここは食堂だろうと察しはするが、それにしても普通じゃない。


「私は女神ルシエール。時間が無いから手短に言うけど、あなた、聖杯に願いが無いなら代わりに頼み事をしてくれないかしら」

「……いきなりですね。内容と、頼みを聞いた場合どうなるのか教えてくれるなら検討しますけど」

「内容は『女神ルシエールの召喚』。頼みを聞いたら、召喚された私が願いを一つ叶えてあげる。まぁその願いが叶えるに値するものに限るけれど」


 違う、聞きたいことはそれじゃない。


「ごめん、言い方が悪かった。頼みを聞いたあと、あんたはなにをするつもりだ?」


 改めて聞けば、女神ルシエールは嬉しそうにニヤリと笑みを浮かべた。


「秘密♪」


 うわ絶対にろくでもないこと考えてるなこいつ!


「じゃあこの話は無かったことで」

「そうね。もう起きていいわよ」


 ……あっさり過ぎる。まさか既に――


「――はっ! あっ、やべ……どんな夢だったっけ?」


 急な目覚めのせいで夢の内容が思い出せない。非常に悪い夢だった気はするけれど……。


「…………まぁいいか。なるようにしかならん」


 酔いも醒めているので、俺は翼をはためかせて飛び立ち、ショートカットの穴を通って地上を目指した。



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