12話 過去編3
真っ暗な暗闇を淡い光が階段を照らす。それにしても、うん。真っ暗だな…。すっごい暗い。
『姫君、お足元が、暗いのです。どうか、お気をつけくださいませ。』
「いちおう、みえるけど?」
『はい。ただ、私の方が夜目がききますので。』
言うと、私の前を歩いてくれる。優しい…。そのまま真っ暗な階段をゆっくり下りると、何とも言えない匂いがしてくる。
「…うぅっ! くさっ…ぃ」
『異臭が…しますね…。ここで、ここまで臭ってくるなんて…。』
ジッと、光の先を見るがまだ下があるなぁ…うーん。結構深いな。あああ~これ、結構時間掛かるなぁ。それに、この”臭い”が…。やる気をそいでいく~のがなぁ。
「うへぇ…やー。」
まだ、下り始めて直ぐなんだけど…。心が折れる~。えぇぇぇ~。ああ、最深部って…どんだけ臭いんだよ! それと、対峙しないといけないの…私? うわぁ~憂鬱。嫌だなぁ~割に合わねぇっと既に後悔し始めている私…。いや、ごめん。いくら主人公でも辛いのは辛い! そう思っていると影姫が私に声を掛ける。
『姫君』
「なに?」
すっと、私の顔に手を掲げると、一瞬、モヤみたいなのもが見えたと思ったら、大分臭いがマシになった。凄い。んあー。楽ぅ~。マスクみたいな感じだ。臭いしない!…にしても、あの臭い…っあ! あれだ…! 生ごみと牛乳が腐った匂いを何倍も倍増させた…臭い…ぁー。何となくわかった。思い出したくも無かったけど!
『いかかでしょうか?』
「すごい! においが、なくなった!」
私の影なのに?? 有能すぎるんだけど?? え? 主人公って影も凄いの??
『良かったです。』
いいか。もう、何でも、さっさと下まで降りないと。
「ねぇ、【影姫】」
『はい。』
「なにか、いる?」
『はい。』
私の問いかけに、ゆっくりと首を縦にする。
「おしえて?」
『”魔獣”が。しかも召喚済みが何体かいると思われます。』
「まじゅう?」
来る時に見た熊の魔獣とかかな? ん? でも召喚済み? 召喚したって事? 魔獣を?
『はい。召喚者は、地下に居る子供でしょう。』
つまり捕まっているらしい子供達…?
「…な!? しょうかん!? わたしでたぶん…たまたまできたんだよ!?」
『はい。』
「でも、どうや…っ!」
なんて、なんて無茶をさせたんだ! 子供…しかも死にかけている子供達を無理やり…どうやって…? あぁ…そうか。あるじゃないか…方法が…。だって、私…私は何を代償にした?
『姫君のお考えで間違えないかと思います。』
「ば、か…なの? い、いや、でも…」
死にたくないから、何かを犠牲にしてもって考えるよね…いや、既に召喚されてるんだから、答えは簡単だ。そうなんだ。はっはは。でも…下に居る子供は…そんな考えすら持たせてもらえなくて、無我夢中で召喚したんだと思う…。知らなくても、上に居た”大人”が、の仲間が教えたんだろう。じゃないと、やり方は知らないだろうなぁ。私は…知ってた…もん。記憶なかったら、ここにいる子達末路は一緒だった…運が良かった。それだけだ。
『姫君』
「…いこ。」
名前を呼ばれて影姫を見ると、なんだか、怒る…と言うより戸惑っている雰囲気を感じる。らしくない…顔だ。知らないけど…悪魔なのにね? っと思ってしまう。まぁ、影だから表情ってないんだけど…。
『はい。ですが、その前に…』
「ん?」
『いいえ。何でもありません。』
「そう?」
声が少し硬い。何か懸念があるのだろうか…。まぁ、下に魔獣が沢山いるしな。それかな…。でも、まぁ、倒せばいいんだよね? 大丈夫。今の私なら何でも出来るし? ただ、確実に言えることは上より酷そうだよね。ま、上も今、崩れかけとは言え、私が召喚した“竜”っ…が居るんだもん。なぁ。他にも部屋みたいなのがあったし…ちゃんと見てないけど。気配はあったから人や他の魔獣は居ると思うんだけど。見てないから知らない。でも、確実に誰かはいると思うし…。まぁ、隠れてたし多分敵だろうけど…。いやー。阿鼻叫喚だろうなぁ。あはははは。見たかったな。ざまぁ。そのまま、2人で階段を下がっていくと広い空間に出ると同時に、”何か”に襲われる前に避ける。
「【黎明】」
自分を中心に円状に淡い光を小さく照らすと、真っ黒い大きな獣の様な姿の…《《何か》》がいた。大きな口からは涎が溢れ出ている。
グルルグルッ……ウゥゥゥゥッ!! ジュッッル…
現れたのは、黒い毛皮で覆われた獣の形をしている…動物の様なモノだ。腐敗が進んでいるのか傷みがひどい毛皮の周りは、所々腐って肉が膨れているし、膨れ出ている肉は、腐り爛れている。顔も所々、腐り落ちくぼんだ目の中に辛うじて付いている、形だけの目玉がギョロリっと動く。もう片方は、何か分からない液体だ流れている。多分腐り落ちたな。今も、グシャリっ…ガシャンッ! 落ちた音がして口の中から尖っていたであろう歯が落ちた…と同時に砕けた。その上、臭いがきつくなった…う、酷い臭い。周りには、血の跡が沢山あった。ああ、コイツ等食ったのか…。
『【影縛り】』
淡く光っている空間で、影姫の足元から伸びた影が魔獣の周りを円状に襲い影と腐敗している身体ごと縛りあげると同時に、締め上げる。
「【黒輪】」
その瞬間私の言葉と共に真っ黒い輪が魔獣だったモノを襲い真っ二つに切り落とすと、魔獣が消えた。
「【影姫】」
『はい。』
私が名前を呼ぶと返事と共に言葉を放つ。
『【影縛り】』
その瞬間、今まで隠れていた魔獣達が現れ影姫の影から逃れる。その数8体。うん。多いな。上より少ないけど。
『【呪縛】』
言うと影が鎖の様な形になると魔獣達の影に触れる。…それだけで、動けなくなった。…怖ッ! 何あの鎖っぽいの何!?
「あっは。はいすら、のこらずきえちゃえ! 【黒月】」
言うと、私の背後からゆっくり真っ黒な月が浮かびあがる。私の頭の上に来たと同時に真っ黒い月が黒く輝く…その光が魔獣全てを包み込み……そのまま全てを灰にした。
「おわり」
灰に成ったなった。次の瞬間には灰すら残らなかった…。綺麗に消えた…。取り敢えずはいないね。良かった。それにしても、”灰すら残さず消えちゃえ!” って言ったらマジで消えたんだけど…。
『お疲れ様です。姫君』
「うん。……ねぇ。きいていい?」
『なんでしょうか?』
「こどもすき?」
『…どうでしょうか。特に気にした事はありません…が、そうですね。もし、姫君が…そう考えると…不愉快です。おかしいでしょうか?』
一瞬の間。でも、直ぐに答えてくれた。悪魔らしからぬ答えだ。でも、嫌いじゃない…。私の影なんだから、仕方ないね…。悪魔だって、おかしくなるね。流石は私だ。
「ううん。だいじょうぶ。“てき”なら…やっていいよ。」
言うと同時に、ゆっくり進む。なんか、臭いは無くなったけど、さっきから体が重い気がするんだけど…。筋肉痛? いや、早いか…。え? 何? 纏わりついてる?
『お心遣い感謝いたします。ですが、姫君。』
「ん?」
私の前に階段がある。その前で、歩みを止めた影姫が言葉を発した。なんかイラついてる雰囲気出てませんか? 影なのに…? どうした??
『姫君の眼前に”小物”が姿を現す事はありません。…が、何よりも懸念すべき事は、今、姫君に“臭い”が纏わりついているという事です。』
イラつききながら私…と言う私に纏わりついている“臭い”に怒っているんだろう。さっきから、主張してくるのは下から、私に向けた殺気と魔力。なんか、早く来いって言ってそうなのが、また何ともなぁ…。
「こもの…なんだ。」
なんて言うか、確かに、部下に攻撃させて高みの見物決め込んでるんだろう。部下倒したら、めっちゃ主張始めたし…。十中八九、私に向ける殺気と魔力の発生源は地下の最深部からくる“魔力”だろう。まぁ、地下に何か居るんだろうなぁとは、思ってたけど…これは、うーん。私と同じ事してるって事かな?
『おそらく。それにしても、隠れるのが上手いのでしょう。雑魚の分際で…。』
「そっかぁ。んー。どうしようかなぁ…。」
どうせ下まで行かないといけないのは変わらないから…どっちでもいいんだけど…。
『姫君』
「ん?」
『…私の願いを聞き届けてはくれませんか?』
「なに?」
首を傾げながら問いかけると、私の目の前に傅く。そのまま様子を見ていると手を取られる。
『私を纏ってはいただけませんか?』
「まとう?」
『はい。今は姫君の影を媒体にして顕現しております。』
「うん。」
『私が”完全体”ではあれば、このようなっ! 無様な提案をさせて頂くことはございませんでした。ですが、私の力が及ばず申し訳ございません! が、私の気持ちよりも! 下級の雑魚の分際で、姫君に自分の臭いを纏わせようとしてくる。下等生物風情が! どうしても! どうしても…許せないのです。』
「お、おう…そーそんなこと、してるんだぁ。」
殺気じゃないんだ。これ…キモいな。
『はい。ですから、どうか、私を纏ってはくださいませんか? 無理を強いているのは分かっております! ですが…これ以上は…私には耐えられません。今すぐ、全力で、木っ端微塵にし、生まれてきたことを…。どなたに手を出したのかを分からせてやりたくなります。……ですが、それは姫君の本位ではないのも分かっております。』
「…うん。」
『……っはい。』
「いいよ。まとうには、どうしたらいいの?」
優しく触れられている手を取り両手で握る。初めての体温だ。冷たくて…でも、温かい。
『よ、よろしいのですか!? 有難うございます。』
「あ、でも、まとうと【影姫】どうなるの?」
『私は元々姫君の影を媒介にしております。力のみを残して今回は戻らせていただきます。ですが…』
「ん? なにか、もんだいあるの?」
首を傾げながら影姫に問いかける。今更じゃない? お前は信じなきゃだし…そもそも契約してるしなぁ…。
『……っふふ。ございません。ですので、ちゃんと思い出してくださいね。』
「がんばるよ。」
うぅ…忘れてたらいいなぁって思ってたのに…。まぁ、難しいなぁ。
『はい。では、お待ちしております。我が愛しい姫君』
「ん。呼んだら出て来てね。ありがとう。またね。」
言うと、ふわり笑って…影姫は真っ黒な靄になり、私の周りを囲うように消えた。そのまま目の前に来たと思った瞬間に、私を纏う様に、身体すべてを覆いつくされた。
「…。んーかるい!」
次の瞬間、靄が晴れると同時に体が軽くなった! 首を下にすると身に着けている服は自身の見ると真っ黒い膝丈のワンピースにスカート部分に黒いレースが二段になってフワッとしている。襟には真っ黒いリボンがワンポイントで付いていた。うん。可愛い。へへへ。
「よーし! がんばるぞぉ~!」
手を挙げて階段を下る。さーて、最深部に居る私に喧嘩を売ってくる魔獣をぶっ倒して気持ちよく帰ろう! 子供も1人ぐらい生きてたらいいなぁ…。淡い期待かなぁ。
過去編は、後2ページぐらいで終わります。まだ、ちょっと戦います…。はい!




