5話 何でこうなった??
「ぇーーーーっとぉ。はい! 質問です。」
取り敢えず、はい! っと手を挙げると名前を呼ばれて当てられた。なんかニマニマしてんのは腹立つな。
「はーい。 オペラちゃん!」
「そんなに簡単に”結婚”とか決めてもいいの?」
少し楽しそうな声だな。そんなイオに素朴な疑問をぶつけてみる。
「貴族の結婚なんてこんなもんだぞ?」
「あーそう言う時は、“義務”って答えるんだぁ…。」
あ。しまった…そう思った瞬間慌てて手で口を押えるが遅かった。
「へぇ? お前が好きだからって言って欲しいって事?」
へぇ? 可愛い所あるじゃん…。っと楽しそうに言われてなんかちょっとなぁ。イラってするからやめてほしい…。
「…ニヤつかないで欲しい。」
くっ…! でも、まぁ、仕方ないかぁ。お貴族様は政略結婚なんて当たり前だと思うけど、けどさぁ…。イオって私の事好きなんじゃなかったの?? なんか、義務に負けた気分なのはちょっと悔しいなぁ。
「恋愛結婚なぁ。確かに羨ましいとは思うけど、俺は“貴族”だからな。お互いの利益も含まれるんだぜ? それに、愛は無くても“信頼”と“信用”は出来るだろ? なんたって、お互いの家を背負ってんだ。そりゃ必要だ。だから、まぁ、良き隣人にはなれると思う。」
そんなに駄目な事か? そう聞かれたら、納得は出来る。まぁ…そうだよなぁ。この世界の常識を非常識だ! っては言えないよね。郷に入っては郷に従えって言うし…。んー。でもなぁ。
「むー。考え方の違い…納得は出来ないけど、理解はしてる…つもり。」
「ふははっはは。それはもう、仕方ないよなぁ。でも、まぁ、“愛”に変わる時はあると思うぜ?」
「愛ねぇ…。」
でもね。こちとら平民なんですが!? 平民と貴族の価値観は天と地ほども違うから! 私の意見だけど! だからこそ! 困る。
「そうそう! だから、ここはサクッと俺と“婚約”しとこうぜ?」
かっる!! さっきから、言動がすっごい軽いんだよなぁ…。はぁ…でもなぁ。
「…私まだ6歳だから、結婚も考えられないんだけど。」
「ああ、だから “婚約“しようって言ってるんだけど?」
「……っ! あー、んー、ぇーっとぉ。い、一端! お家に持ち帰らせて頂きます!」
ガバっと勢いよく頭を下げる。本当は逃げたかったけど! 無理、逃げられないと思うし! 何よりまだ、イオの魔法の中だもん! 映像は消えて真っ黒い画面になってる。電源切れてると本当にテレビみたいだなぁ…。とか思ってたら、周りの音が消えた。その瞬間イオから声が聞こえる。…それと同時に、全身の血の気が引いた。あ、これやばくない?
え? ヤバい…ヤバい…やばい。コレはバレた!? くっそう。い、いや、コレは多分、ギリまだセーフ! 殆どグレーに近いけど、でも、怒るよねぇ。私さっきからイオの事、袖にしてるし…。あーこれで怒って帰ってくれないかなぁ。
「あっは?」
「……っ」
そんな私の願いは一瞬で散った。チラッと頭を上げてイオをみると、俺の事舐めてる? って、目が…言ってるぅぅぅ…。でもでも、これは、ガチで“お持ち帰り案件”だから! 出来れば! ここで別れてから次、会って憶えてたら…とか言って、シスターと神父様と庭師のおじちゃん! に相談して…何とかしてもらう! 必殺、他人任せ!! てか、無理! もう…無理! 頭パンクする!
「“情報”は欲しいって思わねぇーのか?」
思うわ! 死ぬ程思うに決まってる。でも…でも、それはさっき言ってた信頼と信用じゃない。それは“脅し”になるから、疑心暗鬼の結婚生活なんて嫌だ。絶対に“愛”は生まれないのだけ分かる。破滅じゃん…。そんなの嫌だよ。…それで、信頼も信用もないじゃん! それに、それは。
「それは、ズルいよ。」
「…だなぁ。」
「イオ、さぁ。」
「んー。」
「そ、んなに、私の」
「好きだよ。」
早いよ! 答えるのが! どもった私が恥ずかしくなるから辞めて欲しいんだけど!? あああー。ぶっちゃけ、お貴族様との結婚とか、絶対にお家騒動とかしがらみとか巻き込まれそうだし! 花嫁修業と称していびられそうだし! 虐められそうだし! 後、勉強大変そうだし…自由に平平凡凡、平穏に暮らしたい! だから、私には、断る! その判断しかない!
「な? 取り敢えず、”婚約”ならいいだろ?」
「…何が?」
何がいいのか分からないんだけど!? なんで納得すると思うのか…そして、何故私が頷くと思っているのか…。
「えぇ~でも、俺は逃がす気ねぇーよ?」
分かってる…分かってるよ…“本気”なんだろうってのはさぁ。目がさっきから全然笑ってないんだもんなぁ…。こう、真剣って言うか…捕食者の目してるんだもん。てか、何上私を好きになる? そんな要素は今の所なくない? は…っ! い、いや、そうか…。私が主人公だからか! なんて罪な女なんだ私! 6歳にして1人の男を虜にしてしまったか…。
「ちげーよ。」
「え!?」
なんでわかったの!? 心の声バレた…。やめて、そんな冷めた目で見ないで!
「取り敢えず、“結婚”か“婚約”か決めろ…な?」
「…えぇ。」
前略、シスターアニス、神父様、庭師のおじさん。3人を残して旅立つ不幸をお許し下さい。死なないけど…もぅ。コレは、死刑宣告確定では!? 泣きたい! なんで、選択肢に結婚しかないんだろう…。恋人は、早いけど、何で“友人”って言う選択は無いんだろう? もしや、遠回しのお友達宣言…とか? 嘘です。ごめんなさい。思ってたら、手を繋がれで指を絡めされました。あーこれは俗に言う“恋人繋ぎ”では? この世界ではどうなんでしょうか? 力が強くて逃げれません! てか、逃がしてくれませんね…ははは。ついに物理的にも逃げれなくなりました。詰みました…。あ、これ、口約束とかしてもヤバそうだよね…。嘘って分かって逃がしてくれる感じでもないし。あー。
チラッとイオを見ていると、“魔法”が消えた。え? あ、コレ逃げ…っは! 動く瞬間に更に、力を入れられた。早い早い早い!! くっ! でも、ここで諦める訳にはいかない! 私には、シスターと神父様の恋の行方を見守る使命がある! だって、めっちゃ気になるんだもん! 両想いなのは知ってるし、モダモダしてるのをおじさんとニマニマして見守っていたかった…。いや、諦めたくない! めっちゃ見たい! この前、神父様ネックレス買ってた所見たから渡すとこ見たい!! きっと、今度のお祭りに渡すんだよ!?
でも、でも…時には諦めも肝心なのかも知れません。だって、人生は何があるかわかりません。諦めてくはないんだけど…はぁ、
「さーて、どうするの? そろそろ“昼”だけど。」
「……っはぁ。何で知ってるの?」
なんで、知ってるんだよ~。私だって当日知ったのに? 何で知ってるのか。本当に謎なんだけど?
「だから、俺は“攻略対象”なんだぜ? 知ってるよ。」
「えぇー」
シスターアニス、神父様! 庭師のおじちゃんは…私と同じだからいいや。
これは、どう考えればいいでしょうか? いきなり、めちゃくちゃ綺麗な多分お貴族様に”結婚”するか! っと、軽く言われました。本人は軽くないと主張されてますが…。言動は軽いです! 何でも、この方は、お前はこの世界の主人公で、死ぬ運命だっておっしゃいました。
その上、ご自分の事は、この世界の攻略対象の1人で、お前に惚れた! っと、まるっと、全てをまとめて告白をされました。コンパクトにしたらいいってもんでもないと思いました。
「因みに、弟子になれば、俺の手作りで三食とお菓子付き」
ほらぁ…誘惑してきたぁ。
「2人の時は? 師匠。」
「そうだなぁ…イオでいい。知らない奴の前では師匠で言いぜ?」
しまった、お菓子とご飯につられて条件反射で口が…! が、どうやら拒否権は元から無かったらしい。なんか、魔法で“紙”を作成してる。え、書いたら終わりの奴では?? いやーでもなぁ…死にたく無いし…ちょっと面白そうなのでいいかなぁって思った。決して決して! 決して! 美味しいご飯に目が眩んだとか…。食べたサンドイッチとお菓子が美味しくて、胃袋を掴まれた訳じゃない! まだ3つぐらいしか食べてないから! 私はそんな安い女じゃない! 結婚とかは何とか回避出来てる?? このまま行ける?? だって、私…まだ、6年しか生きてないけど! 告白ってもっとロマンチックだと思っていましたが、こんな、ロマンの欠片もない告白ってあるんだなぁっと思いました。逆に、ドラマはありそうだから、ドラマチックになりますか?? いや、これ…ドラマチックってあってる?? まぁ、あってはいるよね? 逃げれそうにないので…。彼は、地位や権力とかではなく、食で私を釣ってきます。最悪お金ならまだしも、食べ物は駄目だと思います。逃げれません! それにしても、何でこんなに良くしてくれるんだろう。
「…私とイオが出会ったのは《《今日が初めて》》でしょう?」
私の何がそんなにイオを引き付けるのか分からない…? 首を傾げてイオを見上げると、ほんの一瞬だけ、目の奥が悲しそうに揺れる。それも声を掛ける前に元に戻った。
「一目惚れって言っただろ? まぁ、取り敢えず、ほら、時間やべぇだろ?」
「…あっ!」
チラッと、持ってきていた時計を確認すると、既に12時を過ぎていた。ヤバい、話に夢中で忘れてた!
「ぇ…あ、ほ、ほんとだ!」
「なぁ、俺も行ってもいい?」
「…え゛!? ぇーっと、いいと思うけど…本当に来るの?」
えぇぇぇ~。逃げられ…ああー本当に逃がす気ないんだね!? 怖いんだけど!?
「そりゃ、未来のお嫁さんのご家族には挨拶必須だろ?」
「あはは…。」
取り敢えず、手を繋がれてるから逃げられないのは逃げられないんだけど…普通来る? 初対面で一目惚れって事だけで…。ちょっと引くんだけど…。そう悩んでいる私をほって歩き出す。私の家の方へ…マジかよ。何で私の家。いや、ここまで私の事知ってるんだから、当然かぁ…あーなんて言おうかなぁ。
「えっとぉ…と、友達? を連れて来たんですけど…」
いいですかね? 扉を開けると、丁度シスターと神父様が居た。あぁ、まだ心の準備がぁ…タイミングが悪かったぁ! …疑問をぶつけられる前に伝えなきゃ!! 先手必勝! と言う事で行っては見たものの、何故か固まってる。っ! やっぱり、駄目だったか? お客様は呼ばない感じだったのかも知れない。次の言葉を何か言わないと!
「…初めまして。オペラさんに一目惚れして告白している途中です。」
「い、イオ? え、ちょ…っま!」
待って! 誤解! 誤解を生むから!? …い、いや誤解ではないか?? え? なんで言うの!? なんでこのタイミングで言ったの!? 言われた側からしたら、え? あ、あ、うん? だもん!? 現に2人共私を見て“どう言う事?” って目が私に訴えてるんだけど!? え、なんて説明をしたら…!? だ、だれかぁ!! 助けてえぇぇぇ…!
「え、あ、いや、あの…」
どうしたら…なんて答えたら…いいんだ!? 焦っている私の横で再度イオが口を開く。
「本日は、オペラさんの“誕生日会”とお聞きしまして、私も宜しければ同席したく思いまして伺った次第です。」
手土産も持参せず申し訳ございません。そう言いながら2人の前で頭を下げる。え? 誰? さっきまでのイオは何処へ…? あまりの変わりように驚く私を無視する。
「構いません。それに人数が多い方が楽しいでしょう。…そうですよね? 神父様。」
「……ああ。そうだね。オペラ」
「はい。」
「シルバーを呼んできておくれ、庭で掃除をすると言っていた。そろそろ終わっているだろうし。」
「わかりました。ぇーっと、イオは…。」
「それなら、私達が先に案内するわ。お客様をずっとお待たせさせておくわけにはいかないわ。」
「あー。分かりました。では、おじさん呼んできますね! イオ。また後で。」
「ええ。」
「ああ。また、後でな。」
そのまま3人の部屋を後にしておじさんを呼びに行く。それにしても、イオってそんなに地位が高いんだなぁ…。2人掛かりで案内するんだ。えぇ…私って、そんな相手に結婚の申し込みされたの?? ますます嫌だなぁ…。
バタンっと扉が閉まる。そのまま、オペラが出て行った背中を見送った瞬間、2人から殺気が俺に向ってくる。
「おいおい。久しぶりなんだからもっと喜べよ? なぁ? アニス、コールド。あっ、とシルバーも居るんだなぁ。3人仲良くて俺は嬉しいよ? なぁ。」
だから、殺気は仕舞って欲しいんだけどなぁ。喧嘩をしに来たわけでもないんだけどなぁ。中々難しい。なんで、コイツら俺に殺気飛ばすんだが…。
「何しに来たの。ヴィオラ。」
「ふっは? 随分なご挨拶じゃねーの? 一応俺ら仲間だったろ?」
ニヘラっと笑ってい言うが、アニスの顔が更に歪む。もったいねぇなぁー。綺麗な顔してのに。もっと笑えばいいのに。オペラみたいに。可愛い顔で俺の事見てくれるのはいいだけど、目の奥で俺の事怖がってるのはなぁ…ちぃっときついんだよなぁ…。それも可愛いけど。
「…。どの口が言うか、クソ野郎。」
「コラコラ口が悪いぞ。アニス。君もだ。こうなるのを知ってて来たんだろう? ヴィオラ。」
「あー。まぁ。」
知らなくても知ってても来たけど…。
「で? さっきのふざけた自己紹介は何? あの子に惚れたとか言ってたわね。どういう意味?」
「意味?」
「そうよ。“一目惚れ”って、お前が?」
はははっと乾いた笑みを浮かべながら俺を見るアニスの顔には侮蔑の色が浮かんでいる。そんなに、俺が一目惚れしたら駄目なのか? てか、俺が恋しただけでそんな顔になるって、俺の事嫌いすぎるだろ?
「アニス。やめなさい。例え、噓でもシスターにあるまじき顔だ。オペラが見たら怖がってしまうよ。」
「っ…はぁ。はい。申し訳ございません。」
言うとパッと両手で顔を隠し、丁度5秒数えて手を外すと元の顔に戻っていた。
「それと、ヴィオラ。君もだ。悪い冗談はやめてくれ。あの子はまだ、6歳なんだ。君の事だ。我々と会う為に吐いた嘘だろうが、もし本気だったどうするつもりなんだ。」
なんか、俺怒られてるんだけど? え? なんで? てか、嘘だろ…俺本気なんだけど。それとも、冗談で言う奴だと思われてるのか? 心外なんだけど…。後さぁ。断られてるからな? それでも、俺が諦めきれないからここまで引っ付いてきたんだけど。
ぶっちゃけ、相手がお前等って知って内心、めんどくせぇな! って思いながらも出向いた俺に酷い事してんのお前等だからな!? 何この仕打ち。そんなに俺の事嫌いかよ。辛い…。
「…あのさ。アニスもコールドも勘違いしてる。」
「勘違い?」
いや、だからさんでさっきから、アニスは俺に好戦的なんだよ! 俺何かしたっけ? そんなに睨む事ねぇだろ。
「俺は、本気でオペラに惚れてる。てか、告白はした。」
まぁ、結婚したいって言ったあれは。まぁ、そのなんだ…今更だし。いや、だって、一目惚れしてることは伝えたし、伝わってはいるよ。
「…は?」
「…本気なのか? オペラに会ったのは今日が初めてだろう?」
怪訝そうに聞くコールドと嫌そうに俺を見るアニス。どんだけ信用ねぇーんだよ。俺は…。
「1年目の…あの事件で会ってる。」
「成程。」
「でも、オペラは…覚えてないわよ。」
「知ってるよ。」
だって俺の事見てもわからなかったし。そんだけ、あの時のアイツはやばかった。堕ちかける寸前だった。それでも回復して、楽しそうに笑ってる。
「そうか。だか、忘れるなあの子は、あの場に居た。ただ、居ただけだ。」
我々はそう認識している。何も無かった。そう言う、コールドの声は固い。まぁ、そりゃ警戒するよなぁ。あの場の事は当事者とその場にいた奴しか知らない話だ。
「ああ。わかってる。」
笑って肯定する。ただ、それだけだ。それで伝わる。知ってるからな。
「ヴィオラ。」
「俺はな。あの時、あの瞬間のオペラに“惚れたんだ” あ、勿論今のオペラも可愛くて好きだぜ? 笑った顔も最高に可愛い。」
オペラはどんな姿でも可愛い。そう言いった俺を見たアニスが気持ち悪い顔しないでと殴って来たのはまた、別の話だ。
1年前…ある教団が壊滅した。
大規模な教団の一部ではあったが、たった1人の少女によって壊されたのだ。全てを破壊し回るその姿は、化物そのものだ。
生き残って見た物は、その少女の事を”化物”だと言う。その姿は小さな少女の様なのに…見た目は真っ白い髪と深淵の瞳に黒に近い灰色の肌の少女だった。
その少女が触れた所から腐敗し、言葉は呪いとなり体液は毒となった。少女が歩いた後には何も残らなかった。
そうして、姿を見た物は口を揃えて
黒姫
そう呼び、呼ばれた少女の周りには黒が広がり周りを侵食し消していく姿を最後に少女の姿は行方不明になった。
お家に訪問されます!
シスター…アニス
神父様…コールド
庭師のおじさん…シルバー
です!




