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第16話 肖像画
「これ、お兄様?」
王女が、肖像画の中の幼子を指した。
側仕えの侍女が、王女の肩を抱いた。
「はい、幼い頃の王子殿下ですよ」
「ふうん」
幼子と、そして王女の知らない大人が二人。
その肖像画に描かれている。
「王子殿下のお側におられるのが、陛下と、王妃殿下になられます」
「王女殿下のご両親ですよ」
侍女の声が、わずかに静かになった。
「そうなんだ」
青みがかった黒髪に重厚な王冠を乗せ、精悍な顔つきをした男。
王女は首をかしげた。
そしてその隣に白金色の長い髪の女がいる。
王女はじっとその女を見つめた。
王の膝には、その男によく似た黒髪の幼子が座っていた。
今もその面影が残っている。
これは兄だ。王女は迷わずその幼子を指さしていた。
「お兄さまと、お父さまと、お母さま」
その肖像画に映っているのは三人だ。
「……」
王女は目を伏せた。
――――お絵かきがしたい。
王女は無性にそう思った。
ルシと、……そしてシエルも描こう。
王女はもう一度だけ肖像画を見上げた。
それから、くるりと背を向けた。




