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第26話 醜聞

25話まで毎日更新予定です。

 ――――次代の王は“猛獣”か“名君”か。

 ――――“暴力王子”健在? 生誕祭でも会場騒然。

 ――――病める王家に広がる“孤立”の影。


 新聞を手に取り、最初に目に入った文字。

 宰相はその新聞を机の端に伏せて置いた。

 

 伏せられた新聞が、机の端に積み上がっていく。

 民間向けの風聞紙は、虚構や揶揄に満ちていた。

 王族の生誕祭は、彼らの格好の餌食であった。

 幼い王子や王女らはその的となった。

 普段人目につくことの少ない幼子たちが、衆目にさらされる。

 幼子の行動一つ、一つが貴族らの動向を左右した。

 

「くだらぬな」

 

「宰相、そうかっかするなよ」

 呑気な声が耳に入る。


 何故か子らが宰相の執務室に居座っていた。

 王子は来客用のソファーに寝転がり、ゼトは飾られている調度品に見入っていた。

「何故おられるのか」

「雨だから」

「関係ありますまい」

 王子と問答していると、侍女が茶菓子を運んできた。


「頼んでいない」

「俺が頼んだ」

「だから何故」

「雨だから」

 空は鈍い煙色。

 ザアザアと雨音が窓を打つ。

 遠くで雷鳴が鳴っている。

 

 子らは早速、茶菓子に群がった。

 虫のようだ。


 気を取り直して、宰相は新聞に目を向ける。

 ――――“お友達いらない”――幼き王女殿下、社交拒絶。

 ――――王女殿下、公爵の背から離れず。

 ――――公爵家、ついに王家へ食い込む。

 

 「ッチ」

 下賤な者共は王族を食い物の種としか考えぬ。


 「馬鹿馬鹿しい」

 だが捨て置けぬ。

 定番化した低俗な記事すら、いまや王権を揺るがしかねない状況にあった。


 そして次に手に取った新聞の見出しが、目に留まった。

 ――――親王派貴族、諸侯連合に合流か。

 

 「…………またか」


 王妃は早くに亡くなり、王は病床。

 そして未だ幼き王太子。

 王の不在は、王権に深刻な影響をもたらし、貴族諸侯らを調子づかせていた。

 

 頭の痛い、記事ばかりだ。


 

「さっきから何イライラしてるんだ」

 王子が宰相の机に寄ってきた。

 気になったゼトまでもが寄ってくる。

「新聞?」

 宰相は新聞を閉じて畳んだ。

 王子にはまだ早い。

 

 だが王子は諦めが悪かった。

「なんで見せない?」

「隠すなよ」

 王子は食い下がる。

 ゼトまでが参戦してきた。

「見せろよ」

「殿下は見なくてよろしい」

 宰相が新聞を机にしまう。

「ケチ」

「ケチ」

「やかましいわ」

 厄介なガキが増えた。

 ゼトめ、お前はオウムか。


「宰相、あんまり怒ると身体に悪い」

「そうだぜ宰相閣下」

「街の鍛冶屋は怒鳴りすぎて倒れて死んだって話だ」

「本当か?」

「わからねえ、噂だが」

「だがありえる、この宰相はいつも頭を抑えている」

「怒鳴ってるからか……」

 合点がいったように顔を見合わせる子ら。

「怒るのって身体に悪いんだな」

「なるべく笑ってよう」

「ハッハッハッハッハ」

 馬鹿みたいな会話をする子らだ。

 

「宰相、気をつけろよ」

 王子が宰相の肩を叩いた。

 宰相は大きくため息をついた。

 

 お前らのせいでもあるわ。

 クソガキ共。

 

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