14. エリオス:AIの都市への疑念
エリオスの“都市”には、誰もが等しく暮らしていた。
貧富の差も、食糧危機も、争いも、ない。
だが同時に、「自由」もまた、見えない輪郭に阻まれているようだった。
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賢人はベランダから外を見つめていた。夜になっても、星はなかった。
「宇宙船から見たエリオスは地球と同じように雲あったよな。
これ空っぽく似せたスクリーンだせ。なんで、本当の空は見えないんだろう」
聡太が自室からやってきて、肩を並べて言う。
「何か隠してんのか、そもそもこの星の空ってのが、地球の感覚じゃ測れないのか……」
賢人の問いに、AIが即座に反応した。
「エリオスでは、放射線や粒子嵐の影響を防ぐため、大気圏外からの可視光を制御しています。必要に応じて、自然風景モードに切り替えることも可能です」
「やっぱ……、今見てる空“映像”だ」
聡太は笑ったが、笑みはすぐ消えた。
「あのとき見た、東京の夜景とか……もう二度と見られないんだよな」
―――――
エリオスに対する不信感は他にもあった。
街の“外側”には行けないことだ。
外出申請を出しても、必ずこう返される。
「居住区外への移動は制限されています。
調整期間中につき、探索活動は控えてください」
だが、他の移住者の中には“好奇心”を持つ者もいた。
都市の外縁部にあるゲートには、監視ドローンが常に浮遊しており、立ち入りを拒まれる。
ある若者は近づきすぎて警告音を鳴らされたと話していた。
―――――
「なあ、賢人。動画、再生数落ちてきてるな」
「そりゃ、驚きがないもん。
毎日同じ景色、同じ飯、同じAIボイス。
それに、地球は今それどころじゃないしな」
賢人はふと、何かを決意するように目を細めた。
「ちょっとだけ、外に行ってみね?」
「は?」
「都市のはずれまで。
配信はできないかもしれない。
でも、見てみたい。俺はここが何なのかを、ちゃんと知りたい」
「もしかしたら、“誰か”に会えるかもしれないしな」
―――――
次の日の朝、彼らはセグウェイのような電動移動機に乗り、都市の外れを目指した。
行ける範囲は“制限区域の手前”まで。
AIに察知されぬよう、通信を切り、機材を最小限に抑える。
遠ざかる街の明かり。辺りは無音。人工音すら存在しない静けさに、背筋が冷える。
その時だった。
「……止まった?」
乗っていたセグウェイが、2台同時にぴたりと動かなくなった。
「バッテリー切れ?」
「いや、まだ残ってる。信号が、遮断された?」
二人は顔を見合わせた。制限区域の“境界”――そこが明確に存在していることを実感した瞬間だった。
ふと、同じように歩いている若者に出くわした。
浅黒い肌、明るい髪。
彼は英語で話しかけてきた。
「君たちも来たのか。
俺はオーストラリアから来たタイラー。
ここで足止めされたのは俺だけじゃなかったみたいだな」
3人は意気投合し、そこから少しだけ徒歩で進んでみることにした。
先にあるのは、何もない原野。
植生もなく、地面は粘土質で人工的な平面にさえ思える。
音も匂いもない空間。
風も止まり、空の映像さえ無反応に感じる。
「……戻ろう。これ以上は、嫌な予感しかしない」
そう口を開いたのは、聡太だった。
「賛成。これ以上は記録にも残せない。
ただの“不安”だけが溜まってく」
3人は来た道を引き返した。
セグウェイは、境界を超えた瞬間にまた動き出した。
「なんか、映画のセットみたいだな」
タイラーの言葉に賢人はゾッとした。
賢人が感じていた違和感、そう、これはまさに、ハリボテの作りものみたいだ。
3人は連絡先を交換して、それぞれの居住区へと別れた。
―――――
その夜。
「なあ、賢人。次は事前準備が必要だ。
まず、情報を集めよう。」
「……ああ。オレもそれ考えてた。情報と、それから人だ。
専門的な知識を持った人。」
タイラーともオンラインを繋ぎ、次なる一手を話し合った。
それは、エリオスという“理想郷”の裏側を探る冒険の始まりだった。
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