04 閉ざされた扉、救いの決断
オリバーとタイラーが核弾頭を抱えたまま、弾薬庫の隔壁へと進んでいると、2人が進む水圧が影響したのか、隔壁扉が突如として重々しい音を立てて閉じてしまった。
オリバーとタイラーは、核弾頭とともに弾薬庫の中に閉じ込められてしまった。
潜水艇のモニター越しに、二人の荒い呼吸音が響き、明らかに動揺しているのが分かる。
潜水艇で待機している聡太の胸も強く締め付けられた。
「ロックが……開かない! ハンドルが動かない!」
核弾頭を慎重に床に置いて、ハンドルを操作するタイラーの声が震える。
「まずい、このままじゃ酸素がもたない!」
オリバーが焦燥を隠せず叫んだ。
アランが指示を飛ばす。
「落ち着け! 無理に動かすな。今、方法を考える!」
だが、計算された冷静な声も、この閉ざされた鉄の壁の前では無力に響いた。
恐らく、勢いよく扉が閉じたことで、扉の向こう側のロックがかかってしまったのだろう。
小型船のメンバー、エリオス本部にいるメンバー全員で、潜水艦の設計図や図面から解決策を見出そうと必死になる。
沈黙が支配する中、聡太が静かにヘルメットを被り、ハーネスを手に取った。
「……俺が行く」
「おい、待て!」
ジャックが制止する。
「お前は経験が浅いんだぞ!一人で乗り込むなんて……訓練とは違うんだ!」
だが聡太の瞳に迷いなく、すぐに答えが返ってきた。
「時間がないんだろ?だったら今、誰かが行くしかない」
一瞬の逡巡。オリバーの心拍数がモニター上で跳ね上がっていく。
焦燥の波が、全員の背中を押した。
「……聡太に託すしかない」
スティーブの声が、管制室から響いた。
「ここで終わるわけにはいかない」
聡太は潜水艇のハッチへと身を滑り込ませた。
エアロックが作動し、海水が勢いよく流れ込む。
徐々に水位が上がる中、聡太は深呼吸を繰り返し、体を硬直させないよう自らを落ち着かせた。
ハッチが開くと同時に、冷たい闇が彼を包み込んだ。
「聡太、聞こえるか?」
アランの声が通信機から届く。
「問題ない、行ける」
ライトの光が狭い潜水艦の内部を切り裂く。
錆びと海藻に覆われた鉄の壁、浮遊する破片の群れ。
狭い通路を身を縮めながら進む聡太は、やがて隔壁扉にたどり着いた。
「よし、着いた。……二人とも、下がって!」
ハンドルを両手で握り、全身の力を込める。
金属が悲鳴をあげるように軋み、扉がわずかに動いた。
その瞬間、内側からもオリバーとタイラーが力を合わせる。
「うおおおおっ!」
最後の一押しで、扉が開いた。
水流が吹き出し、三人の体を押し流したが、彼らは必死に耐えた。
「よし、行くぞ!」
核弾頭を抱えたオリバーとタイラーに続き、聡太も潜水艇へと引き返す。
やがて三人はエアロックに滑り込み、ハッチが閉まると同時に、艇内の警告音が鳴り響いた。
「減圧開始――」
その声の裏で、アランの震えた報告が流れる。
「二隻のクルーズ船……台風を迂回して、こっちに戻ってきてる!」
緊張の糸は切れず、むしろさらに強く張り詰めていった。
潜水艇に戻った3人は、急いで核弾頭をスティーブが用意した特殊ベルトに固定した。
重厚な金属の塊が「ガチャン」と音を立ててロックされると、全員がわずかに安堵の息を漏らした。
「よし、固定完了!」
タイラーが親指を立てる。
「すぐにスーツを脱げ。減圧を始めるぞ」
オリバーの声に従い、3人はぎこちない動作で耐圧スーツを外し、汗ばんだ体を冷たい艇内にさらした。
操作盤に手を伸ばすと、潜水艇の減圧機能が低く唸りを上げ、ゆっくりと気圧が調整されていく。
そのとき、アランの声が緊迫した響きを帯びて流れた。
「……上昇を待てない。二隻のクルーズ船が戻ってきてる。
すでに索敵範囲に入ってる!」
モニターの向こうで、アランが必死に計器を操作する姿が映る。
「賢人、この小型船の操縦は君に任せる。南へ逃げろ!
潜水艇は僕がリモート操縦して上昇させながら、同じく南へ移動させる」
「でも、減圧が……!」聡太が声を上げた。
「大丈夫だ。君たちは減圧に専念しろ。合流は後でできる。
無理に浮上させるより、今は散開して逃げるしかない!」
通信室の空気が一気に張り詰める。
だが、判断の余地はなかった。
「……了解した」
賢人が短く答え、舵を握る手に力を込める。
隣の制御席に座ったアランも、大きく息を吐いた。
「必ず落ち合おう。約束だ」
次の瞬間、小型船のハッチが閉じられ、音もなく水面すれすれを滑るように南へと走り出した。
潜水艇もアランの操縦で静かに浮上を開始し、深海の闇から南へと舵を切った。
それぞれが違うルートを選びながら――目指す先はただ一つ、エリオス。
緊張に押し潰されそうな胸の奥に、かすかな希望の光を抱きつつ、彼らは荒れる海を進んでいった。
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