22話 トラブルって向こうからもやって来るんだ…。
去って行く少女の後ろ姿を眺めていると、隣から子供の声がした。
「何か、良い事あったのか?」
横を見ると、黒いフードの被った幼い子供がいる。私を守ってくれる小さな騎士の少年だ。フードの隙間から見える黒い瞳に私を映す。それにしても相変わらず気配を隠すのが上手い。ずっと傍にいたのに、ああ、でも…
「あら、お迎えかしら。有難う。」
「いい。仕事だ。…それより嬉しそうな顔をしていたな。なにかあったか?」
あら? 珍しいわね。無口で必要以上の事は話す事は無い彼が無駄に話を振るなんて、私はそれほどまでに浮かれているっと言う事かしら?
「そうね。とぉーても嬉しい事があったの。長年の探し物が見つかった。その感覚に近いわ。ふふふ。」
興味あるの? そう問いかけると別にと首を振られた。あらあら…照れているのかしら? でも、珍しい。この子が私の話に興味を持つなんて。
「そうか。だが、気を付けた方がいい。後ろに居た奴。」
「ええ。ご家族…お兄様かしらね。」
余り似てはいなかったわね。それに、この子の気配にも気が付いていたみたいだし…これは警戒するに越したことはないわ。
「だろうな。」
腹違いや義理の兄妹は別に珍しい事ではない。でも、あまりにも似ていない。と言うか、あの男の目は…別の感情が入っている様な気がした。
「でも、何はともあれもう直ぐね。」
ふふ。これで、”計画”に一歩近づける。ああ、嬉しいわ。ついつい弾んだ声になってしまう。
「そうだな。オレは、お前さえ守れれば何でもいい。」
「ええ。期待しているは、私の騎士様。さて、帰りましょう。」
そう言って、2人は消えた。初めからそこに居ないかの様に…。
「ごーめん。イオ」
「いいよ。それより平気だったか?」
「ん? 何が?」
「いや、何もないならいい。……ちょっとめんどくさいな。」
首を傾げる私にイオは何でもないと首を振り、私がさっきまでいた場所を見る。そこには、もう誰もいなかった。
「いいや。気にするな。ほら、もう中に入れるぞ?」
言うと、扉の前に居た女性から名前を呼ばれる。
「はーい。」
返事をしていくと、羊用紙を渡される。渡された紙を確認すると、前世の健康診断の様だった。健康はいつの時代も大事だもんね! 頷いていると、受け付けてのお姉さんが説明してくれた。
「では、これから、矢印の順番に回って下さい。終わりましたら用紙を出口の近くにいる女性に渡してください。」
「わかりました。」
「お連れ様はどうされますでしょうか?」
チラリっと受付のお姉さんがイオを見るとイオは考えてから口を開く。
「あー…マグダラは、今日は居る? 手紙で巡礼終わったって聞いたんだけど。」
少しだけ、固い声で聞きなれない人の名前を言うイオに受け付けのシスターのお姉さんの顔が一瞬だけ硬くなる。ここは口を挟まずに黙って成り行きを見ておこう。てか、私は行ってもいいんだよね??
「っ…大変申し訳ございません。その問いには答えられません。お約束されておりましたでしょうか?」
張り付けた笑みで頭を下げるシスターのお姉さんは言う。
「あー。最近は約束しないと駄目だっけ?」
前は大丈夫だったんだけどなぁ。と呟くイオにおおっと? もしかして、会おうとしている人は結構偉い方では?? 大丈夫?? ねぇ? 大丈夫なの??
「はい。聖王様はお忙しい身ですので…。」
「そうか。なら、”ヴィオラ・クロックガーデン”が逢いたいって言っても無理か?」
「申し訳…っ! しょ、少々お待ちください。」
そう自分の名前を伝えた瞬間、目の前のお姉さんの顔がみるみる青白くなり走って行ってしまった。それを見た瞬間私は悟り、ゆっくり目を瞑る。あー。私はなーんにも聞いてない! それにしても、名前を名乗った瞬間に受付のシスターのお姉さん走って行っちゃったんだけど? えぇー。これ、私言ってもいいよね? これぞ裸足で逃げ出すってやつですか。逃げ出してはないよね。多分聖王様って言う偉い人に伝えに言ったんだよね?
「イオ~。私、行ってくるね。なんか、長くなりそうだし。」
「おー。終わったら呼ぶ。」
「ん~。了解。」
そのまま私は扉をくぐる。それにしても名乗るだけで、お姉さんが血相変えて行っちゃったけど。やっぱり、イオって、貴族の中でも大物なんだろう。はぁ。まぁ、顔がいい奴は強くて権力持ってんだろうなぁ。こっちに火の粉飛んでこなければいいんだけど…。飛んで来たらどう対処したらいいんだ…そう。こんな感じに。ぶっちゃけ、私、見た目は7歳だからね?? 中身の年齢?? 決まってる乙女の秘密だよ!
なーんて事を考えながら、順番に回っていく。身長、体重、血液検査などなど…。
「お腹空いた…いや、眠い」
途中からお腹が減った…し、何より眠い! ああ、やっぱり二度寝できなかったからだ! こうしちゃいられない! お布団さんと枕さんが私を呼んでる! そして、ベットさんが私の帰りを持っている!!
「でも、その前に何かお腹に入れないと…このままだと、お昼ご飯かなぁ?」
このまま追われたら、お昼ぐらいかな~。そう思いながら、視力検査やら体力検査に、簡単な計算と読み書き。えーとっと、これで、これで最後だ! 最後は魔力検査! これさえ終わればご飯! 何食べようかなぁ~。イオの手作りでも…っは! そうだ! リクエストしたら作ってくれるかなぁ~。
「よし。次で終わりだ。」
なーんて、作ってもらうリストを考えて並んでいると、いきなり目の前に金髪の少し体格がいい子が割り込んできた…。
「…ぁ?」
「なんだ? 何か文句でもあるのか!?」
「私、並んでたんですけど?」
文句? あるに決まってる! 私は、お腹が減ってるんだよ。
「何で割り込んでくるの??」
「決まっているだろ? ぼくは偉いからな! 平民ふぜいが! こうきなぼくに道をゆずるなど当たり…」
フン! っと割り込んできた子…なんか体の面積が大きいな。太る…まではいかないけど。ちょっとぽっちゃりしてんな。ああ。だからか…。お腹で私が視えなかったんだな! それで、恥ずかしくなったんだな! よし! 任せろ。私が何とかしてやるよ!
「すーいーませぇぇぇっーん! この子目が悪いみたいでぇ~。」
近くのシスターのお姉さんを呼ぶと、少し焦った感じでぽっちゃり君の名前を呼んだ。
「っセドリック様! 困ります!」
セドリックと呼ばれたぽっちゃり少年は、お姉さんに注意されてもふんぞり返り私に向って口を開く。
「フン。きさま、ぼくが誰か知って」
知らん! 取り敢えず、お姉さんはぽっちゃり君の肩を掴み引っ張るが中々動かない。重いんだろう…。
「おい!!」
「セドリック様! こちらへ! この子のっ邪魔になります!」
そのまま男の人も来て、2人掛かりでぽっちゃり君は連れていかれた。お姉さんはお強いなぁ。多分偉いさんのお子様だろうが、ここは教会だもんなぁ。頑張ってくれ! 私が、この部屋を出るまで! その間も私に、なんかぎゃあぎゃあ言ってるけど、知るか! こっちはお腹減ってんだよ! そう思いながら無視をして並び順番が来た。そのまま少しして私の順番が来た。
「こちらに、手を。」
「はい。」
目の間の検査機器に手を置くと光る。おお、魔法を調べる方法と同じだ。ただ、違ったのは板に手を置くだけだ。そこで数値が出るとか。それは、その場ではなく。全ての検査の後に後で送られてくるらしい。魔力の大きさでも差別があると言う。その為の配慮との事だ。いつの時代もいるもんだなぁ。
「お腹減った。」
終わったら、何を食べるかお腹と相談していた呑気な私は、まさかのちょっとした事件が起きるなんて思いもしなか…いや、ちょっとだけ思ってた。連れていかれたぽっちゃり君…セドリックと呼ばれた子が戻ってきた。おいおい…。
「おい! きさま!」
「…。」
「きさま! 聞いているのか!」
絡まれている私は取り敢えず、全力で無視を決め込んで出口に向かってるんだけど…なんなん?? 私は疲れてるんだ。眠いし、お腹減ったし。
「…。」
「きさま! ぼくを誰だと思っている!」
知らん! 名前しか知らんわ! てか、初対面で偉そうにしてる奴。その上、”きさま”ってなんだよ! そんな上から言われて好印象持てるか! 変なガキ認定するわ! パッと見、綺麗な金髪にグレー瞳だけれども! ぽっちゃりしてるから可愛らしいんだろう! 後、何でもかんでも輝いてるから眩しいんだよ。後めっちゃお腹減った。魔法の検査と魔力検査下からかな?
「っ! この、このぼくを無視するなんて!! ぶれいな奴だ!」
ビシっと、私の目の前に回り込み指を指す。な・ん・で・だ! なんで私の前に来るんだよ! 邪魔だな。あーくっそ。あとちょっとだったのに!! 後は、この紙を提出用の箱に入れるだけなんだけど! イオも探さないといけないし! 忙しんだよ! あと、お腹減った。だからだろう…口が勝手に開いた。
「だまれ。金ぴか野郎。」
「な…! 何だその変な名前は!」
しまった。つい。反射で…。
「お前」
ビシっと指をさしてやると、顔を赤くして口開く。
「きさま! ぼくを誰だと思っている!」
いや、だから何回も言われても知らないって!
「知らん。誰だ。謝れば許してやる。」
「…っな! ふけいだぞ!」
よく不敬って言葉知ってるね…。っていったら更に憤慨するんだろうか…子供の癇癪って怠いな。仕方ない。頑張ろう…。
「…ねぇ、ここ。何処?」
「は? 知らないのか? ”教会”だろ! おまえは、そんな事もし、」
「だよね? なら、もし、君が身分が高くてもそれはここで適応されるの?」
ここは教会。教会は完全な”中立”…らしいと、ここに来る前にイオに聞いた。神の前ではみな等しく平等なのだから…その為、教会は”中立”の立場だと言ってた。裏では違うけどなぁっと黒い笑みを浮かべながら言ってたけど、聞きたくないので流した。
「…っ! それは。」
良し! いいぞ私! 後、少しだ! がんばれ私! 多分、相手は貴族とか、ここの教会の子とかだったりして…でも、確実に関係者だよね!? 私は主人公だから。大丈夫! 大丈夫…。あーこれ、しくったら、ヤバい!? いや~無~理ぃぃぃ! イオ!! イオ~! 助けて!!
「それに、君が本当に身分が高いとして、その身分を笠に私を嬲るそんな最低な事をしても許されるんだね。」
なんか、7歳にあるまじき言葉を使ってる気がするんだけど、いいよね!? 押し切ればいける!!
「…。」
「何より、君の所為で君の家族の評判が落ちて恥ずかしい思いをするかも知れないが、それを分かってやってるんだよね?」
「そ、それ…わ…。」
ふ…凄く気にしてるな…。いや、まさか、目の前を割り込みされたから注意したら何だけ絡まれるなんて…。思わなかったよ。いや、でも相手は7歳だ。私もだけど! 7歳だもんね。うん。修正出来る。
「なんだ。分かってるじゃないか。君の我儘はまだ可愛い。だから、周りは許してくれるんだ。君よりも小さい子でさえ、順番だってお礼だって言えている。」
チラリと後ろを見ると私達と同じぐらい子と一緒に並んでいる少女が一緒になってお礼をしている。いい光景だ。うんうん。
「…だが、ぼくは!」
「きっと。君の身分はとても上なんだろう。だから、こそだ。」
「だから…こそ?」
「そうだ。君は誰よりも親身になり寄り添いなさい。」
「そ、れ…な、でも…っ。」
成程、身に覚えがあると見た! ここだ。畳みかけろ私! いける! いけるぞ! 私ならいける!! 主人公パワーで何とかなって! カモン! 主人公優勢な強制力! ここ、悪役令嬢の方が強いらしいけど!! そんなもん関係ない! 主人公の方が強い! だって、まだ出会って無いし!
「気づいたなら、まだ間に合う。」
「間に、合う…だろうか?」
「ふ…人間に失敗は付きものさ。だが、気づくことが出来た者は、気が付いていない者より成長出来ている。今の君はどうだ?」
がんばれ、私! 口を動かせ! 適当に上手い事言うんだ!! しくったら斬首か首落とされる!! いやー。首と胴が泣き別れるのは嫌!!
「出来る気がする。まずは…家の者に謝る。許されなくても、謝ってみる。」
「そうか。分かって良かったな。1つ成長できたな。ではな…」
良し! ここまで来た。後ちょっとで、外に出れる!! ヤバい名前を名乗られる前に消えないと! コレ、不敬とかにならないよね!?
「ま、待ってくれ。私は、何から始めれば…。」
知らん! 何故…何故呼び止める!! 気が付いたらな、イケるって!
「そうだな。取り敢えず、ここでほんの少し手伝ってみてどうかな? 手を貸すだけでも、難しいんだ。だが、今の君なら出来るはずだ。」
「…ああ。少し、やってみるよ。ありがとう。」
「ふ…礼には及ばない。私は、御心に従ったままだからね。」
自分の心に。…早くここを出たい!! しくったら死ぬ! 確実にヤられる!! 全部終わらせておいて良かったぁ~! よし、後一歩! そう思ったからだろうか…再度私を呼び止める声が聞こえた。何故止めた!!
「お、お名前をお聞きしても!」
「なーに。名乗るほどの者でもないさ。」
扉の近くまで行きお姉さんに紙を渡す。そのまま逃げる様に外に出て、廊下を歩き扉が真っ直ぐ歩き続ける。よーしぃ!! ミッションクリアだぁあぁぁぁ!! そのまま、どこかのトイレに入り個室の中に入ると、私は拳を作り高く上げる。
「ふぅ。」
や、やり切った~ぁぁぁぁ!! マジで、ヤバかったぁぁぁ~。落ち着いてから外に出ると、綺麗な蝶が私の目の前に現れる。ああ、これがお迎えかぁ。
「こー言う時って鳥じゃないんだ。」
蝶の後ろを付いて行くと、大きな扉がある。そこに、甲冑を来た男の人がいた。
「何か様かな?」
膝を折って私の目線で話してくれる男の人。
「呼ばれたんですけど。あー。オペラです。」
「ああ。少し待っていてくれ。」
そう言って、扉をノックすると同時に、蝶が扉から中に入った。おお~。
暫くして中に通された。
「やぁ。初めまして、マグダラ・セイグリットだよ。聖王をさせてもらってるんだ。」
柔らかい顔をしている白髪のおじさんだった。あーこの人強いなぁ…。と言うのが第一印象だった。
魔法は…次の次ぐらいできっと使う! これから、主人公なので、色々巻き込まれて行きます!




