第8話 王女の後見人
――――王女殿下の後見人を拝命いたしました。
庭でお茶を飲んでいた王女は、正面に座る美しい人の言葉に、首を傾げた。
王女が、砂糖をひとつ、ティーカップに沈めた。
「こうけんにん」
「はい、両親に代わり、後継者の心身を支える役目を持つ大人のことです。
――――そうですね……殿下を今まで以上にお支えするということです」
王女は難しそうに瞬いた。
「…………!」
そして何事か思いついたのか、両の手で口を覆った。
「……じゃあもっと会えるの?」
「もっと来てくれるの?毎日?」
幼い王女は大きな目をさらにまんまるにして輝かせた。
公爵は、額に手を当て、しばし沈黙した。
「…………今までよりはお会いできる日も、増えます。けれど毎日は難しいです」
王女は露骨に肩を落とす。
そのさまを見て、公爵は苦笑する。
「……私も殿下にもっとお会いしたいです」
「殿下も、そう思ってくださっていますか?」
「……うん……」
王女がまた、砂糖をカップに沈めた。
側仕えの侍女が、増え続ける砂糖を見てそっと眉を寄せた。
「……私にも、公務があります」
「……お仕事?」
「はい、あなたにお勉強があるように、私にもお仕事が」
「ふうん」
王女の大きな目が半分になった。
公爵は茶を一口含み、俯く王女のつむじを見つめた。
「ですから、約束をしませんか」
「やくそく……どんな?」
「この日会いましょう、という約束です」
「その日を楽しみに、日々を頑張るのです」
王女がぱちぱちと瞬く。
公爵は穏やかに笑った。
「私も、その日を待って公務を頑張ります」
王女はまた砂糖を落とし、小さな手でゆっくりとかき混ぜた。
そして目を伏せた。
「……シエルも、がんばってもいいよ」
「……お勉強……」
「ありがとうございます、殿下。お互い頑張りましょうね」
「うん……」
「………………」
王女がおそるおそる小指を差し出した。
公爵が一瞬目を伏せ、そして同じように自身の小指を差し出す。
王女が指を絡め、公爵もそれに応じた。
「つぎは、いつ?」
「そうですね、いつにしましょうか」
「明日!」
「明日……」
公爵が目を丸くし、やがて堪えきれぬように笑った。
王女はきょとんとその顔を見つめ、それから絡めた小指にぎゅっと力を込めた。




