表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/40

30.ブラン リナリアとのデートを目撃される

 私が誘拐された一件が終わり、再び平穏な日常が戻った気がする。


 今日は仕事も休みだ。忙しさが薄れてくると、落ち着いていろいろなことを考えられる。

 みんな私が危ないときに助けてくれた。ロドルフ様もペトロッシさんもレジスも……


 そして作戦成功の立役者だったブラン君だが、そういえばあれ以降しばらくブラン君と会っていなかった。彼のことだから私が助かった翌日からも再びホムンクルスの研究に没頭していたのだろう。


「久しぶりに、一緒にお買い物にでも行こうかな」


 ブラン君の部屋の前まで行き、ノックして呼びかけてみる。しかし返事はない。普段だったら聞こえてきそうな、本をめくる音も何かを書く音も、形容しがたい何かがフラスコから出てくるような音もしない。


「お留守みたいね。まあ、せっかくだし1人で買い物にでも行きますか」


 お給料も出ていたので、私は以前から買おうと思っていたネックレスを探しに街に繰り出すことにした。


 ◇ ◇ ◇


「な、なぜこんなことが……」


 街まで上機嫌でやってきた私は、どのお店に入ろうかを決めあぐねているうちに意外な光景を目にした。


「ねえリナリア、次はどのお店に入ろうかー」

「あなた引きこもってる割に歩くの速いのよ。ちょっと疲れてきたわ」


 ブラン君とリナリアが2人で街を闊歩しているではないか。その姿は、まさにデートといって差し支えのないものだった。


 2人は腕を組んだり手をつないだりするわけではないが、主にブラン君がリードする形でお店に入っていく。結構男らしいこともするのね。


 ブラン君はニコニコしているが、リナリアは顔が張り付いたような笑顔になっている。


 物陰から様子をのぞき見てちょっと動揺した私だったが、まあ恋愛ゲーム『グレイスフル・ランデブー』に当てはめてみると2人がデートをしているのは自然なことか。


 ブラン君達が食事処へ入ったのを潮に、結局この日はあまり考え込まずに、自分の買い物をして帰った。


 ◇ ◇ ◇


 後日にリナリアがロドルフ様のお屋敷を訪れた際に、一緒に食堂でご飯を食べることができたので、そこでブラン君について尋ねてみた。


「ああ……ブラン君ね、お屋敷に通っているうちになんとなく彼とも話をしなきゃという気がしたもので、この前に街まで一緒に行ったのだけれど、ちょっとまあ……」


 そう言ってリナリアが口ごもるので先を促してみた。


「その、ブラン君は何事に対しても凄く理由を求めたがるのね。私が店で頼んだクレープに、挽き肉をトッピングしたのはなぜかとか」

「それは私も聞きたいわ」

「えーと、卵と挽き肉でオムレツみたくならない? あのときはお腹すいてたのでこう、がっつりと食べようかと……」


 なんとなく納得した。


「ともかくデートコースをお任せしてみたら、まず街の本屋に30分いたからね。本好きなのはいいけれど……」


 また口ごもる。デート相手をあまり悪し様に言うべきではないと感じているのだろう。ロドルフ様の弟でもあるし。私もそれを尊重する。


「そうなのね。30分って……」

「あと、ランチも食べたけど基本的に話題が研究のことかーって。私がもっといろいろ話題を提供した方がいいのかもって思った」

「デート自体のその後は」

「どうも話が盛り上がらなくなってきて、ご飯食べて解散になったよ。私もこの日、夜に仕事入っていたし」


 リナリア自身がなぜかデートについてちょっと反省しているようにも見える。うまくフォローできなかったと思っているのだろうか。根はいい子みたいなのよね。


 私たちもお互い食事を終えたので、そのまま挨拶をして別れた。

 うーん、どうもリナリアはゲームでいうところのブラン君ルートには行かなそうな感じね。


「この前助けてくれたお礼もしたいし、今度は私がブラン君を誘ってみようかしら」


 私は再びブラン君の部屋をノックしたところ、今度は返事があった。


「なあ~にぃ~」


 うわっ、けだるげな声。前のやる気に満ちていたブラン君とは思えないような、だるっだるの声じゃないの。リナリアとのデートがうまくいかなかったのを引きずっているのかしら。

 ドアを開けて、私に背を向けたままのブラン君に話しかけてみる。


「ねえ、今度の私の仕事休みの日に、一緒にお出かけでもしません?」


 ブラン君が振り返る。 


「えっ、ジョハンナと出かける? なんで誘ってくれるの? どこへ行く? ジョハンナが行きたいところへ僕が同行するのか、それとも僕の希望を聞いてくれたりするの? その場合に僕の希望を聞いてくれるのはなぜ? あと……」

「はい、その辺で。今日はどうも私への追求が激しい気がしますわね」


 たくさん喋られたが、彼の顔を見るとやはりかつての活力がないようにも思う。空元気で私にいろいろ聞いてきただけなのだろう。


「研究で少し行き詰まったというか、どうしても足りないものがあるんだよね」

「あら、それは気の毒ですわ。どうでしょう、ちょっと気分を変えてみませんこと? ブラン君が興味を持ちそうな本がたくさんある場所を知っているのですけれど」


 ◇ ◇ ◇


「ねえ、図書館や魔法の道具なんかがいっぱいおいてある博物館みたいな施設がある場所? そんなところ本当にあるの?」

「ブラン君、場所の説明的なセリフをありがとうございます」

「いいえ」

「さあ、あちらに見えてきましたわよ」


 私たちは朝から3時間かけて船で海を渡り、今度は山の方へ歩いたところでようやく目的地へ辿り着いた。

 ブラン君とは2人旅になるが、今日中に帰ってくることを条件にロドルフ様に彼を連れ出す許可を得た。


 どこへ向かっているのか、ロドルフ様には話したがブラン君へ内緒にしたままだった。さすがに場所については到着まで秘密にしておくことをブラン君に伝えておいたので、道中に追求はさほどされなかったのが楽だった。


 舗装された道を通って少し山を上っていったあたりに、その建物が見えてきた。

 円形をした屋根の下にいくつもの部屋があり、屋根の真下は吹き抜けの空間となっている。


「こちらが、私が通っていた母校ですわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ