59話 八雲、援助してくれ!
「八雲~見ろっ! じゃんっ!」
「……じゃじゃ~ん」
【広橋市立第一中学校・1学期期末考査 千葉ハジメ:85位】
【広橋市立第一中学校・1学期期末考査 千葉ハルト:92位】
「お、おまえらマジでやったのか……!」
「おう! 約束通り、2ケタ順位取ったぜ!」
「……赤点も、もちろんゼロ」
「だからさ、八雲っ……」
「先生の家にお泊まり、行っていいよね?」
7月半ばの日曜日、俺は双子たちから期末試験の結果を見せつけられながらご褒美のおねだりをされていた。
今日までチャットで連絡とかもなかったから、てっきりダメだったのかと……
「とはいえ、ここまで結果を出されたんじゃ何も言えないわな……そいじゃまあ、夏休みになったらうちに泊まりに来い。そのかわり勉強もちゃんとするからな」
「よっしゃ!」
「……よし」
パァンッ! とハイタッチをして喜ぶハルトとハジメ。
中間試験の勉強合宿をするために俺がこいつらの家に泊まりに行ったことはあるのだが、2人がうちに泊まりに来るのは初めてだ。
「あ、言っとくが親の許可はちゃんと取ってくれよ。俺がお前らの家に泊まるのと、お前らが俺の家に泊まりに来るのとじゃちょっと事情が違うんだから」
「それなら大丈夫!」
「……母ちゃんも父ちゃんもオッケーしてくれてる」
「早いなおい」
どうやら俺にテスト結果を見せる前から準備は万端らしい。
2人の親のメリッサさんと邦重さんは俺の叔父のナオちゃんと仲良いから、そこまで心配しないでオッケー出したんだろうな。
「そういえば、母ちゃんにテスト結果見せたらめっちゃ喜んでたぜ。ガッコーのクソ教師も驚いてたし」
「……母ちゃん、先生の謝礼金増やさないとって言ってた」
「えっマジで? いいのかな……」
「いいのいいの! 貰えるもんは貰っとけよ!」
まあ、ちょっと前まで赤点上等だった子供たちが真ん中より上の順位を取れるようになったんだから、そりゃあ嬉しいか。
それこそ、勉強を教えた家庭教師の謝礼を増やすくらいには。
「俺に払う金が増えて、その分お前らのお小遣いが減ったらどうすんだよ」
「それは嫌だ!」
「……そしたら、先生のお世話をしてお小遣いをもらう」
「八雲、援助してくれ!」
「その言い方はちょっといかがわしいからやめてくれ」
そんなことしたら謝礼金アップどころか家庭教師辞めさせられちゃうだろ。
―― ――
「っつーわけで、今度うちに泊まりに来るから……時期は8月前半くらいかな。うるさくしないようにするから大目に見てくれよ大家さん」
『了解了解~』
ハルトとハジメのお泊まりが決定したので、俺が住んでいる学生アパートの大家をしているナオちゃん……直重叔父さんにも電話して話をつけておく。
とはいえこの人は普段から学生が泊まりで飲み会とかしてても何も言わないし、俺たち住民もどこかの部屋でドンチャン騒ぎをしていてもお互い様なので気にしないのだが。
『それにしても、最初は渋々だった八雲が俺の知らない間に随分と教え子と仲良くなっちゃってまあ~』
「ぐっ……」
『シゲとメリッサちゃんから色々と聞いてるぜ~。向こうの家に泊まりに行ったり、部活の練習試合も手伝いに行ったりしてるんだろ?』
「まあ、な……謝礼を多めに貰ってるから、それくらいは全然苦じゃないっつーか」
実際は苦じゃないどころか、アイツらとはもう友達……いや、ある意味それ以上の関係が構築されている気がする。
ただ、最近は時々コミュニケーションがいきすぎて危うい雰囲気になってしまうこともあって……
「……ナオちゃん、中学生って難しいよな」
『はっはっは! まるで思春期の子供の親みたいな言い草だな』
「そういうんじゃねえけどよ……」
『なんだ~? アイツらに告られでもしたか~?』
「ばっ……! んなわけねえだろっ!?」
『がっはっは! いや~今年の夏もアツいね~!』
「ちょっなに勘違いしてっ……くそ、切れやがった」
通話が切れたスマホをベッドに放り投げてため息をつく。
「告白なんて、されてねえよ……」
まだ……今はまだ。




