第四話 ギャン中は襲われます!
「暇だ……」
季節は、秋。海の上は肌寒く、時折高い波が水しぶきをプレゼントしてくる。
小型船でラスコーを出て三日目。ロロは、常にコンパスと夜空の北極星を見て、方向を失わないように注意を配っていた。
「サシアー。大丈夫かー?」
「うぇえええええええええ」
サシアは、海から身体を乗り出して、嘔吐を続けていた。船酔いがひどいらしい。
あんまりにもひどいようなので、ロロはサシアのもとにいって、サシアの背中をさすった。
「ほら、水だ」
「……あ、ありがとうございます。ご主人様」
水甕から組んだ水をサシアに飲ませる。
「それ、脱いだらどうだ」
「え……?」
サシアはメイド服を着ているが、メイド服は明らかにサシアの巨乳を締め付けている。
「ほら、ここ海の上だからよ。だれも見ねーし」
「ご、ご主人様が見ます!」
「見ねーって! 見るけど……」
「ほら!」
「おれたち、裸で語り合った仲だろ。なにをそんなに嫌がるのだか」
「そ、そんなこと、していないです! それに、こんな海の上で裸なんて!」
サシアは顔を真っ赤に染めて、ぷるぷると肩をふるわせていた。
そのまま、しばし、サシアは目に涙を浮かべていたが、ふと、サシアは喉元に手を伸ばした。
「……あれ?」
「ん?」
「治りました。ご主人様と話してたら」
「治ったんかい! 今、全読者が期待してたぞ!」
「……読者?」
*
航海を始めて10日後。
航海は基本、暇である。船の向きの修正以外にやることが本当にないのだ。唯一の楽しみといえば、釣りである。
「釣れねーな」
とはいっても、持ってきた干し肉では全然魚は反応してくれない。たまに馬鹿な魚がひっかかってくれるが、ほんの小魚ばかり。
「ご主人様、そろそろ、ロドスの海域に近づきます」
「え、まじ?」
「はい。つい先ほど、こちらの岩礁を通過しましたので」
サシアが海図を指さしながら、ロロに現在位置を伝える。なるほど、風が順調になびいていたので、予定よりもずいぶん早くロドスまでやってきたらしい。
「そろそろ警戒しねーとな」
「もし見つかった場合はどうするんです? なにか、策でも?」
「ないといったら嘘になる」
「え? それじゃあ!」
「うんだから、釣りなんだよ。釣り。ほら、デカい魚差し出したら、魔獣も通してくれるかなーって」
「……はぁ。聞くんじゃありませんでした」
「ぬぁんだと? 主人に向かって。って、おい、帆の向きを変えるな!」
「嫌です! 私はやっぱり死にたくありません! ご主人様のお馬鹿!」
「あー言ったな! 言っちゃったな! この天才ロロ・アルノルト様のことを馬鹿って言ったな!」
「馬鹿じゃないならこんなところ、来ません!」
そんな喧嘩をしていると、ふと後ろから、大きな水をかき分ける音が。
ゴゴゴゴゴゴっ!
「ま、まさか……」
「サ、サシアぁあああああ! ど、どうしよぉおおお! どうすんだよぉおおお!」
「な、なんとかしてくださいよ! だから言ったじゃないですか! このダメご主人様!」
「だれだよ、魔獣なんて来ないっていったの!」
「ご主人様ですよ!」
「や、やべーっ!」
船が途端に揺れ出す。
「きゃーっ!」
「わっ!」
ロロとサシアは抱き合い、恐る恐る後ろを振り返った。
二人の背後には────
「…………へ?」
「…………あれ?」




