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君が降り立ったその場所が、僕たちの記憶とつながる  作者: 夢咲 言葉
第4章 隠された大陸、語られた真実

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08 見えた光、試される覚悟

会議室には、まだ重苦しい沈黙が漂っていた。

誰もが「無理なのだ」という結論を飲み込めずにいた時――聡太が、ぽつりと口を開いた。


「……なあ、もしさ。もしオレが宇宙船に乗って、小惑星に突っ込んだらどうなるんだ?」


誰もが怪訝そうに彼を見つめる。

だが聡太は、思考のまま言葉を紡いでいった。


「小惑星が地球に衝突した事実もなくなるし、南極大陸だって本来の位置に残る。

そうしたら、ここも存在しなくて……移住なんて話も全部なかったことになる。

……ってことは、元の世界に戻れるんじゃね?」


突拍子もないその仮説に、賢人も目を丸くした。


スティーブ博士は腕を組み、しばらく無言のまま考え込んでいたが、やがてゆっくり口を開いた。

「理論上は……あり得る話だ。時間移動と因果の収束点を考えれば、“消えた未来”を修正することは可能かもしれない。ただし……」


博士の声が一段低くなる。

「それは、あくまで理論上の話だ。実証は一度もされていない。

つまり……搭乗者が帰還できる保証はない」


沈黙が落ちる。


「でも、もし実行したら?」

賢人が恐る恐る尋ねた。


「世界が修正される可能性はある。

だが、その場合、ここにいる我々も――いや、エリオスの街ごと存在が消えることになるかもしれない」


「……つまり、俺たちが今ここで暮らしてること自体が、“なかったこと”になる?」

賢人が声を震わせた。


博士は無言で頷いた。


議論はそこから一気に熱を帯びていく。

慎重派のティムは「リスクが大きすぎる」と言い

タイラーは「でも、このままじゃ……」

ジャックは「犠牲を払ってでも、元の地球を取り戻すべきじゃないか」


感情と理屈が入り混じり、会議室は再びざわめきに包まれていった。


重苦しい空気を切り裂いたのは、意外にもスティーブだった。

彼はホワイトボードの前から離れ、机に置いてあったマーカーを軽く指で回しながら、わずかに口角を上げた。


「……もう一つ、解決すべき問題がある」

視線を上げ、6人を順に見回す。


「小惑星を破壊するには、強力な核弾頭が必要だ。

僕が設計と組み立てを担当することはできる。

ただし――その“核”の原料を手に入れなくてはならない」


にわかに会議室がざわついた。


「核の原料……?」聡太が言葉を繰り返す。

「そんなもん、どこにあるんだよ」アランも呟く。


スティーブは肩をすくめる。

「生成に必要な物質と部材がそろえば、僕は作れる。

久々に“本気でやれる仕事”が回ってきそうで、少し楽しみだよ」

その声音には、理屈っぽさに混じって奇妙な高揚感が漂っていた。


そこへ、西野が腕を組んで深くうなずいた。

「……それだったら、一つ、可能性がある」


全員の視線が集まる。


「インド洋の沖合に、原子力潜水艦が一隻沈んでいる。

衝突の日、乗組員が放棄して逃げた艦だ。

場所は座標で記録されていて、深度はおよそ700メートル」


「700メートル……」聡太が顔を引きつらせた。

「そんな深さに潜って引き上げるなんて、できるのか?」アランが疑問を投げかける。


「確かに容易じゃない」

西野は静かに言葉を続ける。


「だが、そこには未だに核燃料と兵装が残っている可能性が高い。

もし取り出すことができれば――君たちが言う“賭け”に必要なものが、揃う」


6人は顔を見合わせた。

絶望の中に落ちた光明――しかしそれは、海の底に眠る危険な遺物だった。


西野は低い声で続けた。


「……ただし、もう一つ障壁がある」


6人は一斉に顔を上げた。


「核戦争の後、わずかに生き残った者たちが、インド洋一帯を根城にしている。

国も秩序も失われた中で武力だけを頼りに、海を徘徊しているんだ。

彼らは――海賊のような存在だ」


「……海賊……?」聡太が小さくつぶやく。


「武装してるってことか?」

賢人が顔を曇らせる。


「そうだ。しかも、彼らは潜水艦の沈没地点を“宝”のように認識している可能性がある。

海底700メートルという深さ自体が最大の防壁になってはいるが、油断はできない」


スティーブが指を鳴らすようにして言葉を継ぐ。

「つまり、二重の困難だ。海の底に眠る核をどう引き上げるか。

そして、その前に“人間の脅威”をどう避けるか」


会議室に再び緊張が走る。

だがその空気を切り裂くように、賢人が口を開いた。


「――それでも、やるしかない」


聡太もうなずく。

「このまま手をこまねいてたら、何も変わらない。

リスクがあるのは分かってる。でも、俺たちが行かなきゃ始まらない」


6人の視線が交わり、桜井と西野もその目を見つめ返した。

長い沈黙のあと、西野は深く息を吐き、静かに言った。


「分かった。――やろう。潜水艦の核を取りに行く作戦を、進めよう」


その瞬間、会議室の空気は変わった。

恐怖は消えない。それでも、希望という灯が再び胸の奥で燃え始めたのを、全員が確かに感じていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回で4章が完結となります。続く5章も同時間で連載していきますので、引き続きご愛顧ください。

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