第15話 ドラゴン娘、レアモンスターと遭遇する
「ふぅ。ごちそうさま」
空中で、口や胸や手を血でベトベトにしながらもラミアを食べきった。
まぁまぁ美味かった。
でもこれで、石野白斗はダンジョンから解放されたはず。復活はしない……はず!
「しまったな。先に倒して復活するかどうか試すべきだったかも」
そうしたら、俺の考えが合ってるかどうか分かったのに。これは失敗。
「ま、自衛隊からの任務は完了。考察も一緒に報告すればいいか」
というわけで、空を飛んだまま地上へ向かって移動。足を取られず、モンスターからの攻撃もなくスイスイ進んで地上へ帰還。
地上に出ていたポイズンスネーク一体を魔剣でサクッと倒してから、ダンジョンに潜る前に話していた幹部自衛官と再会。
「お疲れさまです、えっと……ペンシルドラゴンさんでよろしいですか?」
「はい。進化して見た目が変わってますけど、ペンシルドラゴンです。あと長いんで、シルドラでいいですよ」
「分かりました。中で話しましょう」
指揮所に入り、パイプ椅子に座って体を休める。
「それで、ラミアらしきモンスター娘はどうでしたか?」
「ダメでした」
「……そうですか」
「けど、遺言を残していたから幾つか情報は手に入りましたよ。モンスター娘はラミアで確定。人間だった時の名前は石野白斗。不登校のニートだから、恐らく未成年の学生かと。あと、親にメッセージ。『不出来な子でごめん』と」
「なるほど。情報感謝します」
彼はペンとメモ帳を取り出すと素早く書いた。
「他にはなにかありますか?」
「考察になりますけど、いいですか?」
「大丈夫です」
「恐らくなんですけど、ダンジョン内で死亡した場合、ダンジョンに取り込まれてモンスターとして復活すると思われます。そしてその復活を阻止するには、ダンジョンに取り込まれる前に肉体を食べるか消滅させる必要があるかと」
メモを書く手が止まった。
「……その血、もしかして食べました?」
「はい」
「地上に連れ出して倒した場合、どうなるかは考えなかったんですか?」
「あっ、それは思いつかなかった」
確かにその場合はどうなるんだろう?
けど、それは意味がなさそうな気がする。
「……まぁいいでしょう。他にはなにかありますか?」
「他には……ああ、ドロップした素材を売りたい。これとこれ」
ストレージからポイズンフロッグの皮とポイズンスネークの皮を出して近くのテーブルに置く。
「これは?」
「毒蛙と毒蛇の皮」
蛙の皮を触ろうとした彼の手が引っ込んだ。
「じゃ、あとよろしくお願いします」
「分かりました」
報告も終えて素材も提供したので、テントを出た俺はすぐにダンジョンへと潜った。
「めんどうだし、飛ぶか」
飛行してモンスターを倒しながらすぐに二階へ到着。着地すればぬかるんだ泥に足が沈んで動きにくい。
「む、こいつは……レアモンスター?」
少し移動して通路を曲がれば、通路の横幅を埋め尽くし天井まで半分ほどの高さがある巨大鰐と遭遇。ゴツゴツとした分厚い黒い皮で、長く伸びた口は少し開いていて、綺麗な薄ピンクの口内と鋭く大きな牙が見える。頭に浮かんだ知識によれば、レアモンスター『デスイーター』というらしい。
そいつは俺を発見すると、ギョロッと黄金の瞳で見つめ、両足を動かして前に進みだした。
思ったより速い!
逃げ場がないので飛んだが、デスイーターは頭を持ち上げて普通に天井まで届く口で噛みついて来た。なんとか回避し、直上から背中に魔剣でぶっ刺してみるが、切先が食い込まない。
硬いっ!? 【ファイアブレス】!
離れながら火を吐いて燃やしてみるが、効果なし。
むぅ。【テイルスイング】なら効くか? って、ええー……。
デスイーターは巨大だから振り向けないと思っていたが、神様の幻影みたいに半透明になると壁をすり抜けて方向転換してみせた。
「そんなのアリかよ。うわっ!」
今度はデスイーターが幾重にも重なって見え、半透明の分身がコマ送りのようにワンテンポずつ遅れてそれぞれ違う場所に噛みついた。回避した時に風圧が起きて泥が跳ね、全てに実体があると分かる。
こいつ絶対に出るダンジョンのレベル間違えてるだろ。いや、レアモンスターだからそういうの無視して出現したということか?
とにかく、倒さないと安心して探索できない。
それでどうやって倒そう? 外側は硬いから内側に攻撃が有効そうだけど……いや無理だろ!
分身を含めた攻撃が激しくて隙が無い。下がり続けてなんとか回避できているが、もし袋小路に入ったら終わりだ。
あっ、マジか。
先が袋小路だったので手前の曲がり角を曲がったら、そこも袋小路だった。振り返ればデスイーターが迫って来ていて、逃げ場が無い。
こうなったら、一か八かやるしかない!!
魔剣を構え、目を大きく開いて動きを観察すれば……分身の攻撃に規則性があり、攻撃が重ならない部分があった。
……今だっ!
一気に加速し、攻撃の穴が開いている部分に向かって突っ込む。分身の一撃を避け、本体が大口を開けて噛みついてくるところを、恐れずに敢えて食われるように口内に入り、奥の脳天に向けて魔剣を突き刺した。
デスイーターが苦痛で暴れ出し、柄を握りしめていないと放り出されそうになる。必死に耐えていると動きが緩慢になり、そのうち動かなくなった。
レベルが上がって『Lv.18』になった。




