第16話 ドラゴン娘、隠しフロアを発見する
「……生きてる」
まさか無傷で生き残れるとは……流石はドラゴン娘。
「っと、溶ける前に食べないと」
魔剣を動かして死んだデスイーターを斬り刻み、血まみれの肉を手に取って食べる。
……ちょっとドブ臭いけど、淡白で鳥っぽい。まぁまぁだな。
口と手を止めずに食べ続けているとデスイーターが溶けだし、次第に体積が小さくなってドロップアイテムが出現した。
それは小さなデスイーターが自らの尻尾を咥えて円を作った銀色の指輪。
『デスイーターリング』……装身具。デスイーターを倒した証。死の呪いを跳ね退け、不死の存在にダメージを与えられるようになる。また、両想いの異性との性行為で必ず妊娠し、それ以外での性行為は必ず不妊となる。
「おぉ、凄い効果」
王族とか金持ちが大金積んでも欲しがりそうだけど、これは着ける一択だ。
拾い上げ、ノリで左手薬指にはめてみる。
「ハハ、元おっさんの独身が結婚指輪をしてるみたいだ。はぁ」
結婚……したかったな。それにこの指輪が結婚指輪というのはどうなんだろう?
まぁいいや。それよりも指輪をはめたら『格闘家の服』の効果が消えたりしないだろうか?
試しに指輪を付けない状態で壁の木を殴ってみる。木がボッキリ折れた。
次は左手薬指にはめてから隣の木を同じ力加減で殴ってみる。変わらず折れた。どうやら装身具の指輪は武器にカウントされないっぽい。
「よし……食べよう」
探索再開の前に、殴り倒した木から一部をもぎ取り、ぱくり。
まずい。渋みがあって割り箸を食べてるみたいだ。
次に泥をすくって口に入れる。
うん、ドブ臭い泥だ。一階のよりはマシだけど。
食べ終わってようやく探索を再開。ぬかるんだ泥の中を歩き、出会った瞬間に逃げ出すようになったポイズンスネークとポイズンフロッグを倒しながら進み、新たな敵と遭遇。
その敵は天井の木の幹に逆さでぶら下がって寝ている、人並みに大きな黒い蝙蝠。名前は『バッドバット』。
病原菌多そうな名前だな。消毒しよう。
【ファイアブレス】!
遠距離から火を吐いて攻撃すれば、バッドバットは火に包まれながら飛んで暴れ回り、そのうちぽとっと落ちて泥の中に沈むと動かなくなった。
「消毒、ヨシッ!」
しっかり指さし確認。
溶けたバッドバットからドロップアイテムとしてこんがり肉が出たが、一瞬で泥まみれになった。しかもこの泥、毒だったみたいで名前が『こんがり肉(弱毒)』に変わった。
まぁ、食べられるか。
勿体ないので食べつつ移動。十字路があったけど、左右の曲がり角の先が袋小路になっている。真っ直ぐ進めば丁字路で、片方が袋小路。また十字路で、突き当たりが袋小路になっている。曲がって進んだ先、横道が突き当たりになっていた。
「むぅ。なんか袋小路多くない?」
さっきから、ちょっと進んで突き当たりという道がやたらと多い。この階の特徴と言えばそれまでだが、なにかあると疑いたくなる。
「……物は試しか」
ダンジョン探索系のゲームでは、隠し通路とか隠しフロアとかが存在する。もしかしたらと思って正面の壁を魔剣で斬って斬って斬りまくって進んでいく。
少しして開通し、別の通路と繋がった。
「……外れか。天井はどうなんだろう?」
気になったので、飛んで枝葉を切り落として穴を開け、突入。
「おぉ、これは凄い……!」
枝葉の天井を抜けた先は、厚くて白い雲に覆われた空と、地平線の先まで続く木々の枝葉。そして奥の方にぽつんと一つ、空高くまでそびえる円柱の石の塔がある。
あの塔はなんだろう? ゲームの没データみたいに隔離されてるけど……ゲームなら天辺になにかあるだろうし、見てみるか。
高度を上げつつ塔に近づこうとすれば、数十体のバッドバットの群れが塔の方からこっちに向かって来た。充分に引き付けてから【ファイアブレス】で一網打尽にすれば、レベルアップして『Lv.19』になった。
他に敵は現れず、雲を抜けて遥か高くにある塔の天辺に到着。天辺にあるのは一本の小さな木と直径二メートルほどの穴と、木の看板一つ。
小さな木には、物理的にキラキラ光る林檎っぽい赤くて丸い小ぶりな果物が幾つか実っていた。
『レベルアップル』……食べるとレベルが一つ上昇する。ただし、ダンジョン内で一度しか効果がなく、階層を跨いだり地上へ持ち出すと消滅する。
「レベルアップルて、駄洒落じゃん。まぁいただきます」
一つもぎ取ってぱくり。シャリシャリした食感で甘酸っぱい、酸味の強めな林檎だ。脳内ではレベルアップして『Lv.20』になり、アビリティ【頑強】を習得した。
アビリティ【頑強】……体が丈夫になり、より健康的になる。あらゆる状態異常にほんの少しだけ耐性が付き、体力と筋力も少し上昇する。
おっ、いいね。
レベルアップルを芯まで食べ、今度は看板を確認。日本語で文字が書かれていた。
『この先、最下層』
ショートカットか。
食べている物を飲み込み、看板を引き抜いてかじりながら穴を覗けば、真っ直ぐ下へ伸びていた。
「穴じゃん」
これ、空を飛べるからいいけど、他のモンスター娘だったら実質使用不可だな。一階ずつ降りるのめんどくさいし、試しに使ってみるか。
食べ掛けの看板を捨て、穴へ飛び込んだ。




