21話 私って主人公何だなぁ~。
「どうだった?」
部屋から出ると微笑んで近づいてくるイオに私も笑顔で口を開く。
「あー。主人公だったよ。」
笑顔で答える私を一瞬驚いた顔をしたイオ。間違えたと思い私が口を開く次の瞬間には愉快そうな顔になっていた。
「そっか。おめでとう。」
「えぇー。………うん。」
隣に並び歩く。凄いな。今ので分かるの?? どうだった? って答えが、主人公だったよ。って何?? 口にした私でも驚いて混乱してるのに? 何? 何でさも当然の様に、普通返事を返す? どう言う感情で私の話聞いたの??
「次は、身体の検査とテストだな。」
えぇ私がおかしいの? 混乱するんだけど!? そう言われて、紙を渡される。
「紙じゃん! すっごいなぁ。…って、あれ? 魔法の検査結果の紙が無いんだけど? え、消え…いや、落とし…ん?」
あれ? そう言えば、あの部屋から出た時消えた…な…。え? 消えたよね?
「ああ。検査した相手にしか見せれない魔力で作った紙だからな。”魔法紙”って名前だったな。商品名が。」
「魔力で作った紙で、”魔法紙”。それって私も作れるの?」
この世界って、紙すら魔力で作れるの?? …魔法って、紙も作れるんだ。便利だ。
「ああ、練習したら作れるぞ。なんでも、秘密保持の観点から作ってたよ。妹が。」
いいながら手元に白い紙を作り出し見せてくれる。紙だ。おお、さわり心地は言うと和紙だ。うわぁ~久しぶりに触った。 少しごわついた感触…。
「他にも表だけつるつるしてるのとか、光に当てると、キラキラ光る紙もあるな。名前知ってるのか?」
「和紙って名前だけど、この世界に無いの?」
「無ぇな。あるのは、”羊皮紙”と粘土を板状にした”粘土板”とか木を細めに切った”木簡”とかが多かったなぁ。王都はもっぱら”羊皮紙”だな。目に見える方が信じられるだろ? ただまぁ、最近は、保守義務がある場合の契約書とか秘密構文とかは”魔法紙”が多いな。割合としては、半数ぐらいって感じだな。」
「へー。」
いつの時代でもどの世界でも、デジタルとアナログのどっちが良いか論争はあるんだなぁ…。知らんけど! 因みに、前世の私はアナログ派でした! メモ必須!
「それにしても、”魔法紙”なんてものを作ってしまう、イオの妹様は控えめに行っても天才では?」
「…そうだな。」
一瞬の沈黙と同時に吐き出された言葉には優しさがにじみ出ていた。嬉しそう。
「自慢の妹?」
そう問いかけると、肯定するイオ。
「自慢の妹だよ。……つっても、最初はすっごい苦労してたよ。まぁ、どうしたらいいか分からなかったらしいからなぁ。でも、ある日、型を作ればいいんだ! って、いいながら1週間不眠不休で作成してたなぁ…。んで、型を軸に魔石に埋め込んで魔力を流して紙の形にしてしまえばいいんだって言ってたなぁ。」
「あー確かに、一から作るからすごっく大変なのは分かる。…分かるだけだけど…。」
あーでも、あの時、東の国の王子と共同開発してて、アイツと王子の顔も目も完全に据わっててヤバかったから、秒で眠らせた記憶があるわ。遠い目をしながら乾いた笑みを浮かべながら言いうイオにお疲れ様肩を軽く叩く。
「凄すぎてコメントに困るんだけど…。」
何でも勘でも作れるって凄すぎて世界壊してませんか?? でも、便利だよねぇ。魔力すげぇ…なんて、バカみたいな感想しか出てこないのはちょっと申し訳なく思うんだけど…。
「ま、最初は”出来ない”って周りから言われてたけどな。」
「でしょうね。まず発想が出てこないよね?」
それでも、イオは信じたって言うか好きにさせてたって感じだろう。肯定も否定もせずに、黙ってやらせてたんだろう。じゃないと、こんなに私達の生活水準が上がる訳無い。きっと、妹様は頑張ったんだろう。
「天才と変態は紙一重って言うだろ? 奇人変人も似た感じだろ? だから、奇人姫って言われてたけどな。」
「っえ!? 天才って呼ばれてる奇人姫ってイオの妹様なの!?」
「天才…ねぇ? 変態の間違いじゃねーの?」
「いやいやいや!」
お陰様で、本当に豊かになりました! 前世よりもちょっと不便だなぁって思い出しただけで全然貢献出来てなかった私としては、すっごい感動の連続でした。特に! 水洗トイレとお風呂は! いや、本当に! 妹様が前世の記憶を思い出してくれて本当にありがとうございます!
「いつか! 妹様に出会う事があったら、お礼を何とか伝えたい!」
「…そうか。」
なんか、引いてない? いやね? だって、普通にありがたいんだからね?? 私が、前世思い出した時なんてさぁ。え、無いの!? 不便だし、作るか! にはならないから…。知識ないし! 単純に、人間は慣れるから、大丈夫だろう! って思ってさぁ。初めから”無かった”と言う考えならいいかなぁって…。
「そうだよ! 私、トイレ出来た時、感動のあまり涙を流したよ!」
「…それ、アイツ等引いてなかったか?」
ふっと、イオから目を逸らして口を開く。
「はーっははは。想像にお任せするよ。」
「そうか。」
やめて! 静かに頷かないで! そうだよ! 泣きながら感謝して、その日神様にも涙を流しながら、祈ってたら、滅茶苦茶引いた顔を必死に笑顔にしながら良かったなって言いながら、神父様がハンカチ渡してくれたよ。めちゃくちゃ顔引きつってたけどね! 今度からやめようって思ったけどね!
「でもね、いつもありがとう。イオ」
「藪から棒にどうした?」
脈絡が無くいきなり私がお礼言ったらそりゃそうなるよね? でも、言いたくなったからさ。
「んー? 言いたくなったからかな? あ、っとあの扉?」
長い廊下の先に、木造の扉がある。片方が開いていた。中では、シスター服に身を包んだ女性数人が何か紙にメモを取っている。その前には、私と同じぐらいの少年少女がきちんと列になって並んでいる。
「健康診断をあそこでするのかな?」
扉の前には机が置いてありそこにも女性が居た。受付はあそこかな?
「ああ、後は”魔力検査”」
「魔力検査?」
「ああ、今の魔力量を調べるんだ。」
「へぇ~。魔力にも違いはあるの?」
「種族が違うなら魔力の質も違うな。」
ふーん。やっぱり違うのか。そー言えば、魔力って増えるのか?
「ねぇ。」
「なんだ?」
「魔力って増えるの?」
「勿論。」
断言したイオの顔を見て嫌な予感がした。え…何?? 何で、凄い嫌な予感がするの?? 何で、そんな…悪そうな顔で私の事見てるの!? え、すっごい嫌な予感が…。
「そう…な、んだ。」
「ほら、受付するから行くぞ。」
先に歩いてしまった。その背中を見ながら、あーこれ、魔力増やす修行が…。追加された。
「…ぅ、うん。…っと! すみません!」
ちゃんと前を向いていなかったから目の前に現れた白い”何か”にぶつかったが、柔らかい何かに受け止められた。
「いいえ。私の方こそ。」
転ぶ! っと思った瞬間、真っ白い何かに抱きしめられ声がした。声の方を向くと、思いの他顔が近かった。
「…っぉ、あ、あの?」
近いな!? そのまま顔をのぞき込まれ、フードから覗く真っ赤な瞳と目が合う。真っ白い恰好…身長が高くてわからないけど、多分女の人…。シスターの服に似てる。なのに、何だろう? 何か違和感が…ある?
「ふふ…失礼いたしました。大丈夫でしたか?」
「あ、は、はい。申し訳ございません。助けていただきありがとうございます。」
「いいえ。あら、もしかして、魔法の検査かしら?」
「はい。そうです。」
「あら、おめでとう。」
ギュッと手を握られる。温かくて優しい手だ。
「あ、ありがとうございます。」
「貴女に神のご加護を…。ふふ。良い日になりますように。」
「はい!」
再度頭を下げていると、私を呼ぶ声が聞こえた。慌てて、再度頭を下げて歩きだす。
「本当に、良い日になるといいわ。」
だから、私は、気が付いていなかった。真っ赤な瞳で私を見ていた事なんて…。
今回はちょっと短いです。
ヴィオラの妹様は、きっと潔癖だと重いんですよね。
東の国の王子様の話はいつか番外編とかで書けたらいいなぁ…。ははは。あっちも色々大変です。
妹様は未知な家具やら道具作成しまくるから変人奇人で奇人姫と呼ばれているが、ヴィオラや家族は特は好きにさせてるお陰で成功してる。




